モンゴルが日本を選ぶ理由

2008年07月09日

モンゴルについての論評記事を香港紙から2本。まずは、親中紙『香港文匯報』より。

何亮亮 鳳凰衛星テレビ評論家

モンゴル国大統領ナンバリーン・エンフバヤルは、首都ウランバートルに4日間の非常事態を宣言した。これより前、議会選挙争議で騒乱が発生し、これは中国とロシアの間の国家の政局として注目された。外交はモンゴル選挙の主要テーマではなく、経済発展と民政とが有権者の関心事であって、つまりモンゴルの発展は中国とは切り離せないということだ。

モンゴルは、世界最大の内陸国家のひとつで、領土面積は156万平方キロで、中国の新疆とほぼ同じで、過去はずっと中華の一部だったが、清晩年に国力が衰えたときに、外モンゴルはロシアの画策によって独立した。1945年にスターリンとルーズベルトが合意に達し、アメリカは外モンゴルの独立を承認することを条件に、中国東北の日本軍を攻撃するために出兵し、更に機会に乗じて日本の北方四島を占領したのだ。

モンゴル独立後は、絶えずソ連のコントロールを受け、全てをロシア化し、計画経済とロシア語教育を実行し、上層部はロシア語を用い、権威ある子弟はロシアに留学し、モンゴル文化と伝統は徐々に消えていった。ソ連解体後、モンゴルはロシアの軌道から離れ、自己の発展の道を求め始めた。

モンゴルは民主政治を行い、国家の最高権力機関は大呼拉爾(国会)で、政府は多数の政党から構成されている。現在、モンゴル人民革命党とモンゴル民主党が主要な2つの党だ。初歩的な集計の結果、与党の人民革命党が76議席中40議席以上を獲得し、引き続き政権を担うこととなった。国際監視員は、モンゴルの選挙は大体に置いて公平公正だとしている。

外交はモンゴルの選挙の主要なテーマではなく、経済発展と民政が有権者の関心事で、つまりモンゴルの発展は中国とは切り離せないということだ。

モンゴル経済の発展は中国なしではありえない

モンゴルは資源が豊富で、石炭の埋蔵量は500から1,520億トン、石油の埋蔵量は30から60億バレルほどある。しかし、モンゴルには資金と技術が不足し、関連法律の不備により、90年代の資源開発は停滞に陥っていた。2006年、モンゴルは「好物資源法」を改正しつつ、ロシア、中国、日本などの国と協力することを強化し始めた。2007年、モンゴルの経済成長率は9.9%に達し、2006年の7.5%から2.4%増加した。しかし、モンゴルのインフレ率は15%という新記録を樹立し、反対派はこれで政府を攻撃した。

モンゴルはロシアを頼るしかない。しかし、アメリカと日本、特に日本はモンゴルに大変興味を示し、モンゴルの鉱業開発に参加することを既に希望しており、中国を牽制しようとしている。しかしながら、中国はモンゴルに資金と技術、商品を提供しているだけでなく、最も重要なのは、中国の内モンゴルは中国とモンゴルの貿易と文化交流の重大な舞台となっていることで、その他の大国はこのような優位な点はない。

2003年から2007年の5年間、中国はモンゴルに30億人民元以上の援助と借款を行い、これはそれ以前の50年以上の合計を上回っている。中国のモンゴル国への援助と借款の増加、両国の経済協力の拡大は、両国の資源領域での協力協議の実行に有利な条件を提供している。中国は世界の重要な経済体のひとつとして、モンゴル国との貿易の巨大な潜在的エネルギーを解き放ち、中国モンゴル貿易のブームを牽引した。もはや中国は、ロシアに取って代わりモンゴルの第一の貿易パートナーとなり、現在モンゴル市場の消費財の9割が中国からのものだ。2007年末、中国の対モンゴル投資は11.81億ドル、投資項目3,769となり、モンゴルの最大の投資者だ。

現在、中国資本の500以上の企業がモンゴルの工業の主力となっていて、主に紡績服装、建築、県税、畜産加工品、サービス業、鉱物資源開発などの領域、雇用を5万以上も直接提供している。特にいくつかの大きな「正規企業」は、モンゴル国市場にしっかりと根を下ろしており、中国有色金属建設株式会社は、モンゴルのスハバートルでモンゴル側と合弁出資し圖木爾廷敖包亜鉛鉱山を建設し、昨年の8月28日に竣工式典を行い、モンゴル国大統領自ら式典に出席し高く評価した。その他、神華、魯能などの大型国有企業もモンゴル国で大型炭鉱開発プロジェクトに投資し、既に相当の進展を得ている。

中国経済の発展は周辺国家に利する

中国とモンゴル国の間の輸出入貿易の70%ほどは、全て内モンゴル自治区を通じて行われている。モンゴル国の中国からの輸入貿易額のうち内モンゴルからのものは70%を占めている。2007年の内モンゴル自治区の対モンゴル国への輸出入貿易は6.77億ドルに達し、前年度比で17.3%増えた。中国モンゴル貿易額の34%を占めている。内モンゴルは、モンゴル国からの主な輸入品は、原油、石炭、銅粉などの資源製品で、主な輸出品は電気製品、果物、野菜、食用油などだ。

中国とモンゴルが協力し設立した「扎門烏コ自由貿易区」、このプロジェクトによって双方にとって経済発展に有利な条件が生まれるだろう。更にモンゴル国との協力を進めるために、特に考慮しなければならないことは、短期間のうちにモンゴル国との国境地域の鉱山資源の需要を満たすことで、内モンゴルが新たな国境の町を開放し、基礎的な施設を建設し、現地に専門家を派遣し優先的に問題を解決することだ。

多くのモンゴル商人が、内モンゴルだけでなく、中国各地でも仕入れれば、モンゴルへの輸出は増える。内モンゴルのモンゴル語の文化産品は、モンゴルの民衆に深く受け入れら歓迎されてもいる。しかしながら雑音もある。日本の『読売新聞』は以前、多くのモンゴル人がモンゴルにある中国のレストランやホテルなどの施設を襲撃し、これによって漢字の看板が使われなくなり、「漢字の看板がウランバートルから姿を消した」と報じた。中国のウランバートル在住の記者の報道によると、実際の状況は、これらの人たちはモンゴルのゴロツキどもで、モンゴルの極端な民族主義分子が彼らを利用して中国とモンゴルの協力を破壊しようとしたものだったが、ウランバートルから漢字の看板が減るようなことはなく、中国資本のレストランやホテルは依然として十分に繁盛しているという。『読売新聞』は、「中国人がモンゴル人の仕事を奪っている」とモンゴル人が話しているという。実際は現地では、モンゴルの会社更には日本の会社も皆、中国人労働者は労働の苦労に耐え、規律を守り、仕事の効率が高いために中国人労働者を喜んで採用しているのだ。

中国の経済力と平和的発展という国策は、周辺国家と地域の生産効率に対して、中国の順風に便乗するだけで、中国の繁栄を分かち合うことができて、例外はありません。(文匯論壇)

香港文匯報「蒙古政局與中蒙關係

「○○は中国なくしてありえない」って文句は、もう見るだけで胡散臭いw 「大丈夫だ、まだ慌てるような時間じゃ・・」ってことですかね。

いかにもな中国万歳記事ですが、よく眺めてみると興味深い点がいくつかあって面白いですね。

2本目は7日付『明報』より。

最近モンゴルで発生した「擬似色革命」は、中国の隣国に対する精神的侵食を触発し、これは多くの華人の心の中にある属国を反映したもので、実は、国際関係での役割は大いに変化しているのだ。実際、中米露以外では、日本も冷戦後積極的にモンゴルを大国にしようとし、すでにモンゴル人が最も憧れる国家となっているのだ。2006年、モンゴルはチンギスハン国800周年を祝い、初めて政府は日本とチンギスハンの一生を描いた映画『蒼き狼』を合作し、これは「日蒙合体」の諸々のものを観客に理解させた。

どうしてモンゴル政府は、中国やロシアではなく日本を民族映画の撮影に選んだのだろうか?原因のひとつは恐らく、モンゴルは中国がその力を尊重していないと感じているからかも知れない。ここ数年、北京は常に国際社会の場で内モンゴルのここ数年の経済発展に触れる際、独立した外モンゴルの役に立たなさとを比較し、更には民族主義者が香港を回収したように外モンゴルも「回収」すべきだと言っていたりする。台湾にある中華民国政府は、「モンゴルチベット委員会」を設置して「大陸委員会」と対等に扱っているが、以前は「偽満州国」のように、モンゴルに対して「偽蒙古国」と称し、非常に深くモンゴル人民の感情を傷つけていた。

「日蒙連盟説」は100年間絶え間ない

これに比べると、日本は古来よりモンゴルを重視することが多く、「日蒙連盟説」は100年間絶え間なく唱えられている。外モンゴルの独立以来、ソ連の没落に伴い、一部のモンゴル民族主義者は理念を改変し、内モンゴルが中国から離脱し独立するよう期待するようになり、日本にた頼って復活することを希望し、その代表的人物は内モンゴルの王侯、徳王だ。当時の日本の手腕を顧みるに、アイデアがたくさんあって、パンチェン・ラマが指導する「新蒙古国」のようなもの、日本、朝鮮、満州、蒙古の4つの民族が徐々に融合することを望み、これは日本の「大東亜」の概念に全て見ることができて、単なる説に留まっていないのだ。今日に至り、グローバル化の雰囲気の中、日本は再び日満蒙経済統合を唱え、依然として満蒙地区に対して一定の吸引力を有している。モンゴル政府は、大量の日本の経済援助を受け入れたほか、主導的なモンゴル学生は日本に留学し、また日本の商人が中国人商人の国内における資源の独占を打ち壊すことを希望し、明らかに西洋化した日本と特殊な関係を結ぼうとしている。これも日本がソフトパワーを運用していることの反映であるとわかる。

モンゴルの国際舞台での代弁者は多くなく、またスポーツの成績も今ひとつだ。ただ相撲は世界レベルだ。いい具合に日本人も相撲を愛しており、そこで多くのモンゴルの優秀な人材を受け入れ、現在では30人以上のモンゴル出身の相撲取りを日本の相撲の試合で見ることができる。日本の相撲界の最高ランクの2人の「横綱」のうち一人である朝青龍は、日本の相撲界のスターでかつてはモンゴルの田舎の学生だった。

朝青龍は病だと偽ったり、場外で相手を挑発したりなど、いつも相撲の規律を違反する行為によって、日本国内で論争の人となっているにも関わらず、彼はモンゴル出身ということで、また平等主義によって、世論の同情と寛容を得て、日蒙親善大使となっている。このようなことは中国が取って代わることはできず、モンゴル人が姚明に夢中になるようなことはないのだ。

相撲取りが日本モンゴル親善大使に

『蒼き狼』が上映された2007年は、モンゴル政府側が定めた「日本年」で、それより前にモンゴルで「ロシア年」や「中国年」といったものはなかった。日本の駐モンゴル大使が行った世論調査によると、7割以上のモンゴル人が日本に対して「非常に強烈に親近感がある」と答え、これは彼らと日本文化との交流は、中国、ロシアのそれを上回っていることを示している。日本は近年、カザフスタンなどの国とも関係を緊密にし、エネルギー外交問題の解決を望んでいるが、しかし中央アジアの色革命の受益者に日本がなることは不可能だ。しかしながら、モンゴルで真の色革命、政権を更迭し、国際勢力に巻き込まれるようなことになれば、更に複雑となり、そうなれば北京への直接的な衝撃を免れることは難しくなるだろう。

中文大学アジア研究所研究助教授・沈旭暉

明報「現代蒙古的日本情結
※色革命・・・民主化革命(ex:グルジア、ウクライナとか)

まるで『香港文匯報』の記事を受けて書かれた記事のよう。

モンゴルで色革命ねぇ。なんか違う気がするなぁ。既に18年前に民主化してますやん。民主化した政府がうらやましいとはっきりお言い。今回のウランバートルでの暴動は、民主主義が成熟する過程での混乱という見方が大勢のようですね。

また、中央アジアで日本は受益者になりえないなんて強弁しているのは、先月カザフスタン大統領が来日し関係強化を図りつつあることへのあてつけですかね。「成功するはずがない」と。

『香港文匯報』の記事にしても『明報』の記事にしても、最近とんと聞かなくなった日本の「自由と繁栄の弧」政策が、着々と進んでいることを伺わせます。

実際のモンゴルの現状がどのようなものなのかわかりませんが、この2つの記事から伺えるのは、日本の外交攻勢に対する危機感、国際社会(西側)から非難され続けている中国外交への閉塞感でしょうか。

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posted by タソガレ at 23:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
いや、まったく、自由と繁栄の孤は看板だけ降ろしたって感じですよね。カザフの次はインドと聞いています。巧い。北にモンゴル、南にベトナム。巧い。

となると、中台統一はなんとか阻止したいですね…鍵は経済かなぁ。
Posted by 三浦介 at 2008年07月11日 04:00
「自由と繁栄の弧」は、今まで行ってきた外交姿勢をより明確に顔が見えるように看板を掲げただけですから、その看板を下ろしたからといってその外交姿勢までなくなるなんてことはないですよね。
ただ、再び顔が見えにくくなったことの弊害はあるやも知れません。

「自由と繁栄の弧」と違い日本のメディアに注目されなかったためか看板を下ろすことなく続けられている「平和と繁栄の回廊」。こちらも着実に進んでいるようです。

「平和と繁栄の回廊」構想第3回4者協議閣僚級会合
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/chuto/4kaigo_0807/index.html


台湾、もとい中華民国ねぇ。大陸へ向けたミサイルの予算問題が解決したようですし、対日姿勢が大変ウザイですが大丈夫じゃないですかね。2つの中国ですよ。

民国経済については何一つ知らないので、全くわかりませんが、中国を利用するのが1周も2周も遅いような気がしないでもないです。民進党だったから仕方がないことなのかも知れませんが。
Posted by タソガレ at 2008年07月11日 23:04
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