米印核協定

2008年07月23日

表題の件に関する新華社の分析記事をば。

22日、インド政府は議会の信任投票の結果、支持275票、反対256票、棄権10票となり、多数の支持を獲得し、シンをリーダーとする団結進歩連盟政府が引き続き政権を担う合法的地位を獲得し、インドで総選挙が行われる事態が回避された。同時に、2004年に政権を獲得して以来、最大の政治的危機を脱したことになる。

今回の政治的危機の導火線は、シン首相が、核エネルギー問題に関してひとつの態度表明を行ったことだ。7月はじめ、日本で開催されたG8と発展途上国指導者対話会議に参加したシン首相は、突然海外に対して、インド政府は可及的速やかに、国際原子力機構と核保障合意を達成するつもりだと示した。彼のこの態度表明は、即座にインドの反対派と左派の強烈の反対を受けた。8日、政府の主要な支持勢力だった左派政党が、政府支持を撤回したため、政府が議会で多数の支持を失い、議会の信任質疑を行う羽目になったのだ。

インド政府が、今回の信任投票で順調に「関門」を突破出来たのは、まず準備が万全で、応対がタイムリーだったためだ。投票前、国民大会党首席ソニア・ガンジーとシン首相は、そろって政府は既にこの危機に対応する十分な準備が出来ていると表明していた。実際に、左派と核エネルギー問題における相違が緩和されないために、昨年末から、与党連合は既に新しい政治的パートナーを探し始めていた。投票結果を見ると、左派が抜けた後、与党連合は自分達の票のほか、その他の少数党を合わせ、有効に票を補充している。

2つ目に、核エネルギーの発展は、インドのエネルギー危機緩和の助けとなるという視点が広範に認められていたことだ。今回の信任投票は、印米核エネルギー協力の争いが発端で、核エネルギー協力字体はインド社会の全面的な排斥にあっておらず、単に政党の闘争の道具となっていただけだったのだ。その他、政府が提出した印米核エネルギー協力は、インドのエネルギー危機の緩和を助け、国際核エネルギー市場からの拒絶から抜け出すという視点が広範に受け入れられ、それによって反対勢力は、核エネルギー問題で与党連合に致命的な攻撃を加えることが出来なかったのだ。

3つ目に、今期の政府与党の基礎は比較的強固だということだ。シン政府が登場して以来、インド経済は急速な成長を遂げた黄金時代と重なったのだ。ここ4年、インドの国内総生産は、8〜9%の成長速度を保持し、前期政府与党時代の経済低迷とは対照的となっている。経済的成功は、インド社会の社会進歩を促し、インドの国際社会での新興経済大国としてイメージを作り上げた。シンをリーダーとする政府内閣も、民衆の推戴を受け、今回の政府は全体的に肯定されているのだ。

今回の政治的危機を乗り越えたことで、シン政府は寄り一層強固な与党として地位を確立しただけでなく、印米核エネルギー協力の内部の障壁も一度に取り払ったと見る分析がある。左派が離脱したことで、シン政府は放置されてきた各項目の経済改革を集中的に推進することができ、外資の参入を緩和し、小売業を解放する方向へ大幅に踏み出すことがでえきるようになるだろうという。このほか、政府は軍事、外交などの方面での政策決定においてもより自由となり、来年の総選挙のために十分な準備ができるだろうという。

新華社「新聞分析:印度政府為何能渡過政治危机

この論評記事では触れていませんが、敗れた反対派が買収が行われたと抗議し、議会でルピーの札束を叩きつけるというパフォーマンスを行っていたりするようです。また、アメリカ大統領選挙が迫っているために、IAEAの査察とアメリカ議会での承認を得るには時間的にかなり厳しく、アメリカの原子力協力が決定するのは来年になる可能性もあるなどと『WSJ』の中文版は報じています。

新華社の分析記事ではシン政権は安泰であるとしていますが、『WSJ』の中文版の記事では高いインフレ率など経済が下り坂に差し掛かっており、これからの経済動向次第では来年5月の総選挙はどう転ぶかわからないとあります。

シン政権としては、できるだけ早く手続きを済ませてエネルギー問題解決への道筋をつけ、景気浮揚のきっかけとしたいということでしょうか。ちなみに23日のインド株式市場はあげております。

洞爺湖サミットで、日本はインドと二国間会談を行っていて、その中で次のようなやり取りがあったと外務省のサイトにあります。

シン首相から、民生用原子力協力に関する米印合意の経緯について簡単に説明があるとともに、今後、この案件がIAEA等に持ち込まれる場合には、日本の支持をお願いしたいと述べたのに対し、福田総理から、検討するが、我が国を含む国際社会の関心にも適切に対応することに期待する旨述べた。

外務省「日・インド首脳会談(概要)

北朝鮮が念頭にあるのでしょうね。北朝鮮やイラン問題の隙間を狙って有利に外交を運ぼうとするインドは抜け目なく恐ろしい・・・と中国は眺めていたりするのでしょうか。

関連記事
2008/01/17「中印外交バトル
2007/02/05「ロシアとインドの接近を警戒せよ@中共混乱中
2005/10/18「ロシア・インド合同軍事演習(中国参加せず)@中央アジア情勢

追記

【ウィーン=石黒穣】国際原子力機関(IAEA)特別理事会は1日、IAEAがインドと保障措置協定を締結し、同国の民生用核施設をIAEAの監視下に置くことを承認した。

両者による協定締結は、核拡散防止条約(NPT)未加盟で、核爆弾を保有するインドへの核技術輸出に道を開く米印原子力協力協定の発効条件の一つ。

米印協定は発効へ一歩近づいた。

保障措置協定は、米印合意に即した内容で、インドの核施設を民生用と軍事用に区別し、民生用施設のみIAEAの監視下に置く規定。インドは建設中も含め既存22原子炉のうち、14炉を民生用として申告する予定だ。インドが民生用に輸入した核物資や機材の軍事転用阻止には有効だが、知識や技術を核爆弾開発に利用するのは野放しとなり、NPT体制のほころびを広げる点も指摘される。

このため、理事国の間には承認に慎重な意見もあった。だが、IAEAがインドへの関与を強めることは、「インドを世界の核不拡散体制の本流に引き込む」(シュルテ米大使)効果を期待できるため、各国は最終的に賛成。承認は、日本や米国、中国を含む理事国35か国の全会一致だった。

インドでは急激な経済成長に伴う電力需要増大が見込まれ、地球温暖化対策上もインドの原発開発支援を避けて通れないとの認識から締結が支持された。

インドと対抗関係にあるパキスタンも、エルバラダイIAEA事務局長が冒頭発言で「今回の方式は他国との協定締結にも適用できる」と述べ、パキスタンが将来、インド同様の扱いを受けられる可能性を示したことから、賛成に回った。

読売新聞「IAEA、インドと保障措置協定締結…民生用核施設を監視

『産経新聞』の記事もスクラップ。

【ベルリン=黒沢潤】インドと国際原子力機関(IAEA)との間の保障措置(査察)協定案を協議するIAEA理事会が1日、ウィーンで開かれ、日米など35理事国が同案を全会一致で承認した。これにより、米国とインドの原子力協力協定が発効に向けて、大きく前進することになった。

今後は、インドへの原子力関連機材の輸出を厳しく制限してきた原子力供給国グループ(NSG)が、米印の原子力協定を承認するかが焦点となる。NSGの次回会合は21、22の両日に開かれる見込みという。

IAEAのエルバラダイ事務局長は理事会の冒頭で、協定歓迎の姿勢を表明するとともに、IAEAとインドがすでに、直前の通告だけでインドへの査察が可能となる体制づくりについて協議していることを明らかにした。各国が協定案について見解を述べた後、承認された。

米印の原子力協定は、米国の原子力技術と核燃料のインドへの移転を、IAEAとの保障措置協定締結を条件に認めるもの。インドの新旧計22の原子炉のうち、計14を2014年までに民生用原子炉として、IAEAの監視下に置く、としていた。

産経新聞「インドの原子力協定案を承認

最後に『あさひしんぶん』をば。

【ウィーン=関本誠】国際原子力機関(IAEA)は1日、インドとの保障措置(核査察)協定について話し合う特別理事会を開き、全会一致で同協定の締結を承認した。これで米国とインドの原子力協力協定の発効に向けた条件の一つが満たされたことになる。

ただ、今回の査察協定でインドでの査察範囲が広がる半面、米国からの原子力協力が実現すれば、核不拡散条約(NPT)に入っていないインドが核燃料や原子炉の提供を受けられるようになる。これはNPT体制を損なう前例になるとの指摘もある。

査察協定は、米印原子力協定の発効への第1関門にあたる。今後、原子力関連物資・技術の輸出規制に取り組む原子力供給国グループ(NSG、日本など45カ国)、さらに米連邦議会での承認手続きが必要だ。今回の承認で、焦点はNSGがインドを「例外」と認めるかに移る。

米印両政府などの説明によると、インドは国内の原子力関連の22施設を軍事用と民生用に分類し、民生用原子炉など14施設だけを14年までに段階的にIAEAの査察下に置く。民生用は今後建設される原子炉も査察対象に含まれるが、軍用施設や再処理施設には査察が及ばない。

しかも、今回の査察協定には具体的な査察対象施設名は明記されていない。軍用・民生用の分類は、インド政府の裁量になる。現在の6施設からは査察範囲が広がるものの、インドが指定する民生用施設に限られる。また、外国からの核燃料供給が途絶えた場合に、インドは「何らかの措置」をとることができるとしている。査察を拒むことを想定しているのではないかとの懸念の声もあった。

だが、この日の特別理事会では、インドの「例外扱い」に慎重な国も含め、これまで実質的に野放し状態にあったインドの核活動へのIAEA査察を拡大することを前向きにとらえる空気が支配的だった。

 

インドが核放棄をせず、NPT未加盟のまま利益を得ることのマイナス面は小さくない。外交筋によると、NPT上の問題点を指摘する発言やインドのNPT早期加盟を求める声も出たという。しかし、エルバラダイ事務局長は査察拡大を評価。多くの国が支持を表明したという。査察対象が限定的な点などを問題視する国や、NPT体制への悪影響に懸念を抱く国も、査察拡大の是非を問われれば、反対というわけにはいかないのが実情だった。

当初反対する構えだったパキスタンも、将来的にインドのような原子力協力協定を結ぶ機会が与えられる可能性への期待もあり、米国の説得も受け入れて態度を軟化させたようだ。

インドの「例外扱い」の是非を主議題として議論するNSG臨時総会は、早ければ8月下旬にも開かれる。北欧やアイルランドなどの慎重国や、唯一の被爆国として核軍縮・不拡散を外交の柱としてきた日本がどう対応するかに注目が集まる。

あさひしんぶん「IAEA、インドとの査察協定承認へ

ブログランキング ←宜しければランキングに1票をお願いします。

posted by タソガレ at 22:51 | Comment(0) | TrackBack(1) | 国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのTrackBack URL http://blog.seesaa.jp/tb/103450549

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

無限エネルギー問題とgoogle

Excerpt: グーグルの米国エネルギー問題解決策 by CNET-Japanhttp://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20381417-2,00.htmどこで...
Weblog: 暇人短剣符
Tracked: 2009-01-01 22:35