<上>の続き。
”スタグフレーション”を治すのが最も困難だ
”リスク”の定義に関して、2つの見方をする必要があって、ひとつは、それを可能性と見るか、一時的な損失の発生を伴う可能性があると見るかの2つだ。
可能性に関して、現在の様々な観点には全て喧々囂々だが、注意すべきは、マクロ経済の動向とマクロ経済政策とは密生な相互関係にあるということだ。
まず、我々が経済成長の下落を心配した場合、更に一歩進んで貨幣経済において新たな放水を行った場合に、1980年代中後期の失敗という同じ轍を踏む可能性がある。1984年に中国経済は過熱し始め、1985年にマクロコントロールを更に強化し、1986年に経済成長の下落が現れ、そこで、いくつかの企業と地方政府、何人かの若き経済学者らが、経済衰退の始まりだと大声で叫び(薛暮橋氏の回顧録より)、中央高層のインフレに対する態度に動揺が生まれ始め、貨幣政策を新たに解放し、1988年に物価が急速に上昇し、1989年に”ハードランディング”が出現したのだ。
その次に、我々が過度に数量規制を堅持し、更には行政のコントロールを行った場合には、1990年代中後期に現れた状況――1996年に需要不足の問題が討論し始められ、1997年にアジア金融危機が勃発し、1998年に全国で一斉に”保8”に努力したという状況が再来するかもしれないのだ。
更に、我々の政策が揺れ動き定まらず、貨幣政策を少し緩めたり締めたりした場合、スタグフレーションが出現する可能性がある。アメリカは当時、貨幣政策を絶えず緩めたり締めたりしたことで、市場構造に対する衝撃が大きすぎ、スタグフレーション局面の形成を招いたのだ。
一方、損失という観点から見ると、マクロ経済の損失の悪い点を数量化し、それを”克服の難度”という点から観察することができる。
まず、”停滞”の状況が現れた場合、中国経済発展の段階と特徴から見れば、普通、克服するのは比較的簡単で、我々は1998年、1999年に積極的に財政政策を実行し成功したという経験を持っている。
その次に、”膨張”の状況が現れた場合、”停滞”を治すより多くの困難がある。しかし過去30年、我々は正反対の二つの方面に対した経験と対処してきた方法があるので、対応することができるのだ。
次に、”スタグフレーション”が現れた場合、私は恐らく最も治療するのが難しいと思っているのだが、ひとつは、我々は経験しておらず、この方面における経験がないからだ。二つ目は、アメリカの経験が我々に、”スタグフレーション”を治すことは、最も困難なことで、単純に”停滞”を治したり、単純に”膨張”を治すことよりもはるかに困難であると教えてくれているからだ。三つ目は、現在中国に出現しているものは”スタグフレーション”である可能性が高いと確証しているのだが、これは、我々はいくつかの点で当時のアメリカと類似した状況が存在していると見ているからだ。
改革でしか経済のモデルチェンジを促すことはできない
このような複雑な情勢の下、現在のマクロ経済政策の採るべき方向はどのよなものなのか?筆者は、現在の情勢の下で、理想的な行うべき政策は、貨幣の緊縮、財政の緩和、価格を解放し、構造を調整し、改革を急ぎ、転換を促すことだと認識している。
いわゆる”貨幣の緊縮”は、主にインフレ抑制のためである。総量政策は引き続き緊縮すべきで、開放すべきでない。しかし、価格システムへの影響を更に注意してなければならず、これは利率の調整によってマイナスを取り除かなければならない。
いわゆる”財政の緩和”とは、主に経済成長の鈍化に対応するためだ。財政は、総量において適切に財政支出と財政投入かを行い、重点的に構造調整を行い、例えば社会保障、被災者への投入を増やしたり、貧困層への補助を増やしインフレに対応する力を増やしたりすることだ。その他に、税率、所得税を下げ、利息税を取り消したり、更に研究する余地のあることは、地方政府による債権発行を許可するかどうかだ。
いわゆる”価格の解放、構造調整”とは、現在で言うところの構造の調整、つまり政府が構造の調整を行い、政府が”確保もすれば規制もする(保有圧力)”を行い、筆者は、正確に構造の調整を行えば価格のバランスを取り戻すことができ、価格のバランスを取り戻せば、価格システムが構造を調整すると認識しているが、注意が必要なのは、貨幣制御ができて初めて価格解放ができるのであって、さもないとインフレを誘発しかねないということだ。
いわゆる”改革を急ぎ、転換を促す”とは、例を挙げるなら、近頃よく言われている中小企業への貸し渋りという難しい問題だが、この問題は、貨幣の緊縮が生み出した問題ではなく、貨幣を放出していたとき中小企業への融資は同じように困難であった。つまり、この問題は、体制改革を通じてのみ解決できるものなのである。例えば、中小企業のために専門の政策性銀行や担保会社を設立したり、民営銀行や小額の貸付会社を設立したりなどなどだ。
要するに、改革によって経済のモデルチェンジを促すということだ。
魏加寧:国務院発展研究センターマクロ経済研究部副部長
新華網「専家分析当前中国経済的風険与対策:治滞張最困難」
この記事に記されてある現状認識とその対策でどれが正しいのか、はたまた別のところに正解があるのかなんてことは、さっぱりとわかりません。
ただ、胡錦濤が提唱し党是にまで組み込まれている「科学的発展観」がマイナスに作用していると唱える者がいると記してあったり、「1989年の”ハードランディング”」、つまり六四天安門事件が再来するかもしれないなどと記してあったりと、現状に対する危機感と焦りは伝わってきます。しかもこれ、政府機関の人間の手による記事なのですよね。
また最近、経済関連記事を眺めていると、目に付くのが人民元、為替関連の記事。記事内容の半分も呑み込めないのですが、元高圧力だけでなく、円の独歩高という不均衡要素が加わり云々・・・となにやら変動相場制への移行圧力が高まりつつあるのかなぁ、なんてぼんやりと感じておる次第です。
- 参考
- 実事求是「膨張し続ける資産バブル ― なぜ日本の教訓が活かされなかったか ―」


