毒ミルクと毒餃子

2008年09月21日

イギリス『フィナンシャル・タイムズ(中文版)』より。

9月11日、新華社は三鹿粉ミルクにメラミンが含有されていて、乳幼児が口にすると肝臓結石を誘発すると暴いた。最初、三鹿は否認したが、直ぐにこの問題に対する責任が自分達にあることをしぶしぶ認めた。9月17日までに、泌尿系結石と診断された児童の患者は、6,244人に達し、そのうち3人が死亡している。その他、中国国家品質検査総局は9月17日に、伊利、蒙牛、光明、聖元および雅士利を含む22のメーカーの69の乳幼児用粉ミルクにメラミンが含まれていたと発表した。9月18日、国家品質検査総局は、蒙牛、伊利、光明の3つの企業の乳製品の10%のサンプル検査をしたところ、メラミンが検出されたと発表した。現在、政府は、すでにこれらの件の責任者を免職、拘留を含む措置を行っている。

ニュースが伝えられると、人々は強烈な反応を示した。多くの乳幼児のいる家庭はパニックになり、病院で検査をするために次から次へと子供を連れて病院へ駆け込んだ。市場にある国内の粉ミルクの多くは販売停止となり、輸入ブランドの粉ミルクが一気に完売となった。三鹿の数千万人の消費者は、怒り、失望し、「10年間飲んできた老舗ブランドがこんなことをやらかして、自分で乳牛を飼うしかないじゃん」、「こんな企業だったとは、ショックだ。中国の食品安全行程は永遠に実現不可能だ」と人々は口にした。ネット上では多くの怒りの声で満ち溢れ、株式市場もまた次々と値下がりし、2年ぶりの最安値となった。

この事件で思い出すのは、2008年1月から現在に至るまで続いて、依然として最終解決していない中日間の”毒餃子”事件のことだ。昨年の12月末から今年の1月下旬にかけて、日本の兵庫、千葉両県のいくつかの地区で、数家族10人以上が相前後して嘔吐、下痢の食中毒症状が発生し、病院で応急手当を受けた、そのうち3人が危篤状態に陥り、1人の児童が一時昏睡状態となった。調査によって、患者は発病前に河北省石家荘にある天洋食品工場産の同一ブランドの冷凍餃子を食べていたことが判明した。中国当局は、この件を高度に重視し、今なお事件の真相を調査することを堅持しており、日本の消費者は、終始その調査態度をしっかりと注視している。現在のところ、この2つの事件の間には、ある種の関連と同じような背景が存在するように見える。

まず、2つの事件の関連だ。毒餃子事件はすでに”独立した故意に毒物が投与された事件”とされ、”食品安全問題”には属さないとされているが、2つの事件は、河北省石家荘市で発生し、時間的にも差がそれほどない。毒餃子事件は1月で、毒ミルク事件は”3ヶ月前の可能性がある”。更に重要なのは、主管部門も同じだということだ。つまり、毒餃子問題の進展が、毒ミルク事件を暴くこととなったことは排除できないということだ。中国側の人間が、毒餃子問題の6月の最新の調査状況を漏らし、日本国内からは、これは毒餃子問題が解決するという重要な信号ではないか考える声が上がった、と8月6日の『読売新聞』のスクープ記事が指摘していた。当時は、誰もこの情報が漏れた原因を指摘することはできなかった。しかし、今見ると、これは毒ミルク問題がキーの段階入った頃で、この時の中国側の責任期間は厳しい試練に直面していて、某一級の期間が策略を考慮しこの情報を流した、という可能性は非常に高い。

更に明らかなことは、2つの事件の類似性だ。数千人の乳幼児を肝臓結石に至らしめた、この苦しい病気の原因は非常に多く、例えば検査項目が不健全で、検査免除企業の権限があまりに大きく、牛乳の収拾過程が非合理的で、物価の上昇、病院サービスの不足、粉ミルクの服用方法の間違いなどなどがある。しかし、毒ミルク事件が判明してからの各方面の処理の仕方の中で浮かんだ問題は、毒餃子事件の時と非常によく似ている。私は以下のような4つの見方をしている。

一つ目は、中国の大企業の社会的責任感の不足で、食品安全事件を処理する際、往々にして”隠蔽”の方法を取ることだ。三鹿グループは、2008年3月にすでに取引先から苦情が寄せられており、体に問題が出現した乳幼児がいたことを知っていたのだ。国務院報道弁公室の会見で、「メラミンによる肝臓結石が発病するまでの期間は3〜6ヶ月だ」と述べていたが、言い換えれば、三鹿がこの時点で責任ある態度を取っていたなら、すぐさま問題を公表し商品を回収していたなら、この6,000人以上の乳幼児の大部分は結石患者とならずに済んだということなのだ。しかし、三鹿は直ぐに政府に報告せず、告発者への補償、ネット媒体の助けを借りて、密かに販売店の在庫の粉ミルクを更に転売しようと試みたりなど、水面下で活動し、この問題を隠蔽しようとしたのだ。しかし、汚染された粉ミルクは700トン以上にも達し、これらの措置では今回の深刻な危機を解消することが出来なかったのだ。中国最大の粉ミルク生産業者が、このような間違いを犯したことは、技術的常識が欠如していたのではなく、極端な自己利益保身の重視と生命と健康を第一としていないからだということは明らかだ。

FT(中文版)「从“毒餃子”到“毒[女乃]粉”

9月18日付『明報』によると、毒ミルクにより死亡した乳幼児は、17日に新疆衛生部が新たに死亡1人を確認したと公表し、あわせて4人となっております。

記事は続きます。

企業の社会的責任感の欠如が原因という話をすると、どうしても1つの観点を提出せざるを得ない。それは、企業の指導者は、”社会的責任”とは何かということを根本的に理解していないということだ。例えば、今回、国家品質検疫総局に検査免除資格を与えられていた蒙牛グループがある。今年の3月27日に蒙牛グループの会長・牛根生は、自身のブログで「大ブランドが負う大きな責任」という文章を発表している。文章には「社会的責任を承諾することは企業の第一の仕事だ」とある。社会的責任を承諾するとはどのようなことかと言うと、彼はひとつの実話を例に挙げている。2005年、一人の子供がヨーグルトを食べたのち死んだ。このヨーグルトは、蒙牛公司の製品だった。この件を聞き、牛会長がどのような方法を用いてメディアが中毒事件を報道することを阻止したのか知らないが、調査が終了する前にその街にあった30トンの蒙牛ヨーグルトを回収し廃棄した。このような方法をとった理由に関して彼は、「消費者の安全と健康を第一としたためだ」と釈明している。この案件は、最後には毒物投与事件と証明されたが、もし状況が違っていたらどうなっていただろうか?彼の以前の行動と活動の努力は、どのような性質によって決定されたのか?ひとつの乳製品企業の会長像は、彼のように何が社会的責任であるのあるのか、何が企業利益なのか、はっきりとわかっていないのであろうことは、この企業の製品に問題が現われ、簡単に想像できた。

2つ目は、地方政府と大企業の間の複雑な関係だ。9月17日の国務院報道弁公室の会見で、三鹿グループはすでに8月2日に石家荘市政府に粉ミルクの汚染状況を報告していたと述べられた。しかし、石家荘の市委員会と政府は、国家の規定――「2時間以内に」上級政府へ報告せよ、という規定に従わず、98日も報告を先延ばしにした。すなわち、三鹿汚染事件が国内で広範に報道された後ということだ。河北省省委員会と政府も、ニュージーランド総理ヘレン・クラークの批判に対して即座に対応しなかった。省市の2つの級政府のこのようなな背景について、9月13日に国務院報道弁公室の会見上、記者が「政府は三鹿公司の株式を保有しているのか?」と質問し、河北省の役人は政府が株式を保有していることを否認したが、その後、石家荘市新華区委員会が三鹿会長・田文華の職務を解任する文書を発布した事実を見ると、現地政府と三鹿グループの間に非常に密接な関係があったことは明らかだ。注意すべきは、三鹿グループの公式サイトの5月6日の報道――「河北省副省長・孫瑞彬が三鹿を調査研究す」という報道によると、三鹿が情報を隠蔽していた期間の5月5日、河北省副省長・孫瑞彬が三鹿を視察し指導している。当時、孫瑞彬は、三鹿グループの発展を「高度に評価」し、あわせて「三鹿は、製品の品質が企業の生命であるとし、ひとつひとつの牛乳の健康と安全を確保し、全国人民のために高級な品質の乳製品を提供しなければならない。企業から市場に至るまでのそれぞれの前行程を適切にしっかりと行い、技術開発の更なる力を投入し、製品構造を合理化し、消費者の喜ぶ製品の開発を行わなければならない」と強調していた。これは、この会社が現地にとって重要であることを明らかに証明している。

毒餃子事件における状況は、日本の消費者が餃子を食べて中毒となってから、本来は政治的争議を捨て、共同で真相を捜査し、両国政府が容疑者を探さなければならなかったが、互いに非難し責任を押し付けあうという論争に陥り、調査工作が一度受け身となることを招いてしまった。毒ミルク事件については、恐らくこの問題は、もう少し深刻だ。今回、被害を受けたのは中国民衆だけで、被害は更に深刻だからだ。

3つ目は、国内メディアが依然として輿論による監督作用を有効に発揮していないということだ。粉ミルク汚染は、大量の消費者の身の安全に関わる極めて重大な事件で、国内メディアは数種類の類似した事件についてもっと留意しなければならない。しかし、6月、7月にネット上で相次いで多くの乳幼児が結石となったという情報が流れたが、これを報じたメディアはなかった。9月8日、『甘粛晨報』がようやく第一報を報じたが、文中には奇妙なことに”三鹿”というブランド名は登場せず、単に”某有名ブランドの粉ミルク”とだけあった。その後、汚染粉ミルクのブランドの論争が非常に激しくなり、9月11日になり、新華社がついに”三鹿”のブランド名を公表したのだ。しかし、クラーク首相の話をすれと、彼女は9月8日にニュージーランド駐中国大使館に対して直接中央と交渉し、この情報を公表するよう要求せよと命じている。これが正しければ、新華社の報道はいくらかの”迫られての”という要素が多分に含まれていたということになる。信じがたいのは、どうしてメディアが、深刻な疑いのある三鹿ブランドが市場に大量に販売されているときに、この名前を公表しなかったのかということだ。このような事実を隠蔽し、得するのは誰だろうか?

FT(中文版)「从“毒餃子”到“毒[女乃]粉”

実はこの記事、イギリス人記者によるものではなく、北京大学在学中(卒業したのかな)の日本人によるものだったりします。若い方ですが、中国内の方々のメディアで論評をよく見かけます。つい先日、新華社傘下『国際先駆導報』に「日本人はなぜ日中関係をよいと見なさないのか」という論評記事を発表しておりました。多分、同一人物。曰く「日本人の対中感情悪化に毒餃子事件は多大な貢献をした」と。

日本人の対中感情が悪化していることは、中共メディアでも話題となっていて、先日、外国人記者クラブで行われた自民党総裁候補者らの記者会見の中で、香港フェニックスの記者が「トップと一般国民とで日中関係に対する温度差があるが?」といった質問が飛び出したのも、このような背景があったからだろうと思います。ここで誰か一人でも食の安全に絡めて答えていたら面白かったかも知れません。

そんな中国では、胡錦濤が対日宥和路線を推し進めて以来、反日が押さえつけられているのですが、山梨県で発生した中国人研修生を巡る事件がネチネチと地味に取り上げられ続けております。満州事変から77年目となった9月18日の外交部定例会見で、この件に絡めて第二次大戦中の中国人労働者問題を取り上げ質問が飛んでいたりしておりました。

また、先日四国沖に出没した”国籍不明”の潜水艦について、日本政府が捜査打ち切りを発表した途端に「”不明”潜水艦、易々と日本の最新鋭防衛網を突破す」なんて記事が配信されておりました。燻っておるのです。

毒ミルク事件の記事は、あと少し続きます。

4つ目は、”外を重視し内を軽んじ、基準が同じでない”という問題だ。中国政府は、食品安全問題についてずっと厳格な基準を設けているが、国家基準は非常に多くの状況において厳格に施行されていない。この問題は毒ミルク問題が体現している通りで非常に明らかなことだ。国家品質検疫総局の話によると、今回検査した粉ミルク製品の国内491品目で、不合格となったのは69にもなったが、中国がバングラディシュ、イエメンなどの国に輸出しているのと同じ種類の製品は完全に合格したという。その他、オリンピック、パラリンピックに提供した製品も完全に合格だったという。これは政府が輸出貿易とオリンピックを重視していたということが明らかで、同時に合格する粉ミルクを製造することがそれほど難しくないということを説明していることにもなる。このような情況の下、491品目中69種類もの不合格品があるということは、本来あってはならないことだ。中国が2000年から実施してきた”国家検査免除製品”制度は、重要な結果を招く原因の一つとなったと言わざるを得ない。それは、あらゆる称号を得ている商品も、国内で普通の検査でもパスできず、つまり検査免除は不良品を生み出す原因となったということだ。中国は、輸出製品やオリンピック専用製品のようなものだけを重視するのではなく、自分達の民衆の食の安全を重視して初めて、毒ミルク事件の再発を防ぐことができるのだ。まさか本国人民の生命と健康が、国家のイメージや面子に劣るというわけではあるまい。

要するに、2008年に石家荘で発生した2つの事件は、中国の食品安全問題への責務の道は遠いということを充分に説明しているということだ。

FT(中文版)「从“毒餃子”到“毒[女乃]粉”

9月18日、国務院は検疫検査免除制度の廃止を発表しています。

今回の一連の事件の中で、河北省政府は、石家荘市市長、委員副書記でもある冀純堂の罷免を17日に決定しています。

この記事では「同志」という単語がまだ付いているので、党籍除籍は免れているようです。

そして前日の16日には、石家荘市副市長、石家荘市食品薬品監督管理局局長、石家荘市質量技術監督局局長、そして三鹿グループの会長の罷免を決定しております。

また、17日に開かれた記者会見で、国家品質検疫総局局長が、検疫官に汚職がなかったかなど含め調査し、厳罰に処すと発言しています。

このような措置に限らず、全国から対象商品を回収したり、被害状況が報告されたり、検査結果が報告されたりと、次々と対応措置が今なお行われています。これが被害が広範に渡っているにも関わらず、暴動が1件も漏れ伝わってこない一つの要因だと思います。

事件が燻り始めて3ヶ月ほど経過して公表されているので、迅速では全くないのですけどね。「政府は必死に対応している」という大々的な喧伝が効いているのかも知れません。

19日行われた胡錦濤の中央党校での演説の中で、「党内の一部に不逞な輩がいる」というようなことを何度も繰り返し述べており、中央はそれなりの危機感を持ち合わせているようですが、その刀でどこまで地方を斬れるのか、というところだと思います。

おまけ:自民党総裁選記者会見@外国人記者クラブ(080919)

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posted by タソガレ at 00:38 | Comment(0) | TrackBack(1) | 食品、疫病、災害とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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Excerpt:  先のエントリーの追記で、メラミン混入牛乳に関し、日本でも丸大食品製品を介して輸入されていたとの産経記事を紹介した。更に詳しい同社記事が出たので、それを転載する。 既にシンガポールでは、シナの乳製品輸...
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Tracked: 2008-09-21 01:43