インド、日本に接近す

2008年10月23日

人民日報傘下の大衆紙『環球時報』の22日付記事を新華網より。インドメディアの記事を中国語訳して紹介しているものです。

インドの雷迪夫網の10月21日付けの記事、原題「インドが東を向き東京を発見す」――北京で開催される第七回アジア欧州会議へ向かう途中、インド総理シンは東京に立ち寄る。今回は、2004年に彼がインドの総理に就任してから2度目の日本訪問で、これはインド外交の優先順位が、東アジア地域において変化が起こっていることを示している重要なポイントである。

最近行われた世界的調査の結果は、大多数のインド人と日本人は引き続き相手側に好感度を有していることを示している(それぞれ65%と60%)。これは、彼らとそのほかの国家、特に中国とは鮮やかな対比を形成している。

「ここに至りインドと日本とは、強靭な現在の関係を築き上げ、これは世界的パートナーであり戦略的パートナー関係でもあり、アジアや全世界にとって重大な意義を持つものである」とインド総理が言った通りだ。インドは日本との関係を築いてきたここ数年、非常に多くの要素が変化してきた。その中で構造的側面では、中国がアジア太平洋地域の内外で勃興したことで、根本的にインドと日本との戦略的基盤を改変させ、両国に相手側への態度や視点について再び新たな思考を迫ることとなった。インドは、日本がアジア太平洋の安全体系の中で中心的役割を演じることを非常に願っているように見える。

中国の勃興は、中印関係の変遷の中におけるひとつの重要な要素で、これは、アメリカの意図であるインドをこの地域のひとつの主要なバランサーにしようということにとっても重要な原因のひとつとなっている。インドと日本は、中国の勃興を阻止しようと努力していることは非常に明らかだ。これは中国が安保理拡大において、インドと日本を常任理事国にすることに反対してきたことを反映したもので、非常に明らかなことだ。中国は、安保理常任理事国と核大国という地位を擁しているが、この地位は、中国が同じアジアのその他の如何なる国家にも分け与えたくない地位なのだ。インドの積極的にアセアンや東アジアの国家と接触するという”東を向く”政策は、かなり大きな部分を日本の支持に頼っている。日本は、インドの東アジアトップ会談への参加を推進し、日本はインドを含めた東アジア共同体の設立を提唱しており、これは中国の提唱している東アジア自由貿易区設立と対抗するものだ。中国は、インド、オーストラリア、ニュージーランドのアセアンへの参加を阻止しているが、日本はこの3カ国のアセアン加入を強烈に支持している。

印日がパートナー関係を設立することは、アジアの権力バランスを維持するのに極めて重要だが、両国は、このような関係が発芽する状態を一生懸命育てる必要がある。インドと日本は、このような誘惑に抵抗しなければならない。即ち、両国のパートナー関係を中国に対するものと用いるという誘惑だ。持ち上げられている”民主国家協奏曲”が上演できない理由のひとつがこれだ。今のところ、デリーと東京は、中国と膠着状態にはない。

新華網「印媒:印東亜外交想拉日本抗衡中国(環球時報)

インドのシン首相が、北京経由東京ではなく、東京経由で北京に赴く意味を説明してくれております。以前「中印外交バトル」で中印の外交バトルを紹介しましたが、今回はそのバトルの中で日本も重要や役柄を演じているということを記事は教えてくれております。

このような出来事がある一方で日本のメディアは、麻生さんの連夜の”豪遊”にご執心。もうね・・、ワーワー言っている彼らは、金正日やトウ小平らのように人民服を着て庶民と苦しさを分かち合ってくれているトップを熱望しているようですね。・・・今回は北海道新聞がすこぶる酷い。

今回のシン首相来日に話を戻します。今回2つの文書に署名しております。

「民主主義という価値観を前面に出しにくい」と記事にはありますが、署名した2つの文書の冒頭は次の通りです。

日本国とインドの両首脳は、

日印関係は、両国が地域及び世界全体の情勢に対して同様の認識を有していることに基づいていると確認し、

民主主義、開かれた社会、人権、法の支配に対する共通の決意を認識し、

アジアそして国際社会の平和と安定及び発展の促進に向けた相互の貢献に対する深い尊敬の念を確認し、

外務省「日本国とインドとの間の安全保障協力に関する共同宣言(仮訳)

日本国とインドの両首脳は、年次首脳会談のため、2008年10月22日に東京で会談を行った。両首脳は、日印両国が、価値と利益を共有するアジアの主要国として、アジアと世界の平和と安定、繁栄を促進するとの観点から、二国間の協力及び地域と国際社会における協力を前進させなければならないとの認識を共有した。

外務省「日印戦略的グローバル・パートナーシップの前進に関する共同声明(仮訳)

この点に『産経新聞』は注目し、これを報じる記事の中で次のように触れております。

(前略)

会談で両首脳は、戦略的な2国間関係の前進に関する共同声明にも署名した。両国を「基本的価値と利益を共有する」と位置づけ、(後略)

MSN産経ニュース「日印首脳会談、安保共同宣言に署名

今回の文書署名について『朝日新聞』は次のように解説しています。

(前略)

両首相は「安全保障協力に関する共同宣言」に署名。日本が同盟関係にある米国以外と安保分野で包括的な枠組み作りを表明するのは、オーストラリアとの共同宣言に続き2例目。中東から日本に原油を運ぶシーレーンの安全を「共通の利益」と認識し、テロとの戦いでの協調も確認した。こうした協力を促進するための具体策を盛り込んだ行動計画も作成する。

首脳会談では、米印原子力協定の発効を受け、核の平和利用や核拡散問題でも意見交換。記者会見で日印間の原子力分野での協力を問われ、麻生氏は「インドは核実験のモラトリアム(凍結)継続を含めて、約束と行動をしっかりしてほしい」と要請。シン首相は「日本では非常に微妙な問題だと認識している。日本の国民が安心できるペースで進めたい」と応じた。(東岡徹)

あさひしんぶん「日印首脳、EPA交渉加速で一致 安保協力で共同宣言

「共通の利益」に触れ「共通の価値」に触れないのは、なぜでしょう(棒

記事にあるとおり、米印原子力協定の発効によって『環球時報』の翻訳記事の中にある、中国のアジアで擁している独占的地位のひとつである「核大国」の独占が消え失せたということになります。今回の2つの文書署名を受けての面白い記事があれば紹介したいと思っています。

で、冒頭の「嫌なにおい」、簡単に言えば妄想なのですが(w、引っかかった点が1つあって、

  • 日本の常任理事国入りに反対が結果として両国を近づけた

とある点。

常任理事国入り反対は、2005年に中国全土で吹き荒れた反日デモの第一のスローガンだったものです。

ちなみに小泉さんによる靖国神社参拝は直接的なデモの原因ではありません。2005年に小泉さんが靖国神社参拝したのは10月17日で、2004年は1月1日です。この反日デモは2005年4月から5月にかけて発生したものです。直接の引き金ではなかったのです。

当時、反日デモの直前に、それまで態度をはっきりさせなかった中国政府が突如「日本の常任理事国入り反対」を明言しました。中国が明言するまでもなく、日本の常任理事国入りは難しい情況になっていただけに、この明言に驚いたことを覚えています。

反日デモまでの簡単な流れは、まずアメリカで在米華僑らが日本の常任理事国入り反対署名運動を始め、大いに盛り上がります。それが、当時、教科書問題で反日機運がすでに燻っていた中国本土に輸入されてきます。これが瞬くうちに中国全土に燃え広がり、4月の反日デモの大火となったのでした。

その直後、5月末に来日し小泉さんと会談予定だった呉儀おばちゃんがドタキャンして帰国するという事件が発生します。この時、中南海では、軍若手の強硬派によるクーデターまがいの出来事が発生したのではないかという憶測が飛んでおりました。この後、それまで押さえ気味だった対日姿勢が強硬路線へと再びシフトチェンジしたのでした。

インドメディアの記事の翻訳記事とはいえ、「常任理事国入り反対が日印両国を近づけた」と言及していることで、中国側からすればこの時の政治的判断は間違いだったと言っているわけで、再び胎動してきている強硬派(反胡錦濤)への牽制の意味があるのかなぁと。先日の津軽海峡公海上の中国軍艦の出現が、強硬派が胎動しているひとつの兆候ではないかなぁと。ちなみにこの件、中国内でも共同通信の報道を転載する形で、丁寧に地図入りで報じられています。

この件について、21日に外交部定例会見があったのですが、質問がなされたのかどうかわかりませんが、外交部の発表には、この件についての質疑応答は記されていません。

世界的な金融危機によって世界がきな臭くなってきている中、この危機の影響を大いに受けているであろう中国でも内部でかんなりきな臭くなってきているんじゃないかなと思う次第でございます。

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posted by タソガレ at 01:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 反日侮日媚日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
「インドが東を向き東京を発見す」という記事とは、下の記事のことではないでしょうか。

http://in.rediff.com/news/2008/oct/21guest.htm

内容は、近年の日印関係の発展と今後の課題について述べたものですが、個人的にはこの記事に対するコメントが面白いです。今現在、10個ほどコメントが付いているのですが、一部の反日コメントを除いて、日印関係の発展を支持するものがほとんどで、それと同時に中国に対する警戒感が顕わになっています。

以前もTimes of Indiaの記事で、インド人による嫌中感情剥き出しのコメントを読んだことがあるのですが、この辺が中印関係の「微妙さ」を象徴しているように見えます。
Posted by 歩厘 at 2008年10月26日 01:37
いつもありがとうございます。
その記事のようです。
冒頭に安倍さんが登場していますね。

「Looks East」、「東を向く」なんて不細工に直訳してしまいましたが、「ルック・イースト」、東方政策のことですね。
マレーシアのマハティールさんでしたっけ?
日本に学べということですよね。

コメント、興味深いですね。
インドは、すでにパキスタン、ネパール、スリランカ、バングラディシュという中共勢力によって包囲網が敷かれていると。スリランカ、バングラディシュも中共勢力という認識なのですね。
非同盟主義と言っているうちに対外開放した中国に経済的に大きく水を開けられ包囲されてしまっていたことへの危機感ともどかしさみたいなのも感じますね。
Posted by タソガレ at 2008年10月27日 22:48
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