ブータンVS中国

2005年12月21日

先日、朝日新聞に次のような記事が掲載されていました。

ヒマラヤの王国ブータンのワンチュク国王(50)は17日の国民向け演説で、08年に総選挙を実施して民主化を進め、それを受けて退位する方針であることを明らかにした。政府系クエンセル紙(電子版)が伝えた。王位は息子のジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク皇太子(25)に譲るとした。
報道によると、国王は「議会制民主主義下の政府を選ぶ選挙を08年に実施する」と述べた。「07年にはブータンは最貧国ではなくなる」とも語った。
国王は権限を議会に一部委譲するなど、これまでも民主化に向けた改革を進めてきた。今年3月には同国で初めてとなる成文憲法制定に向けた草案を発表。民主的な立憲君主制を政体として明記し、65歳の国王定年制の導入もうたっていた。
ただ、突然の退位発表は国民を驚かせた。AP通信によるとクエンセル紙のキンレー・ドルジ編集長は「全国民が衝撃を受けている。国王が退位するなど誰も考えていなかった」と語った。
朝日新聞「ブータン国王、退位表明「総選挙で民主化移行後に」

bhutan-king.jpgそこでクエンセル紙のサイトを覗いてみた。

国王は、建国記念日である17日に約8000人の聴衆の前で上のような演説を行ったようです。クエンセル紙が「歴史的瞬間」としてその演説に対する人々の反応を記しています。

んで今回のタイトルの「ブータンVS中国」について。かなり以前に中国外交部の定例記者会見を眺めていたときに、ブータンと中国の国境紛争について質問が飛んでいるのを目にし少し気になっておりました。そして上記の記事を見て国境紛争を思い出し、少し調べた次第です。

つい先日の12月1日の定例記者会見でも同様の質問が飛び、秦が次のように答えています。

中国とブータンはずっと善隣友好関係を維持し、双方は平等の友好的な協議を通じて、早期に両国間の国境問題を解決することを支持する。双方の共同の努力のもとで、中国-ブータン国境地区は平和の安寧な局面を維持している。
中国政府はブータンの伝統と友情を重視してと、これまでと少しも変わらず平和共存五原則の基礎の上でブータンとは近隣友好協力関係を発展していると私は強調したい。
中華人民共和国外交部「2005年12月1日外交部発言人秦剛在例行記者会上答記者問

まー、相変わらずの中華節です。

で、そもそもの原因なのですが、South Asia Networkの記事によるとブータンと中国との間で1998年にブータン-中国国境470キロの策定協定を結んだようなのですが、中国側がその協定を破る形でブータン側に道路建設を行ったということが原因のようです。この為、ブータンでは「このまま建設した道路の地域を中国に編入するのではないか?」という疑念が生じ、抗議しているということのようです。至極真っ当な疑念と抗議だと思います。

では、中国側はなぜ道路を建設したのか?Independentの記事のよると「Cordyceps(冬虫夏草)」と呼ばれている珍しいキノコ(1キロ当たり4000ポンド)を狩るための道であるようです。中共中央が噛んでいるというか、単に諸侯が勝手に誤って建設したのでしょうね。それに対して抗議するも、中共中央は面子を気にして引き下がれないというのが実情なような気がします(もしかしたら深慮な目的があるのかも知れませんが)。

7月には、この道を使ってブータン側に密入国しキノコ狩りを行う中国人が多いと抗議を行っていますが、中国側は「大げさな」と一蹴し、道路建設を黙認していたようです。中国のこのような回答と態度に対してブータンの議員の一人は次のように言っています。

ブータンは限られた土地の小さな国です。我々がほんの小さな地域を失うとすれば、それは我々の将来の世代に大きな問題を残すことになりますし、更には国家主権に関わる問題でもあります。
Independent「Bhutan's rare and exotic fungi 'stolen to order'

中国が領土侵犯を犯しているのは、6キロの道路のうちの4キロに過ぎませんが、将来の世代へ禍根を残さないために国家の威信にかけて抗議を行っているわけです。また、政府に対して国境警備隊の派遣を要請しています。ブータンが軍隊を持っているのかどうか知りませんが、問題となっている地域に警備隊は常駐していないようです。せめて、4月〜8月のキノコ狩りシーズンの間だけでも派遣して欲しいと要請しています。中国は、ブータン側が無防備なことをよいことに、協約を破棄して侵略を行っているわけです。

外交部の会見にあるように口では問題解決に前向きなポーズを示しながら、自ら問題を更に拡大し、その手を緩めることなく既成事実をどんどん積み上げていく。そうです東シナ海で日本に対して行ってることと全く同じ手法です。

その他のソース記事
HindustanTimes「Democracy gets royal sanction
Times of India「Bhutan accuses China of intrusion
Save Tibet「Bhutan's Deputies Concerned By Border Issues with China

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posted by タソガレ at 21:44 | Comment(5) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
こんにちは。軍隊の話が出ていたのでちょっと触れてみます。
ブータンには小規模な陸軍部隊がいますが、基本的にはインドの軍事顧問団(ティンプーその他主要地点に駐留し、軍事支援を提供。)に頼っているのが現状のようです。(外務省:ブータン王国基本情報より)
国境警備隊は、ブータンと中国間の国境警備というよりも、ブータンとネパール間の難民問題に対応しているほうが意味合いが強いように見えます。
Posted by Chaborin at 2005年12月22日 11:56
ブータンは基本的にインドに大きく依存している国です。
軍隊は小規模な陸軍部隊がいますが、基本的にはインドの軍事顧問団(ティンプーその他主要地点に駐留し、軍事支援を提供。)に頼っているのが現状のようです。(外務省:ブータン王国基本情報より)
国境警備隊は、ブータンと中国間の国境警備というよりも、ブータンとネパール間の難民問題に対応しているほうが意味合いが強いように見えます。
Posted by Chaborin at 2005年12月22日 11:57
Chaborinさん、こんばんは。
情報ありがとうございます。外務省のページ、いいですね。ここまで詳しく各国情報が掲載されているとは知りませんでした。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/

国の成り立ちを見ると、非常にインドとの関係が強固で、また、日本の皇室とも深い交流があるのですね。

隣のネパールは、中国の影響と依存度が非常に大きく、民主化以降混乱しているようですが、中国に毒されることなくスムーズな民主化を実現して欲しいですね。
なんだか、今回の件もインドの影響力が大きなブータンに少しでも影響力を行使したくて中央が仕組んだのではなどと思えてきました(笑)

ブータンについて少し調べている中で「西岡京治」という人物に当たりました。28年間ブータンで農業指導をされ、最後はブータンで亡くなっています。国王から「ダジョー」という最高の称号を与えられ、最後は国葬が行われたとあります。
http://www.ifsa.jp/kiji-sekai-nishioka.htm
http://www.tbs.co.jp/f-hakken/mystery886_2.html
Posted by aki at 2005年12月23日 00:22
「Cordyceps」は冬虫夏草です。
Posted by 通りすがり at 2005年12月23日 11:33
通りすがりさん、ありがとうございます。冬虫夏草のことだったのですね。勉強になりました。というか冬虫夏草がキノコであったと初めて知りました。本文に追記しておきます。
冬虫夏草とは、なんかこー得たいの知れない木の根っこみたいなのを想像していました(笑)
Posted by aki at 2005年12月24日 00:28
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