ということで、記事を整理しておきます。
黒龍江省など4省市の書記人事
【北京=飯野克彦】新華社電によると、中国共産党は地方のトップにあたる共産党委員会書記に黒竜江省で銭運録・貴州省党委書記(61)、貴州省で石宗源・国家新聞出版総署長(59)、湖南省で張春賢・交通相(52)、重慶市で汪洋・国務院(政府)副秘書長(50)をそれぞれ任命した。50代の若手の起用が一段と進み、胡錦濤総書記(国家主席)が権力基盤を拡大しつつある。
黒竜江の宋法棠(65)、湖南の楊正午(64)、重慶の黄鎮東(64)の3書記は退任した。宋氏らの65歳定年にともなう異動とみられる。交通相や新聞出版総署長の後任はいずれ発表されるとみられる。 (07:01)
日本経済新聞「中国の4省市でトップ交代」
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 銭運録(61) | 黒龍江省党委員書記 | 前貴州省党委員書記 共青団出身。 |
| 石宗源(59) | 貴州省党委員書記 | 前国家新聞出版総署長 共青団出身、回族。 海外新聞の発売を禁止する。 |
| 張春賢(52) | 湖南省党委員書記 | 前交通相 |
| 汪洋(50) | 重慶市党委員書記 | 前国務院副秘書長 共青団出身。期待の若手の一人。 |
日経は、胡錦涛派の躍進という捉え方をしているようですが、省市より上級人事で江沢民派が要職を占めている政治局委員人事にまだ踏み込めていない点を捉えて亜州時報の時事評論員である潘小濤は「江沢民派の反発もまだまだ大きい」としています。また、五中全会の時に噂されていた上海市党委員書記陳良宇の更迭もされておらず、今後の陳良宇の動きに注目。彼に左遷人事が下れば胡錦涛の勝利、逆に中央へ進出してきたら已然胡錦涛VS江沢民の戦いは続いているということになると分析しています。
軍内人事
【香港20日共同】19日付中国系香港紙、文匯報によると、中国人民解放軍で幹部の人事調整が相次いでいる。胡錦濤国家主席が昨年9月、軍トップの共産党中央軍事委員会主席を江沢民前国家主席から継承後「最大の人事異動」という。
前任者の定年に伴う異動が大半だが、新任者には従来の陸軍重視の伝統を破り、ハイテクや実戦に詳しい空海軍出身者が重用される例が多いのが特徴。実務重視とされる胡氏の軍掌握ぶりを示す動きといえそうだ。
文匯報によると、今月に入り劉少奇・元国家主席の子息で空軍出身の劉振起氏が総政治部副主任に就いたほか、李買富・空軍副司令員が総後勤部副部長に、黄献中・国防科学技術大政治委員が瀋陽軍区政治委員に就任。情報部門などを担当する重鎮、熊光楷・副総参謀長も最近引退し、後任が注目されている。
岩手日報ニュース「 中国軍で大幅人事異動 空海重視、胡氏の掌握進む」
まず、上記の記事には間違いがあります。劉少奇の子息が劉振起となっていますが正しくは劉源といい、彼は20万の軍縮を高く評価され軍事科学院政治委員に栄転しています。
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 劉振起 | 解放軍総政治部副主任 | 前解放軍総政治部副主任補佐 回族。空軍出身。 |
| 童平世 | 解放軍総政治部主任補佐 | 前海軍政治部主任 |
| 劉源 | 軍事科学院政治委員 | 前総後勤部副政治委員 劉少奇の末っ子。 |
| 李買富 | 総後勤部副部長 | 前空軍副司令員 |
| 張海陽 | 成都軍区政治委員 | 前北京軍区政治委員 元中共中央軍事委員会副主席張震の息子 |
| 遅万春 | 総備政治委員 | 前瀋陽軍区政治委員 |
| 黄献中 | 瀋陽軍区政治委員 | 前国防科学技術大政治委員 |
| 宋才文 | 瀋陽軍管区副司令員 | 前蘭州軍区副司令員 |
| 李世明 | 瀋陽軍管区副司令員 | 前瀋陽軍管区参謀長 |
| 侯樹森 | 瀋陽軍管区参謀長 | 前瀋陽軍区聯勤部部長 |
| 徐一天 | 国防科学技術大政治委員 | 前広州軍区副政委兼南海艦隊政委員 |
これらの人事は、どの記事を読んでも空海軍重視に移行しているとされています。香港文匯報の言葉を借りると「今まで陸軍出身者が占めていたポストを空海軍の将校が占めている」と。かって海軍出身の唐天標が総政治部副主任に任命された時は、海軍を除隊し陸軍所属となったが、今回は空海それぞれの所属のまま任命されているとも記しています。また、胡錦涛が軍内を掌握しつつあるという分析も一致しているようです。
四大総部人事
解放軍組織には、中央軍事委員会の下に参謀本部、総政治部、総後方勤務部、総連合勤務部からなる4総部と呼ばれる指導機関が設けられており、それぞれの人事が解放軍報で発表された。把握できたものを備考に記しておきます。間違い、追加などあればコメントでお知らせいただければ助かります。
参謀本部
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 梁光烈(上将 65) | 参謀総長 | 留任、陸軍出身 中共軍事委員会委員、中国中央軍事委員会委員 |
| 葛振峰(上将) | 副参謀総長 | 留任 |
| 張 黎(上将) | 副参謀総長 | 留任 軍紀委員会副書記 |
| 呉勝利(中将) | 副参謀総長 | 留任、海軍出身 |
| 許其亮(中将) | 副参謀総長 | 留任、空軍出身 |
| 李 玉(中将) | 参謀総長補佐 | 留任 |
| 章沁生(少将) | 参謀総長補佐 | 留任 |
副参謀総長を引退した熊光楷上将の後任人事が行われていないが、昨今の後任人事を眺むるに章沁生が就任する可能性が高いという見方があるようです(ソース:明報)。
総政治部
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 李継耐(上将 63) | 主任 | 留任、砲兵出身 中共中央軍事委員会委員、中国中央軍事委員会委員 |
| 劉永治(中将) | 副主任 | |
| 孫忠同(中将) | 副主任 | 兼軍紀委員書記 |
| 劉振起(中将) | 副主任 | 新任、空軍出身 |
| 童世平(中将) | 主任補佐 | 新任、海軍出身 |
| 姜吉初(中将) | 主任補佐 | 新任、少将から中将に昇進 |
総後方勤務部
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 廖錫竜(上将) | 部長 | 留任、陸軍出身 中共中央軍事委員会委員、中国中央軍事委員会委員 |
| 孫大発(中将) | 政治委員 | |
| 孫志強(中将) | 副部長 | |
| 王 謙(中将) | 副部長 | |
| 李買富(中将) | 副部長 | 新任、空軍出身 |
| 孫思敬(少将) | 副政治委員 | 新任 |
総連合勤務部
| 人物名 | 役職 | 備考 |
| 陳炳徳(上将) | 部長 | |
| 遅万春(中将) | 政治委員 | 新任 |
| 李安東(中将) | 副部長 | 留任 |
| 張詩明(中将) | 副部長 | 留任 |
| 朱発忠(中将) | 副部長 | 留任 |
| 張建啓(少将) | 副部長 | 留任 |
| 李棟恒(中将) | 副政治委員 | 留任 |
4総部人事について、同志社大学法学部の浅野亮教授が次のように記しています。
解放軍上層部では、政治的または人的な関係による人事が相対的に強いといえる。しかし、副総参謀長のような冷静な実務を要求されるところでは、新任のボスがかつての部下や知り合いを連れてくるだけでなく、将来の戦争に必要とされる人材を集めている面も強くなってきたことは否定できない。
軍事指揮官を中心にみてみると、解放軍指導部では個人的関係によって動く人事が少なくないように思える。しかし、劉華清の引退以後、解放軍の人事の政治的色彩は薄れ始め、幹部が同じポストに 10 年以上居座ることはほとんどなくなり、また人事異動がたとえ派閥力学上の要因からであっても、その影響力はほとんど解放軍の内部に限られ、党や国家まで及ぶことはなくなっていた。解放軍の人事は党からの介入に対して相対的に自律性が高 まったとしても、逆に政治的な意味もほとんどなくなった点は特筆に値する。
第六章「中国政治と軍の役割(PDFファイル)」(註1)
上記分析のように「将来の戦争に必要とされる人材を集めている面
」が強い人事が行われたとすると、これまでの陸軍重視から空海軍重視に戦略的に変化したということになり、日本にとっては今までよりも軍事的に現実的脅威ということになりえるということになります。
このような解放軍の性格が変化しているにも関わらず、前原さんらの中国脅威論に中共が強く反発したことだけを捉えて、「無神経な発言だ。理解できない
(横路孝弘)」と言ったり「中国の軍事的脅威を誇大化するのは外交的失敗
(鳩山由紀夫)」、「中国の軍事力を『脅威』と言うと、わが国への侵略の意図があると言っていることになり、一層の緊張が生まれる
(山崎拓)」などと中国脅威論を批判するのは、日本を預かる政治家として無責任な発言だと思うわけです(註2)。
- ソース記事
- 新華社「中共中央調整四省(市)委主要負責同志職務」
- 人民网「黒龍江、貴州等省市委主要負責同志職務調整」
- 亜州時報「全国人事棋 胡錦涛尚欠関鍵一着」
- 香港文匯報「劉源晉陞軍事科學院政委」
- 香港文匯報「四大軍區換班海空將領擔重任」
- 博訊網「解放軍公布四総部高層名单」
- 解放軍報「四総部領導人」
- 参考サイト
- Wikipedia「中国人民解放軍」
- 「中国の軍事力」
- チャイナネット「軍事制度」
- 新華社「中国共産党中央軍事委員会」
- 註1
- このレポートは、2004年12月〜2005年3月に財務省の委嘱研究会「中国の政策決定システムの変化に関する研究会」のもの。報告書は全7章からなっており、なかなか面白そう。
- 註2
-
横路孝弘衆院副議長は25日、高知市であった民主党高知県連のシンポジウムで講演し、一議員の立場としながらも、民主党の前原代表が「中国脅威論」や集団的自衛権を行使できるように憲法を改正すべきだとの考えを示していることについて「無神経な発言だ。理解できない」と批判した。
横路氏は「(前原氏が言う)『現実的な脅威』と言うと、仮想敵国になってしまう。周辺事態で集団的自衛権を行使するとは、中国や朝鮮半島に何かあったら自衛隊が(米軍と)出かけていくということだ」と説明した。
朝日新聞「前原発言は「無神経」 横路副議長」 - 中華人民共和国駐日本大使館「中国は脅威でない、日本民主党幹事長」
自民党の山崎拓前副総裁は25日のフジテレビの番組で、麻生太郎外相が中国の軍事力を「脅威」と表現したことについて「言葉づかいを間違っている。政府の公式見解は『懸念材料』だ。中国の軍事力を『脅威』と言うと、わが国への侵略の意図があると言っていることになり、一層の緊張が生まれる」と指摘し、適切な表現ではないとの考えを示した。
同じ番組に出演した町村信孝前外相も「脅威というとらえ方もあることは否定しない」としながらも、「政府の要人がそう言うのが適切かどうかという判断は別途あろうかと思う」と語った。【田中成之】
(毎日新聞) - 12月25日18時9分更新
Yahoo!ニュース「<山崎前副総裁>「言葉を間違っている」麻生外相を批判」





