新華社が隔週で発行している雑誌『環球』の6月2日号より。
環中国列島における変化
2009年の中国の領海は、明らかに平穏な年の始まりではなかった。中国周辺海域で発生した一連の”突発”的事件、あるいは”偶発”的事件に見えるものは、国民の視線を広大な海洋、あの一連の大洋に点在しているアジア大陸の列島線に向けさせた。
最近、アメリカの週刊誌『ディフェンスニュース』が、再びあるひとつの概念、――”第一列島線”に言及した。この概念に従い、アメリカ海軍観測船”インペカブル”が南シナ海に現われたように思えるが、”ラムフォーム・ヴィクトリー”が黄海に赴くなど非常に奇異なことだ。
”第一列島線”とは、主にユーラシア大陸東部海岸の外側にあるアーチ状の島嶼群のことで、北は日本列島、琉球群島に始まり、台湾島を挟み、南のフィリピン、大スンダ列島に至る島嶼帯で、中国の黄海、東シナ海、南シナ海海域を覆っている。
その他、アメリカ人の戦略構想の中には、”第二列島線”、”第三列島線”と呼ばれるものも存在する。”第二列島線”は、南方諸島(小笠原諸島、硫黄島列島を含む)、マリアナ諸島、ヤップ諸島、パラオ諸島、ハルマヘララマ等の島々で、”第三列島線”とは、主にハワイ群島の基地群からなり、アメリカにとって、アジア太平洋の米軍を戦略的に支える後方で、またアメリカ本土の防衛前線でもある。
2009年の環中国列島線で発生した”妥協できない”事件が人々の注目を引いたわけは、金融危機という中にあって、このような変化は、アメリカのアジアの急速に発展している大国に対する一種の複雑な心情を投影したものであるからだ。
米国の”対中封鎖列島線”の変化と不変
雑誌『環球』駐ワシントン記者・楊晴川
オバマがアメリカ大統領に就任してから、中米関係は全体的に”高開高走”という良好な局面が現われたが、中国周辺海域において、両国の船舶が今年になってから2度も”妥協できない”事態となった。オバマ政権は現在のところ控えめな処理態度、外交ルートによる解決を模索すると表明しているが、アメリカのタカ派勢力は、大げさに騒ぎたて、理不尽に中国側を責め”アメリカの船を混乱させた”とし、”中国の海上脅威論”という新たなプロパガンダを再び吹聴しようとし、オバマ政府が中国に対して強硬な政策を採るよう要求している。
注目すべきことは、この2つの事件は、共にアメリカの戦略上の東アジア大陸のいわゆる”第一列島線”で発生しており、この事件の本質は、依然としてアメリカはアジア太平洋地域において影響力が衰退することを憂慮し、中国の海洋における量的増加に対して強烈な警戒心を有しているということだ。このような心情は、アメリカの戦略観を決定するものであり、アメリカ政府が簡単に変えるものでもない。
”妥協できない”背景
中国の周辺海域で発生したこの2つの”妥協できない”出来事について、アメリカ政府の説明は、双方の海洋に関する国際法規の理解に違いあるとしている。この2つの事件の中で、中国はいずれもアメリカ側の観測船が『国連海洋法公約』を違反し、中国沿岸の排他的経済水域内での”非友好”的活動であると厳正に指摘した。
この公約は、沿岸国家の排他的経済水域は、海岸から322キロ以内の海域で、他国の排他的経済水域での”非友好”あるいは”威嚇的な性質を伴う”軍事行動の禁止を明文化している。3月8日の”インペカブル”事件や5月1日の”ラムフォーム・ヴィクトリー”の事件も、アメリカ軍が観測船を用いての情報収集は、”友好的で威嚇的ではない活動”ではないことは明らかである。
しかしアメリカ側は、排他的経済水域は、国家に海洋開発の経済的権利を与えるもので、その国家に領海権を与えるものではないという。「国の沿岸から19キロ内の海域が領海だ」、この2つの事件において、アメリカの船は”中国の領海権”の範囲外で活動している。アメリカ側は更に、この2隻は”平和的活動”を行っていたもので、中国側に許可を取る必要はないとも語った。
アメリカの観測船は、本国からはるか遠く離れた中国沿岸の排他的経済水域で結局何をしようとしていたのだろうか?世間の人々は皆よく知っている。アメリカの専門家や学者は、アメリカの観測船は中国沿岸で頻繁に活動しているのは軍事目的だということを隠そうとしない。 カーネギー国際平和財団主任研究員、中国安全問題専門家・史文は、「アメリカは、中国の日増しに増強している海軍力、特に中国が海南島付近に新たに建設した潜水艦基地の調査をしたいと思っているのだ」と語った。”インペカブル”は、この種の偵察活動のひとつであるという。彼は同時に、「たとえ法律的解釈において相違が存在しなくとも、アメリカの中国の海岸線付近での軍事機密情報の詮索が止むことはないだろう」とも指摘した。
もっとはっきり言えば、アメリカの中国に対する戦略的防衛が、今回の2度の”妥協できない”件の最も主要な原因である。
戦略的観点から見れば、黄海と南シナ海は、アメリカの対中封鎖戦略の”第一列島線”である。アメリカの戦略的テリトリーから見れば、中国が周辺海域で戦略的優勢となることは、アメリカの対中封鎖網である”第一列島線”を突破することとなるのだ。
主に”第一列島線”は、中国大陸沿岸海域の外側にあるアーチ状の島嶼帯を指し、即ち北の日本列島、琉球群島に始まり、台湾島を経て、南のフィリピン、大スンダ列島まで至る島嶼帯で、中国の黄海、東シナ海、南シナ海を覆っている。”第二列島線”とは、南方諸島(小笠原諸島、硫黄列島を含む)、マリアナ諸島、ヤップ諸島、パラオ諸島、ハルマヘララマ等の諸島のことだ。”第三列島線”とは、主にハワイ諸島の基地群からなり、アメリカにとってのアジア太平洋の米軍の戦略的な後方支援であり、またアメリカ本土の防衛の前線でもある。
”冷戦”期間から、アメリカは様々な二国間、多国間の軍事協力の方式を通じて、まずは”第一列島線”と”第二列島線”に、日本、韓国を核心とする東アジア軍事基地群、フィリピンなどの東南アジア諸国を核心とする東南アジア軍事基地群、アメリカのグアム島を核心とする第二列島線軍事基地群を建設した。これらの軍事基地システムの配列には秩序があり、相互に支援することができ、アジア大陸から太平洋への重要な拠点をしっかりと抑えている。アメリカにとっては、これらの”列島線”は、アジア大陸の国家が海洋に向かって発展することを阻止する重要な拠点であり、米軍の西太平洋地域における裏づけとなる重要なものである。
ここ数年、アメリカの戦略的重心がアジア太平洋に移り、”列島線”は、アメリカの世界戦略の中に置ける作用と地位がよりはっきりとしてきた。北東アジアにおいて、アメリカは在日、在韓両国の駐留軍を調整し、日韓との軍事同盟関係を強化してきた。東南アジアにおいては、反テロ協力を通じて、米軍はフィリピンに戻り、マレーシア、ブルネイなどの国に基地と軍艦の停泊する港を獲得し、制空権の利を得て、シンガポールのチャンギ基地を含め、いくつかの基地と港、空港を新たに建設した。
”第二列島線”にの中心であるグアム基地群については、アメリカは2003年から大幅な軍事力の増強を行い、B-2ステルス戦略爆撃機、AGM-86型巡航ミサイル、大型強襲揚陸艦や原子力潜水艦といった4種類の最先端戦略兵器をグアム基地群に配備した。
ここ数年、中国の海軍力が増強されるに従って、アメリカは常に”列島線”が中国によって突破されるのではないかと憂慮してきた。2003年、アメリカ国防大学国家戦略研究学院が出版したものの中に『列島線戦略下の中国海軍』とわざわざ一章を設け、中国に対する列島線の安全と海軍建設の影響について全面的に分析を行っていた。最近のアメリカの『ディフェンスニュース』は、更に直接的に、中国の海軍建設の強化、空母建造計画の意図は、”第一、第二列島線”突破にあると報じた。
このような心情の下、アメリカは、中国の”列島線”付近での活動に対して非常に関心を注いでおり、ここ数年、常に偵察活動を増やしてきた。2001年の南シナ海での飛行機衝突事件と今年になって2度の”妥協できない”事件とは、全てこの件と関係があるのだ。
アメリカ国防総省が今年の3月25日に発表した最新の『中国軍事力レポート』の中に、南シナ海紛争について大きく扱われていた。報告書によると、南シナ海は北東アジアや東南アジア国家の重要な安全を考慮する要素であるという。北東アジア地域は、南シナ海航路を経由して輸入する石油に極めて依存しているのだ。
報告書は、中国は南シナ海においてブルネイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナムとの領土紛争を有しており、中国大陸は、台湾島を超える遠距離軍事能力の獲得しようとしているという。例えば、中国は、従来の戦域のミサイルを配置し、台湾海峡以外の緊急的状況に用いることができるように各地に配置している、中国空軍の早期警戒機や制空システム、空中給油計画は、南シナ海での行動能力を更に拡大させるものであるとある。報告書は、一部の西側メディアに対して中国が海南島に建設している大型海軍基地に対する関心を高めることとなった。報告書は、この水中施設を含めた基地は、攻撃型弾道ミサイルを搭載した先進的な潜水艦と海上作戦艦艇を収容し、中国海軍が重要な国際的会場ルートに直接進入するのに十分なもので、中国が南シナ海の外洋地域において隠密潜水を配備するという潜在的能力を有することとなると述べている。
南シナ海紛争に介入す
最近の2度の”妥協できない”事件が発生したのは、まさに南シナ海の紛争が悪化したときであった。特に”インペカブル”事件が発生したのは南シナ海海域である。これらの紛争に対して、アメリカは表面上は不介入であるが、ここ数十年、アメリカの南シナ海政策はすでに不介入から介入へと変化しており、東南アジア諸国に対して南シナ海での殖産活動に対して支持の色分けを行っている。
冷戦終結前は、アメリカの南シナ海に対しては一貫して不介入政策を採ってきた。アメリカン大学哲学博士であり海軍研究センターの高級アナリストのケニーの言うように、アメリカの伝統的傾向は、南シナ海紛争に巻き込まれることを避けることにある、「結局のところ、南シナ海はアメリカから1.2万キロも離れており、はるか遠すぎるのだ」という。
しかし1994年11月16日に『国連海洋法公約』が正式に発効すると、アメリカの南シナ海に対する基本政策が”不介入”から”介入するがし過ぎない”に変わったのだ。
1995年5月、アメリカ国務省は、更に全面的な南シナ海政策を立案した。この政策は、アメリカにとって南シナ海の平和と安定を保持することは長期的利益であり、更にアメリカにとって”航行の自由”は基本的な利益であるとし、”航行の自由”はアメリカを含めた全アジア太平洋地域の平和と繁栄にとって十分必要なことであり、このため南シナ海に関連する国家との外交努力を強化しなければならないとしている。
アメリカの南シナ海問題に対する介入政策は具体的には、軍事的存在感の確保と強化、南シナ海地域の安全事務に対する主導権を握るよう努力する、多角的な安全構造の構築、南シナ海問題において中国の発展を牽制する、南シナ海地域における対中偵察と監視とを強化するというものである。
アメリカが南シナ海に介入させている要素は、上述した対中戦略的防衛範囲のほかに、まだ2点ある。
一つ目は、いわゆる盟友に対して安全を承諾することだ。1990年代初め、アメリカはフィリピンからの軍の撤退をはじめ、東南アジア国家に、アメリカがこの地域から離れることによってアメリカの安全な保護のかさが去ってしまうのではないかと憂慮させた。アメリカ国内の一部の保守戦略的な人々は、アメリカは東南アジア国家の南シナ海での活動を後押しすべきであると力説している。
二つ目は、経済的利益である。アメリカと東南アジアの経済関係は常に密接だ。アメリカは、ひとたび南シナ海で領土権争いが勃発すれば、アメリカと東南アジアの経済貿易関係の脅威となると認識している。同時に、アメリカは南シナ海地域のいわゆる”航行の自由”の権利を常に強調することで、海上の商品や石油などの戦略物資の運行が阻害されないようにしている。
その他、アメリカは、もし中国が資源豊富な南シナ海地域で独占する優位な情勢となれば、アメリカの企業が南シナ海での資源開発参与が制限され、南シナ海の石油を購入する際に理想的な価格で交易できなくなるのではないかと憂慮もしている。
アメリカが南シナ海に介入しているもうひとつの原因は、安全問題によって中国とアセアンとの経済の一体化を牽制しようとしていると考えているアナリストもいる。来年には中国アセアンの自由貿易区がスタートし、2015年にはアセアン”10+3”の自由貿易区がスタートするのだが、その両方にアメリカは加わっておらず、これがアメリカの心中を不快にさせているというのだ。
一方で、東南アジア諸国は中国と南シナ海において紛争が存在しているが、これがアメリカの中国を牽制するカードとなることを望んではいない。
カーネギー国際平和基金高級研究員・史文は、アメリカがアジアで軍事的存在を保持することが、勃興する中国のアジアにおける事務的地位とのバランスをとることとなると確信している東南アジアの国家があるという。しかし、彼らもアメリカと中国がアジアで対立し、彼らに双方のどちらかを選択せざる得ないような状況となることは望んでいないという。「彼らはアメリカが安全保障において最大限戦略的優勢を獲得するよう懸命に努め、同時にアメリカと中国の双方から最大の経済的利益を獲得したいと思っている」という。
心情は調整しづらい
中国の海外貿易とエネルギー需要が増大するに伴う海洋権益への現実的要求、中国の海上におけるパワーの発展は、非難されるほどのものではない。しかしアメリカのタカ派勢力は、アメリカがアジア太平洋において絶対的優勢を維持し続けて初めて、アメリカの安全は確保できるのだと考えている。アメリカの影響力がいくらか下がることは、彼らにとっては決して容認できないことなのだ。”第一列島線”における中米の”妥協できない”事態は、このような心理状態が多少関係している。
米軍の太平洋本部は昨年11月に、新たな米軍太平洋戦略を打ち出し、”パートナーとの協力、対話”を強化するといった類の新たな言葉が盛り込まれたが、その趣旨は、米軍の太平洋地域における”卓越した地位”を確保することにある。太平洋総司令部司令キーティングが昨年、日本を訪れた際に、アメリカはアジアから”撤退”することはなく、アジアの盟友は安心すべきであると述べた。
この文書は、米軍はアジア太平洋地域のいわゆる”行動の自由”の権利、特に”列島線”におけるマラッカや南シナ海周辺地域で、”世界供給の流れ、および通商ルートを威嚇したり破壊したりするような行為は容認できない”と強調している。文書は、中国と”成熟した両軍関係”を発展したいと述べているが、”中国の米軍に対する軍事力と必要時の武器使用の意志を過小評価していはいけない”と警告している。
この問題について、アメリカメディアは更に現実的に見ている。最近出版された週刊誌『タイム』は、アメリカのアジア太平洋における影響力の低下は、この地域に常に地政学的な変化をもたらしている核心的な部分であると指摘している。第二次大戦後、アメリカは一貫してアジア太平洋水域に絶対的な支配者であり続けたが、このような情況に変化が現われているという。アメリカが中東に陥り身動き取れないために、アジア太平洋地域におけるパワーが変化してきているという。
オーストラリア戦略政策研究所軍事評論員デービスは、「アジア太平洋は、これまで基本的に一極時代だった。しかし今やアメリカや中国は共存することを学ばねばならない」と指摘する。シンガポールの国際問題の専門家・莫漢は、インドや中国といったアジア太平洋の大国の国際的地位が上昇するにつれて、彼らが海上パワーを発展させることは、ある種、正当な希求であると語る。
”冷戦的思考を行い続ける”ことを避けるために、ここ数年、アメリカの軍当局は、常に口では「中国の勃興を歓迎する」と述べているが、その実、心はそうではない。”責任を負う”や”透明性”などの不明瞭な言葉を用いることによって、中国の軍事力の発展に対する不満を示しているのはこのためだ。
米軍の一部の専門家は、このような見方を更にはっきりと行っている。ケイトー研究所の専門家クラスロードは、アメリカの軍当局は最近いつも、中国の軍事力増強のことを話し中国が”最大の潜在的ライバルである”であるとしているのは、実は中国が”アメリカの脅威”を憂慮する更なる理由があると最近発表した著書の中で指摘している。彼は、アメリカ国防総省の『中国軍事力報告』の中で「アメリカは中国が責任を負うという方法によって国際的事務に参与することを歓迎する」と少し前に述べているが、この”責任を負う”とは何かを説明していないという。「この責任を負う中に、中国がアメリカのアジア太平洋における覇権を黙認するということが含まれているのではないかと疑っている」という。
クラスロードは、中国の軍事力の発展の実際は、アメリカとの戦争の可能性を減少させるものであると考える完璧な理由があると指摘する。「中国の最も重要な目的は、アメリカを攻撃することではなく、アメリカの攻撃を避けることにある」からだという。
アメリカの海洋政策学者バレンシアやカーネギー国際平和基金高級研究員・史文は、今後、中米が海上において”妥協できない”事態が益々頻発するようになるだろうと考えている。「しかし、両国間の巨大な共通の利益を考慮すれば、この問題が引き金となり中米関係が”転覆”するようなことになるとは想像しがたい。可能性は完全にないわけではないが、可能性は大きくない」という。
新華網「環中國島鏈異動 (雑誌『環球』)」
「中国の黄海、東シナ海、南シナ海」なんていう一文に彼らの姿勢がよく出ております。
ちなみに中国は、アメリカを「国連海洋法違反だ」と抗議しておりますが、当のアメリカは海洋法を批准していなかったりします。




