中国海軍の”真珠の首飾り”@インド洋覇権

2009年06月23日

インドで国民会議派が大勝し、シン首相が行った外交演説が対中強硬論であったことから、少し前から中国内では対印脅威論、対印警戒論が出てきております。シン首相の行った対中強硬演説とやらに目を通したわけではないので内容は全く知りませんが、中国メディアでは「対中強硬姿勢」がシン首相の枕詞となりつつあります。外交部定例会見でもここ数回、中印国境問題についての質問が飛んでおります。

予想通りなのですが、少々スピードが速すぎるような気がしないでもないです。

更にそんな中、6月10日にチベットとの境でインド軍の輸送機が墜落するという事故が発生し、更にヒートアップしていたりします。

そして更に、ロシアで我等が胡錦濤主席がシン首相と握手している中、インドが中国との国境地帯に6万人を増派しスホイ30を4機配備したと中国国内で報じられていたりします。中印間と共に中南海と何処かが・・なんて。

そんな最近のインドの情勢に関する記事もあるのですが、その前にインド洋、シーレーンを巡る話をば。

以前「南シナ海における米軍との衝突」で紹介した記事と同じく、新華社が隔週で発行している雑誌『環球』の同じく6月2日号より。続きのようなものです。

海外で報じられている「中国脅威論」を並べているだけで、表題に「妄言」などとありますが、反論していたり、これといった論評はありません。逆に築かれつつある巨大な海洋国家中国を誇っているよう。

境外メディア”中国の真珠首飾り戦略”を派手に報道す

王晋燕

ここ最近の一時期、中国の東シナ海、南シナ海上空に暗雲がしばしば現われた。一部の西側メディアも、絶え間なく”中国海軍脅威論”と騒ぎ、中国の”外洋海軍”に関する論評が次々と現われた。

いわゆる”真珠の首飾り戦略”騒動とは

”中国の三亜にある新しい潜水艦基地は、他の5カ国との間にある南シナ海海域における争奪論争において北京に重要な優勢を獲得させることとなるだろう。更なる遠隔地において、中国とインドは、最終的にどちらがインド洋に影響を及ぼすこととなるかを争っている最中である。ミャンマーからパキスタンまで、中国海軍はすでに真珠の首飾りを作り上げた・・・”

5月13日に発売された週刊誌『タイム』の「世界が中国海軍の強大さを警戒し注目している」という記事の中で、中国の急速な軍事力の発展は、アジア太平洋地域、更に大きな範囲における軍事バランスをすでに破壊しており、アメリカのこの地域における影響力は弱まったと指摘している。文章は、今のアメリカのアジア太平洋地位の軍事力は昔と比べるほどではなくなったとし、「第二次大戦後、アメリカはグアムから日本までの広大な水域に一連の海軍基地を建設し、常に高度な軍事的存在感を保持していた。1996年、中米関係が緊張し台湾海峡に危機が発生した際、ワシントンは2隻の空母部隊を台湾の外海に派遣し、中国大陸の動きを封じ込めた。しかし、このような行動は現在は想像できない」と悲しんでいる。

実際、”真珠の首飾り”という言葉は、西側メディアによる中国海軍報道の中に最近よく出てくる。2005年初め、ペンタゴンから流出した『アジアのエネルギーの未来』という内部文書の中に、初めて中国海軍が”真珠の首飾り”戦略を取っているという言い方がされ、報告の中で、いわゆる”真珠の首飾り戦略”の中の”真珠”がリスト化されていた。その筆頭が、パキスタンのグォーダー港で、その他の”真珠”は、バングラディシュ、ミャンマー、カンボジア、タイなどの国が含まれていた。アメリカの一部の戦略学者は、中国が外洋海軍を発展させるためには補給基地がなければ不可能であるので、彼らはいわゆる中国の”真珠の首飾り”戦略を編み出したと見ており、中国は資金的援助を通じて様々な軍艦の外洋停泊基地を手に入れていると述べている。

中国の南アジアや東南アジアでのいくつかの商業活動も、一部の西側メディアは、中国の”真珠の首飾り”戦略の為の一部であると誇張し報じている。最近、スリランカ政府が反政府武装組織タミル・イーラム解放の虎を粉砕したと発表した際にも、イギリス『タイムズ』は、この事件と中国とを結びつけた。『タイムズ』の連載記事は、スリランカ政府軍が勝利したのは、中国が軍事的援助を行ったからであり、見返りとして中国は、スリランカ南部のハンバントタに海軍の補給港を建設中であると記している。

文章は、数人の西側のアナリストの推測を引用し、ハンバントタ港は短期間で中国海軍の基地になることはないが、中国の深謀遠慮であることは明らかで、この港の経営は長期的計算をしていることは間違いないと記している。「台湾海峡で戦争が勃発したり、南シナ海で衝突が発生したら、中国はどのように海上封鎖を突破するのだろうか?中国の戦略家は、最悪の状況への備えはすでに終えていることは疑いようがない」。最後にこの筆者は、「中国は、スリランカ南部のハンバントタ、パキスタンのグォーダー港、バングラディシュのチッタゴン、ミャンマー等の地域での港の建設、増築にパワーをかけ、真珠の首飾りを形成しようとしているのだ」と記している。

中印がインド洋の制海権争奪戦を始めるという妄言

インドは、常に大国勢力が最も親密な地方のひとつと思われており、非常に多くの西側の戦略家たちが、中国海軍が建設する海外基地の最初となるだろうと思われている。今年3月、アメリカ国際安全の専門家ロバート・カプランは、雑誌『Foreign Affairs 』に発表した文章の中で、「インド洋は、太平洋や大西洋に代わり21世紀の世界の中心となり、中印は21世紀にインド洋の制海権争奪戦を繰り広げるだろう」と記している。文章は、中国は、インド洋の制御権獲得のために全力で海軍力を増強中であると警告している。カプランは、中国はマラッカ海峡への過度の依存、”マラッカの苦境”を打破するために、インドとインド洋の制海権争奪を行うと考えている中国は、インド洋上のアンダマン諸島やニコバル諸島の244の島嶼を利用し、西側がマラッカ海峡に侵入することを阻止しようとしているという。

4月、カプランはアメリカの『アトランティックマンスリー』の取材を受けた際に、「中国は、大規模な海軍の武器購入と建設とを進行しており、これはアメリカにとっては長期的な脅威となる。中国の潜水艦政策は、相手が諦めるまで購入と建造を続けることだ。中国は、西太平洋地域の主導権を望み、インド洋駐留をも望んでいる。中国はアメリカの将来の最も主要な競争相手となるだろう」と更に指摘している。更にカプランは、中国の両岸関係改善の目的のひとつは、”台湾海峡に配置している海軍をインド洋へ移すことであろう”とまで述べている。

カプランの視点に、いくつかのインドメディアが反応を示した。『インドタイムズ』の報道によると、最近、アメリカ太平洋司令官キーリングがデリーを訪問した際、”中国の空母建造や潜水艦隊の拡張”が、米印双方の討論の主要な議題であったという。『インドタイムズ』は、「インドとアメリカ官員、中国のインド洋における影響力拡大について討論す」と題した記事の中で、”中国の絶えることない軍事力増強とそのインド洋、および太平洋での戦略的活動は、インドとアメリカを相当に警戒させている”と述べている。

数人のインドの戦略専門家は次々と文章を発表し、エネルギーおよび貿易の重要性を考慮すると、インド洋は世界や海洋国家にとって新たな戦略的意義を具有しており、将来、インド洋で衝突が発生する可能性が比較的高く、インド洋の”覇権”的地位の維持、中国の外洋海軍力の増強とのバランス、インド洋の海上輸送線の安全を保障することを三大目標とし、インド海軍が保有している空母”ヴィクラント”号1隻だけでは”明らかに足りない”と指摘している。

日印が中国の空母建設の動きを緊密に注視している

インドの著名な外交政策評論員で、長年中国事務を注視している専門家ラージャ・モンハンは、4月23日付『インド・エクスプレス』のコラムで、中国は6席の空母建造を計画しており、インドは中国が新たな海洋強国として勃興してくることを認識しなければならないと指摘した。ラージャ・モンハンは記事の中で、「メディアは中国が2隻の空母を建造中で、そのうち1隻が2015年から服役すると常に推測している。ただ、最近の兆候では、中国の指導者は、2隻だけでなく、4〜6隻の空母の建造をすでに決定したことを明らかに示している。単に政治大国としてのシンボルとして空母を保有するんだよという説明は、1隻だけ空母を持っている国家に対して言う場合は、多くの人が頷くところだが、勃興中の大国が6隻もの空母建造を計画している際には、我々は、新たな海洋強国の到来を認識しなければならないと多くの人がわかっている」と記した。

ほぼ同時に、常に”中国空母”の話題に夢中になっている日本のアナリストも文章発表し、ここ数年中国は、空母の購入および研究開発に積極的な態度を取っており、空母を保有するのは時間の問題だと指摘している。日本のシンクタンクである海洋政策研究財団研究員・小谷哲夫は5月8日、『亜州時報』に寄せた記事で、中国が積極的に空母を保有しようとしている理由には3つあり、ひとつは中国は”強権”であると証明するためで、空母を保有することで一種の威信を示そうとしていると指摘している。そして、中国は、空母を保有することで、東南アジア諸国と領土紛争がある南シナ海での戦力バランスを形成しようとしているという。その他、空母によって中国は、南シナ海からマラッカ海峡を経てインド洋までの海上ルートの安定を守ることが可能となり、特に台湾海峡で対峙が発生し、海上封鎖されるという状況を防ぐことができるからであるという。小谷哲夫は、国際社会は、中国がいずれ空母を保有することに対して過度に反応する必要はなく、なぜなら中国が築き上げようとしている空母艦隊はアメリカを相手にするものではないからであると考えている。

日本では、中国の空母の話題は、様々な日本の軍事関連出版物や国防関連の研究クラブ内で熱心に論じられているものとなっており、日本のシンクタンク機関は、中国の空母運用戦略を把握しようと熱心になっている。長年、東アジアの制海権を独占してきた国家として、日本は隣国の外洋海軍の発展に対して常に慎重な態度をとっている。現在、日本の海上自衛隊は”准空母”――”ひゅうが”を実戦配備し、”ヘリコプター搭載駆逐艦(DDH)”と称しているが、全通式甲板や艦橋建築は軽空母と同じだ。

現在、中国以外の安保理常任理事国は全て空母を保有しており、アメリカは1国だけで11隻も保有している。それでも、中国が、空母開発の権利があると言っただけで、いくつかの海外メディアの評論がざわめき、中国の海軍力が強大になるのを見たくない一方で、自身の拡張を口実としているのだ。

新華網「境外媒體密集炒作“中國珍珠鏈戰略”(雑誌『環球』)

従来からの「中国脅威論」に加えて、実際に南シナ海でアメリカと衝突し、インドが国境部隊を増強し、北東アジアでは北朝鮮が暴発。そして世界不況を克服するための「ホワイトナイト」と煽られ「熱い視線」を送られる。また、国内においては、官への不信があちこちで暴発し、ネット世論とやらの力がいよいよ大きくなったのか、勝利する事例が出始め、また官を実際に襲撃することへの敷居がドンドンと低くなってきておるようです。さてさて。

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posted by タソガレ at 00:09 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東シナ海・尖閣諸島 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
中国を警戒と言いながら横須賀に中国のタンカーが来て、第七艦隊に何度も燃料を補給しています。
民間と軍隊とは違うのかもしれませんが、本気で警戒しているのか疑問があります。
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/umi/yokosuka/090529yokosuka.html

Posted by M at 2009年06月28日 17:18
> Mさん。
戦時中ではないですからね。
日本で中国船籍のタンカーが運んできた燃料を米軍に給油する。
現在のシーレーンを象徴しているかのような風景ですね。
Posted by タソガレ at 2009年06月29日 23:21
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