人治が招いた災禍、衆愚の混乱へ@ウイグル大弾圧

2009年07月10日

8日付香港『苹果日報』より。

(前略)

ネット上で漢ウイグル双方が非難合戦

ここ数年、漢とウイグルの衝突が発生していた。各地の新疆の行商人と現地市民、城管との散発的な衝突のほか、比較的深刻であった西安の長安大学での300人のウイグルと漢の学生の衝突では20人以上の学生が負傷し、当局は100人以上の防暴警察を出動させて現場を抑えなければならなかった。山東理工大学では500人ほどのウイグルと漢の学生が、ナイフ、ベンチ、棍棒で殴りあい、9人の学生が負傷した。

衝突が起きるたびにネット上では、漢とウイグルとの非難合戦がより激しくなる。漢人は、ウイグル人が凶悪で、暴力的で、むちゃくちゃで、校内で、社会で常に揉め事を起こし、中央による過度の少数民族優遇に対して不満を感じ、特に中共中央の1984年の五号文書の「両少一寛」、すなわち「少数民族の犯罪分子に対しては少し逮捕し少し殺すを堅持し、処理において一般的に寛容であれ」というもので、これがウイグルの犯罪を助長しているのだと常に指摘している。

ウイグル人は、新疆のコソドロといった侮辱的な呼称を付けられることに不満で、都市で盗みを働いている新疆の浮浪児の多くは誘拐された者たちで、言葉や民族の問題のために、ほとんどの者が家に帰る術がない者たちだと強調する。彼らは、伝統的文化、生活習慣が尊重されないことに不満を感じており、最も憤怒しているのは「新疆ブタ」と罵られることだ。

そこで当局は、毎回事件の中で民族衝突の要素を回避しよう、漢とウイグルが政治や文化的背景による衝突を回避しようとし、一般的な誤解、治安案件として淡白化させようとし、ここ数年は、ウイグルの出稼ぎ労働者や学生を沿海の都市で働かせたり、学ばせたりすることで、漢とウイグルの融合を図ろうとしてきたが、政治、文化の衝突、貧富の格差によって、逆に2つの民族の工人や学生の衝突の機会が大幅に増えることとなった。

血生臭い場面の放送が怒りに火をつける

韶関の旭日おもちゃ工場の漢とウイグル工人の衝突は、民族の積み重なってきた恨みが爆発したもので、民族衝突の導火線に火をつけた。当局の処理は、昔からの習慣を踏襲し、自ら災いを招いた。ウルムチでのウイグル人の大騒動の後、当局は海外の分裂勢力を非難し、絶えず血生臭い場面を放映し、「同胞が畜生に家畜のように殺されている!(ネットユーザー)」と漢人の怒りに火をつけただけでなく、政府が市民の安全を守れなかったとの批判を招き、昨日、漢人が街頭に出て報復したために、民族衝突の火種が広範囲に埋め込まれることにもなった。

新世紀新聞網「李平:民族冲突升級的危険訊号(苹果日報)

『RFA』の論評記事をば。

(前略)

湖北省は、今年多くの事件が発生している。5月10日には東県のマッサージ師・ケ玉嬌が、ナイフで彼女を強姦しようとした現地官員を刺し殺し、当局は六四の敏感な時期の敏感な神経を触発することをあえて行わず、ケ玉嬌に”意図的殺人”として有罪と言い渡しにも関わらず、”過剰防衛”として釈放し家に帰した。法治国家でこのような判決があるだろうか?”意図的”殺人で過剰”防衛”とは、どういうことだろうか?”意図的殺人”として官員の歓心を買い、”過剰防衛”として寛大に処理し、民衆の怒りを引き起こすことを避けたのだ。このような矛盾に満ちた”皆が大喜びする”判決を皆が愚かにも受け入れてしまったのだ。

この案件が解決した直後、6月17日に石首で再び殺人事件が発生し、二十歳ぐらいのコック塗遠高の遺体が、ホテルの前に横たわっているのが発見され、飛び降り自殺と言われたが、現場に血痕がなく、逆に7つの傷口から流れ出ていた血はすでに固まっていて、頭部には釘が刺さっていた。このホテルは、数年前にも若い女性が飛び降り”自殺”をし、疑わしい点が多数あったが、高圧的に、死者の父親は金銭によって和解させられている。このホテルは地元幹部が株を保有しており、時折麻薬売買の噂もあり、このため今回再び起こった殺人事件では、遺族は当局の遺体火葬に従わず、すぐに数万の民衆が遺体を守り、当局は多数の武装警察を出動させて遺体を奪うという、奇怪な戦いが発生した。武装警察は、なぜ遺体を奪う必要があるのだろうか?現地で悪事を働いている幹部のために遺体を火葬し痕跡を消そうとしているのではないか?官と業者とが結託し武力を支持することが中国での現状であると言える。当然、中共も学び利口になっており、多くの民衆が集まった場合は、武装警察を引かせるが、別の機会を探って、武装警察は遂に遺体を奪い、しかも政府側が派遣し化学検査を行い、政府側に必要であった”自殺”という結論を出し、8日間に渡った出来事は幕を閉じた。しかし、当局は8万人民元を賠償し遺族の慰安とした。このようなやり方は、ケ玉嬌の案件のように矛盾したもので、自殺であるのなら、政府はどうして賠償する必要があったのだろうか?ここに多くの暴露されていない事実があることがわかる。

似たような事件は以前にも発生していたが、最近特に集中している。・・・(後略)

新世紀新聞網「林保華:从草菅人命到搶尸熱潮(RFA)

今回のウイグル大弾圧を引き起こすこととなった直接の出来事は、ウルムチのウイグル人たちが、6月26日に遠く広東省のおもちゃ工場でデマが引き起こした漢人集団によるウイグル人撲殺事件の真相究明と犯罪者の厳正な処罰を求め街頭に繰り出したことです。

この事件で漢人集団に襲われるウイグル人の映像がネット上に流れ、ウイグル人たちの怒りに火をつけたということも行動を起こさせた直接的な理由のひとつでしょうが、この事件の直前に発生したケ玉嬌事件も彼らに抗議行動を起こさせることとなった多くの理由のひとつだと思います。

ケ玉嬌事件の概要は、上記の記事にあるとおりですが、当局が”過剰防衛”とし彼女を釈放したのは、ネット上で1億とも2億とも言われている彼女を支持する声に当局が押し切られたからです。彼女を支持する動きはネット上に止まらず、彼女の写真をプリントしたTシャツを羽織る者までもが出現し、弁護士や知識人といわれている者にまで支持が広がり、「民間社会が共産党の権力者を打ち負かすための集団演習だ」なんて鼻息を荒くし、一部のメディアまでもが彼女を支持する始末。

結局、ヒロインとなった彼女は釈放されたので支持者らの勝利で終わったわけです。このような熱狂覚めやらぬ中で、例の広東省のおもちゃ工場での事件が発生したのです。ウイグル人たちは、圧倒的多数の漢人らの声に当局が犯罪者らを処罰することなく釈放し、逆に捕らえられているウイグル人だけが処罰されるのではないか・・・・と今まで以上に危惧し行動させたのではないでしょうか。

昨日紹介した漢人による論評記事では、民主制度こそが民族問題を解決する手段なのだ、なんて民主制度を万能視しておりましたが、要は法治、法の下の平等をどう担保するかということでしょう。

中共による独裁が問題なのではなく人治が問題なのであって、独裁政権の権力が弱まり衆愚に陥った人治社会なんぞ、マイノリティにとっては考えたくもない地獄のような社会でしょう。

民主制度なんて多数決なのですから、圧倒的多数の漢族が常に是となるだけです。だからこそマイノリティであるラビアさんは「法治を!」と叫び、漢人である論評員は能天気に「民主を!」と叫んだのかも知れません。

明日は金曜日です。モスクは武警が包囲しているようですが礼拝は無事に行われるのでしょうか。

Guardian「Thousands of troops descend on Urumqi

そういえば初めて発行された地方債、新疆債はどうなっているのでしょうかね。



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posted by タソガレ at 00:04 | Comment(4) | TrackBack(1) | ウイグル・新疆・中央アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
こんばんは。
>民主制度なんて多数決なのですから、圧倒的多数の漢族が常に是となるだけです。だからこそマイノリティであるラビアさんは「法治を!」と叫び、漢人である論評員は能天気に「民主を!」と叫んだのかも知れません。

まさにそこです。いわゆる「民主化」を要求する海外亡命シナ人たちの理論的陥没がそこにあるのです。自由と民主で国民が幸福にならないことは、ソ連崩壊以後の米国と小泉政権下のわが国の「新自由主義」の体験がよく物語っています。

善意で見て彼ら海外民主派シナ人はナイーヴすぎ、うがってみれば欧米の手駒にしかすぎません。

中共政権が崩壊するとして、あるいは党名を改名して「民主主義China」が出来上がったときこそ、さらに劣悪な政治社会環境がシナ周辺に発生するにまちがいありません。問題はだから中共打倒ではなくシナ・ナショナリズム解体できるかどうかにあるのです。
Posted by 丸山光三 at 2009年07月10日 06:07
天安門事件で趙紫陽が失脚したのは朝鮮外遊中を狙われたと記憶してますが、こちらもおなじパターンなのでしょうか?


http://www.peacehall.com/news/gb/pubvp/2009/07/200907110711.shtml
Posted by 大陸浪人 at 2009年07月11日 11:50
> 丸山光三さん。
> 「民主化」を要求する海外亡命シナ人たちの理論的陥没
チベット騒乱の際にこの違和感を強く感じました。やっぱ漢人なんだと。
チベットの時と比べて今回は幾分”中華”色を出さないように苦心している雰囲気を感じなくもないですが、まー、無理ッすね。

> シナ・ナショナリズム解体できるかどうか
多様化ということですかね?
貧しい想像力では、ちょっと解体へのプロセスが思いつきません。
極限まで煽りたおして膨らませて、相対的に小さくなったパイ(利益権益)の奪い合いをさせてバブルを弾き、群雄割拠へ、なんて。

ただシナ・ナショナリズムは、昨年辺りから徐々に内向きに変わりつつあるのかなぁ、なんて思っていたりもします。
Posted by タソガレ at 2009年07月12日 23:14
> 大陸浪人さん。
数年前には胡錦濤が外遊するたびに東シナ海が騒がしくなっていましたね。ここ2年ほどそのような動きが見られなくなっていましたが。

趙紫陽は、本国で動乱が発生したにも関わらず全日程をこなして帰国したために対応が遅れ主導権を留守組に握られてまい、権力の座から引き摺り下ろされたと記憶しております。
胡錦濤は、この趙紫陽の失敗から学び、日程をキャンセルし急遽帰国し、到着後即、政治局会議を開き主導権を確保した・・・ということであるなら、何を以って胡錦濤にこの行動をさせたのかが気になりますね。
今回、李鵬役はいるのでしょうか、いるのなら誰でしょうか。
Posted by タソガレ at 2009年07月12日 23:18
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<ウルムチ騒乱>民意が国を滅ぼす時=血の報復を叫ぶ市民

Excerpt: 本ブログの7日付エントリー「<ウルムチ騒乱>「卵」と「卵」のいがみ合い=民族差別に出口はあるのか?」では、漢民族とウイグル人間の憎悪...
Weblog: 21世紀中国ニュース
Tracked: 2009-07-12 10:15


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