靖国を巡る中共の内外への声の温度差

2006年05月02日

前々回「盧武鉉のご乱心 そのとき中国は?」の中で、中共が国内の反日機運に火をつけないように必要以上に配慮を行っているのではないかとしていくつかその動きを挙げてみました。

  • 靖国神社参拝などで激しく意見交換を行った原田義昭衆院外務委員長と武大偉外務次官らとの会見を新華社は、内容に触れず更に武大偉の名前すら出さずに会見したという事実のみの報道を行っている。
  • 25日に小泉さんがぶら下がり会見で「後悔する時が来る」などと激しく中国を非難したが、新華社はじめ中国メディアは一切スルー。
  • 25日の山崎拓と王家瑞との会見で王家瑞が「次期首相の靖国神社参拝は許されない」と直接文句を言ったが、新華社の記事には靖国のやの字も出てこない。
  • 26日の山崎拓と呉邦国の会談で呉邦国が「指導者と国民を区別している」など従来の二分論に直接言及し靖国神社参拝を非難するも新華社の記事では「靖国神社参拝問題での原則的立場を表現した」とソフトな表現を使用。

そして5月1日に武部勤幹事長が唐家セン国務委員と会談を行ったのですが、この席でも二分論を展開して靖国神社参拝批判を繰り返し激しく衝突たと時事通信が報じています。

【北京1日時事】中国訪問中の自民党の武部勤幹事長は1日夜、北京で唐家セン国務委員と会談した。唐氏は小泉純一郎首相による靖国神社参拝問題について「民衆と指導者の参拝を区別している」と述べ、首相の参拝は受け入れられないとの立場を表明した。これに対し、武部氏は「憲法の下にすべての国民は平等であり、小泉首相も国民の1人で、区別できない」と反発、激しく対立した。
 このほか武部氏は北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの母早紀江さんがブッシュ米大統領と会談したことに触れ、北朝鮮に影響力を持つ中国の協力を要請。唐氏は「努力する」と述べた。
(時事通信) - 5月2日1時1分更新
Yahoo!ニュース「首相の靖国参拝で激しく対立=自民幹事長に「民衆と区別」−中国国務委員

ところがこれを報じる新華社の記事には、靖国神社のやの字もありません(当該記事)。拉致のらの字もありません。

拉致問題について少し触れると、アメリカで横田さんがブッシュと会見した事実なども(見落としていなければ)一切報じられていません。しかし、アメリカのレフコウィッツ北朝鮮人権特使が北朝鮮の人権意識の低さと韓国の援助で南北合同で進めている事業現場で労働搾取が行われているなどと非難する文章をWSJ紙に寄稿したことに対して韓国政府が「内政干渉だ」と非難したことを新華社は報じています(註1)。韓国もアメリカに対して文句を言っているぞ、ってなところでしょうか。

話を戻します。ここ最近、中国メディアは靖国神社についてほとんど報じていません。上で触れた新華社の報道姿勢から意図的に触れないようにしているのは明らかです。つまり、今靖国神社問題にスポットが当り反日感情が燃え上がることをよしとしない判断がされているということです。中共自身が靖国神社参拝問題を制御できないと判断したということです。小泉さんの変わらぬ姿勢とポスト小泉の一番手である安倍さんなどの姿勢を鑑みて、3月31日の胡錦涛談話を契機に扱いを変えてきたと思われます。中共が譲歩したというわけでは決してありませんが「声高に国内で煽るのは得策ではない」と方針を転換したのではないかということです。

また胡錦涛が3月31日の談話で靖国神社に参拝している限り首脳会談を行わないと強硬姿勢を示したことによって、それ以外のレベルで交流を盛んに行っても党内から「媚日だ!」、「弱腰だ!」などと言いにくい環境を作ったということで、ある意味胡錦涛の勝利と言えるかも知れません。実際、あの談話以降、日本の政治家が中国を訪れるという形ではありますが、多くの会談が行われています。

下衆な分析はともかく、このように中国での靖国神社参拝を巡る報道の姿勢や扱いの変化を知ってか知らずか、日本のメディアはポスト小泉の最大の焦点が靖国神社参拝であるかのように扱い、首相の靖国参拝に否定的であるであるとの一点で福田さんをやたらと持ち上げています。中国との関係悪化を一番煽っているのは、ほかならぬ日本のメディアということです。火を付けて煽って燃え上がらせ、消えそうになっているのに更に風を送っているわけです。

靖国神社以外でもうひとつ内外で報じ方が違うニュースがありました。4月29日に時事通信が次のような記事を報じていました。

【北京29日時事】中国国家海洋局の孫志輝局長は28日、中国科学院で海洋戦略報告を行い、日韓両国が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)問題に関する韓国の「一切の代償と犠牲を惜しまない強硬姿勢は中国が手本とするに値する」と評価した。その上で、東シナ海をめぐる日中摩擦に言及し、「やむを得ない場合には、海上で日本を封じ込める能力と決意がある」と強調した。29日の中国系香港紙・文匯報(電子版)が報じた。
Yahoo!ニュース「東シナ海で「日本封じる決意」=韓国の強硬姿勢を手本に−中国海洋局長

先日、航行禁止海域の告知を”チョンボ”した中国国家海洋局の局長が吼えたという記事です。下っ端役人の戯言と言えばそれまでですが、時事の記事にあるようにこれを香港で一番の親中紙である香港文匯報が報じている点が気になります(現在リンク切れ)。前回触れましたが、大陸メディアが江沢民を大々的に取り上げたのが27日〜28日。香港文匯報がこの戯言を報じたのが29日。何かよからぬところからのよからぬ意図を感じます。もう少し時が経てば何か動きがあるやも知れません。

と下衆の勘ぐりは置いておいて、この記事、香港文匯報以外では鳳凰网が取り上げて報じていました(現在リンク切れ)。この鳳凰网も香港のメディアです。で大陸ではというと新京報がこれを報じています(註2)。

昨日の午後、中国海洋局局長孫志輝が中国科学研究員において中国科学と人文フォーラムの席上で、今年12月に中国は2機目の海洋人工衛星を打ち上げると発表した。孫志輝は、中国は以前、島の数を6,500余りと公表したが、8年間に及ぶ国家海洋局長として考察した結果、実際の数は7,000をゆうに超えると発表した。
新浪网「海洋局局長:中国下半年発射第二顆海洋衛星

これで全文です。全く内容が違いますね。この件に関する大陸での報道は、人工衛星を打ち上げると記した上記のみです。竹島に関して韓国の行動を見習うべき、日本を海上封鎖していやるといった威勢のよい声は大陸では一切報じられていません。

この大陸と香港との報道の違いは、単に反日感情に火をつけないように配慮したというのとは少し違うと思います。日本に対する観測気球という意味合いもあるでしょうが、上でも触れましたが江沢民の記事が氾濫したのと同じ力が働いた結果ではないかなぁ、などと思う次第です。

日本で報じられているニュースの中国での報道のされ方などを比較して眺めてみると興味深い別の動きが見えてきてなかなか面白いです。

産経新聞が「中国、竹島問題で韓国と“連携” 対日強硬策たたえる発言」などと題して中韓が足並みをそろえているなどと囃し立てて記事を報じていますが、中国が韓国の反日姿勢に足並みをそろえることなど当たり前です。それより、産経の記事の中にある竹島に関して韓国を擁護するとした新京報の記事は、ほとんど転載掲載されておらず広がりを見せていませんし、あれだけこの件に関して詳報していた新華社がこれを報じていません。この現象の方が面白い動きかと思います。

最後に。気になるニュースを新華社が報じています。

中国の関連部門は、日本の国会議員に対して日本が適切に「化学兵器禁止条約」と中日間の覚書で承諾した内容を履行し、迅速に作業を行い、速やかに徹底的に日本が中国に遺棄した化学兵器を破棄するように数日前に要求したと発表した。
日本日中新世紀会会長、公明党衆議院遠藤乙彦をリーダーとする5名の国会議員が4月29日から5月2日まで吉林省と広東省の両省で日本の遺棄化学兵器の埋蔵ポイントの調査を完了した。日本の内閣府遺棄化学兵器処理担当室室長・高松明が同行し考察した。
中国外交部国防主管部門の責任者は、日本側に化学兵器が遺棄された現地住民の生命と財産、生態環境が深刻な被害を受けている現状を詳しく説明し、日本の国会議員に日本が適切に「化学兵器禁止条約」と中日遺棄化学兵器に関する覚書で承諾した内容を速やかに履行し、迅速に作業を行い、速やかに徹底的に日本が中国に遺棄した化学兵器を破棄するように促した。
新華社「中方要求日方加快徹底銷毀遺弃在華化学武器

新華社の記事にあるように条約と日中間の覚書に従って、日本が遺棄したと確実に証明できる物のみ廃棄して欲しいですね。決して余計なことをしないこと。

「米軍基地移転で3兆円だ!」と騒ぐのもいいですが、こちらは中国の軍拡に利用されているとの疑いが非常に濃く、また必要以上のことをしでかして役人の利権になっていると言われているところに1兆円もの金が動きそうであります。

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化学兵器禁止条約
日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書
遺棄化学兵器処理担当室
旧日本軍が遺した化学兵器の処理
中国での旧日本軍による遺棄化学兵器処理作業について
アジアの真実「中国の化学兵器処理問題の真実   〜村山政権の罪〜
軍事評論家=佐藤守のブログ日記「無知な選良?達の『負の遺産』を見直そう
Meine Sache マイネ・ザッヘ「お人好しな日本
産経WEB「正論:負の遺産処理をビジネスにする企業の受注合戦(2)」
註1
聯合ニュース「韓国政府当局者、レフコウィッツ氏の寄稿に不快感
新華社「韓国批評美国特使干渉内政 認為其指責完全片面
註2
新京報の記事は削除されていました(当該記事)。なぜだろうー。

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posted by タソガレ at 21:52 | Comment(2) | TrackBack(2) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
中韓に媚びるマスコミがいくら福田さんを持ち上げても、国民の人気は安倍さんに集まってるような気がします。
それに伴い、バラエティ等にも安倍さんが出演しているのは皮肉に感じます。

マスコミは福田さんを見限って、民主党に乗り換えるのでしょうか。

福田さんも麻生さんも安倍さんも一長一短のようですが…
Posted by liclic at 2006年05月05日 18:03
liclicsさん、こんばんは。
すべてを兼ね備えた人物が総理となるのが一番ですが、なかなかそのような人物いませんしね。
波乱もなく安倍さんではないでしょうかね。

民主党にもがんばってもらわないとと思っていますが、どうもマスコミも応援のポイントを探しあぐねている感がします。
Posted by aki at 2006年05月06日 22:28
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