中朝友好協力相互援助条約

2006年07月12日

10日から中国の回良玉副首相が訪朝しています。その中に六者会談の中国代表・武大偉が含まれており、ミサイル問題で北朝鮮を説得するための訪朝であると報道されていますし、実際その通りです。しかし、ミサイル連射の翌日6日の外交部記者会見では次のようなやり取りが行われていました。

質問
外交副部長・武大偉は、来週北朝鮮を訪問するのですか?もし北朝鮮を訪問するのなら、主な目的は何ですか?
姜瑜
北朝鮮政府の招待に応じる形で、中国共産党中央政治局委員、国務院副総理・回良玉が7月10日〜15日に中国友好代表団を率いて朝鮮を訪問し、「中朝友好協力相互援助条約」調印45周年記念行事に出席する。武大偉副部長は、中国友好代表団の一員として回良玉副首相に同伴し北朝鮮を訪問する。
外交部「7月6日外交部発言人姜瑜在例行記者会上答記者問

武大偉の訪朝目的は北朝鮮の説得であることはバレバレであるのに公式には「「中朝友好協力相互援助条約」調印45周年記念行事に出席する回良玉副首相の同伴である」と言い張っていました。

そして・・、

胡錦涛・国家主席など中国首脳は10日、「中朝友好協力互助条約」の締結45周年を記念して北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のキム・ジョンイル(金正日)総書記らに祝電を送った。10日付で中国新聞社が伝えた。
中国で祝電を送ったのは胡国家主席、呉邦国・全国人民代表大会常務委員長、温家宝・首相。北朝鮮ではキム総書記、キム・ヨンナム(金永南)・最高人民会議常任委員長、パク・ポンジュ(朴鳳柱)首相が中国に祝電を送った。
祝電は両国関係の発展を積極的に評価。また「両国の友好を強固なものにするよう今後も努力することは、政府や政権党の一貫した立場である」「新しい時代の要求に見合うよう様々な分野で交流や協力を深化させ、両国の友好関係を前進させていく」と明言しているという。(編集担当:菅原大輔)
サーチナ「胡錦涛主席:金正日総書記に祝電「友好促進させる」

ミサイル連射などなかったかのように予定通りにあらゆる行事を進行させている、外野がワーワー騒いでいるが中朝関係にひびが入ることはないとでも言いたいのでしょうか。外野はそのようには見ていないのですがね。

んで、そもそも「中朝友好協力相互援助条約」とはなんじゃ、ということで調べてみました。

第一条
両締約国は,アジア及び全世界の平和並びに各国人民の安全を守るため,引き続きあらゆる努力を払う。
第二条
両締約は,共同ですべての措置を執りいずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する。いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて,それによって戦争状態に陥つたときは他方の締約国は,直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える。
(中略)
第七条
この条約は,批准されなければならない。この条約は,批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書は,平壌で交換される。
この条約は,両締約国が改正又は終了について合意しない限り,引き続き効力を有する。
東京大学東洋文化研究所「中朝友好協力相互援助条約(中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国との間の友好,協力及び相互援助条約)

第一条で笑ってはいけません。

第二条で明らかなように、これ完全に「中朝軍事同盟条約」ですね。

第七条によって一方的にこの条約を破棄することは出来ないのですが、6日の外交部の定例記者会見で次のようなやり取りがありました。

質問
中朝互助条約締結45周年を祝う。中国側は、この条約を再び審議しますか?それとも延長するのですか?
姜瑜
あなたが言及した条約「中朝友好合作互助条約」は、1961年に締結した。この条約の目的は、中朝友好協力を促進するものだ。我々は条約の基本精神に引き続き従い、北朝鮮との友好協力関係を発展させ半島と当該地域の平和と安定を守る。我々は今のところ修正するつもりはない。
外交部「7月6日外交部発言人姜瑜在例行記者会上答記者問

まー、当然でしょうね。こんなところで「いやー、どうだろう」などとは言えない。しかし、「今のところ」と含みを持たせているの点は興味深い。

もうひとつ気になる動き。

【北京・西岡省二】朝鮮中央通信によると、中国と北朝鮮は10日、平壌で政府間の経済技術協力協定に調印した。調印式には中国側から回良玉副首相ら、北朝鮮側から郭範基(クァクポムギ)副首相らが出席した。両副首相は平壌で中朝友好協力相互援助条約の締結45周年記念行事に参加している。
毎日新聞 2006年7月12日 東京朝刊
毎日新聞「経済技術協力協定:中国と北朝鮮が調印

協定の中身はわかりませんが、国連の場で北朝鮮に対して資金と技術の流入を阻止しようという強制力を伴う決議案を巡って喧々諤々している中、なかなか挑発的な協定名ですね。

まー、挑発する意図はなく予定通りの行動を予定通りこなしているだけなのでしょうが。しかし、これすら中止にできない中国の立場とは・・、と考えてしまいます。

11日の外交部の定例記者会見でこの協定についての質問が飛んでいました。

質問
回良玉副首相代表団が朝鮮を訪問し中朝はひとつの経済協力協議に署名した。あなたは、この合意の具体的な内容を紹介することができますか?
(以下略)
姜瑜
回良玉副首相の朝鮮訪問の関連活動は、今まさに進行中だ。メディアもすでに関連報道を行った。
(以下略)
外交部「7月11日外交部発言人姜瑜在例行記者会上答記者問

質問に全く答えていませんね。お得意の「その件に関しては情報がない」とも言っていない。スルーしたいけど、完全にスルーはできない事情があるのではないか、などと穿ってしまいます。

ともかく、武大偉はじめ訪朝している連中は必死でしょう。G8への胡錦涛の出席を正式に発表もしましたし、どのように面子を保つ気なのか・・、楽しみです。

追記:1、2回では無理

質問
北朝鮮の代表団が中国を訪問している。この代表団の日程を紹介してください。北朝鮮側は、中国側が望んでいる六者会談の非公式会議に参加するとほのめかしていますか?
姜瑜
朝鮮最高人民会議常任委員会副委員長・亨燮先生は、ちょうど今日の午前中に北京に到着した。関連活動は、我々が適切な時期にニュースを発表する。
中国側は絶えず朝鮮半島の平和と安定、六者会談の中でこれを推進することに力を尽くす立場は確固不動のものである。どのような状況になろうと関係なく、中国側は絶えず朝鮮半島の平和と安定のために六者会談を推進し、半島に非核化の目標を実現することを堅持する。しかし、1、2回の訪問だけで、中国だけの努力で、すべての問題を解決することはできない。われわれは関係各国がこのために共に努力し、積極的行動をとって、現在の緊張を緩和し、六者会談の早期再開に向けて努力を続けるよう希望する。
外交部「7月11日外交部発言人姜瑜在例行記者会上答記者問

北朝鮮説得失敗の場合の逃げ道(失敗する可能性は90%以上でしょうが)を用意していますね。「中国以外の国が足を引っ張った」ということです。つまり最終的には「日本が悪い」となるのでしょう。既にこのような論調での記事が『人民日報』傘下の『環球時報』が10日付けで掲載していました。

北朝鮮がミサイルを発射し生まれた危機的状況は未だに収束していないが、益々この危機を煽り立てるような兆候がある。原因のひとつは、日本の態度が非常に強烈で目をひん剥きながら断固として”北朝鮮を厳重に処罰する”という強硬な姿勢を示していることだ。
(以下、ヒステリックに騒いでいる日本が国連をかき乱している云々と延々続く・・) 環球時報「日本逼安理会制裁朝鮮

この『環球時報』の記事は記事内容よりその発表の仕方が面白い動きをしていました。『環球時報』10日付の1面に掲載されていたものなのですが、ネット上に掲載されたのは12日。新華社など中国メディアが転載を始めたのも12日です(新華社「日本逼安理会制裁朝鮮 不惜破坏東亜穏定」)。外交部の発言にある通り、11日に開き直り路線で論点すり替え(中国以外の国が足を引っ張っている)へと方針が決まったのでしょう。つまり10日の段階、日本案採決延期決定までは、中国はかなり追い詰められていたということです。

この中共の「強硬な日本が悪い」ロジックに合わせるかのように日本メディアも同様の雰囲気での報道が多くなってきたのは・・、なぜなんでしょうな。

『環球時報』は、反日を先頭に立って煽ってきたような新聞なのですが、11日付の1面だけを見ると日本と北朝鮮が既に戦闘状態にあるかのようなセンセーショナルな文字が踊っています(『環球時報:7月11日付第1面』)。ミサイル発射の翌日の1面はこちら『環球時報:7月6日付け第1面

中共政府のこの問題に対する方針の変化が如実に現れていて面白いです。

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日経プレスリリースから 2006.8.10

Excerpt: 日本テクトロニクス、東京大学の最先端量子ドット研究に任意波形ゼネレーター2台を提供…http://ameblo.jp/mediabridge/entry-10015877072.html
Weblog: プレスリリースの書き方・PR・広報電撃作戦!狙いはテレビ番組と日経新聞のみ!
Tracked: 2006-08-16 15:32


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