日経の捨て身のスクープ「富田メモ」を巡り日本のメディアは大騒ぎ。メモの言う「私」が本当に昭和天皇であるのかという検証は横においておいて、とりあえず日経説を取り上げて大騒ぎ。今後、メモ内容についてしっかりとした検証が行われるようなことがあるのでしょうか。甚だ疑問です。
日本の世論が「分祀」を巡り大きく揺れ動いている様を中国は眺めて「やっぱ天皇の力は恐ろしや」と思ったどうかは知りませんが、もし「分祀」されては中国は困る・・、とは思っているでしょう。日本の国論を二分するような安価で最高に効果のあったカードを本格的に失うことになるのですから。
で、「分祀」された場合の次の嫌がらせへの布石が始まっております。26日の『中国青年報』が「参拝問題について態度をはっきりさせないのは各方面の圧力の結果だ」と題する記事を掲載しました。この記事を新華社をはじめ多くのメディアが転載しています。
記事は、外交学院の周永生なる人物に「富田メモ」を巡る騒動や総裁選について取材したことを元に組み立てられています。ポスト小泉の最有力候補である安倍晋三が靖国神社参拝するしないを明言しないのは「”諸外国”からの圧力と日本の世論の圧力によってである」という応答から記事は始まっています。そして、態度をはっきりさせないのは「安倍自身が右翼政治家の体面を守るため」、「日本国内からの参拝反対の声に配慮しているため」、「中韓からの圧力を緩和させるため」と3つの理由を挙げています。
福田さんの不出馬がよほど悔しかったのか、メモを残した人物を「福田朝彦」などと誤植していたりするようなレベルの低ーい、まるで反日キチガイ新聞の『環球時報』のような記事で、安倍さんが総理となった場合に「”安倍晋三が”日本の国際的イメージ回復のために日中関係改善に積極的に動くかも知れない」などと述べ、参拝するかしないかを注視しなければならないなどと締め括っています。まー、『中国青年報』らしくない記事ではあると思います。
この記事の中で次のような論が述べられています。
周永生教授は、もし靖国神社が見事に分祀することが出来るならばそれは日本が進歩したと言えるが、根本的な問題の解決にならないと指摘する。日本国内の一部の人は、14人のA級戦犯を分祀するだけで日本の天皇、首相、内閣大臣が何のわだかまりもなく参拝することが出来ると思っている。靖国神社参拝問題の本質は、参拝自体が問題なのではなく、問題なのは靖国神社が広く宣伝し提唱している”靖国史観”、”軍国主義”そして”皇国史観”である。この問題が解決されないのであれば、たとえ分祀されても日本の政治的苦境が解決されることはない。だから中国は、靖国神社が分祀することを提唱すべきではなく日本政府の指導者が如何なるA級戦犯をも参拝しないよう要求すべきである、と周永生は提案している。
中国青年報「在参拜問題上模糊的態度是各方圧力的結果」
最後の一文にある「如何なるA級戦犯」とは、恐らくいわゆる14人のA級戦犯ではなく軍属全員、英霊全てがA級戦犯であるという意味でしょう。つまり、「靖国には行くな」、もっと言うと「靖国を潰せ」ということです。「A級戦犯」という言葉を曲解しているのは基本です(笑)
本当に分祀されては困ってしまう中国。ということで、次の嫌がらせのプロパガンダを構築中ということです。今は、いち専門家の口を借りて言わせていますが、このプロパガンダを繰り返すことで靖国問題の本質は14人のA級戦犯ではなく靖国神社の存在そのものであるという刷り込みを行っていくわけです。昨年からたびたび遊就館を叩いていましたが、その流れです。
仮に分祀されたとして、その時の中共の応答が目に見えるようですね。
また、新華社が上記記事と同じ26日に『中央公論 2006年 08月号』に「靖国問題にけりをつけよう」というコーナーの中に掲載されている加藤紘一氏の「対米問題となる前に解決しなければならない」と題する論文を大きく紹介しています。おそらく加藤氏の文章をそのまま中文訳したか要点を引っ張りだして中文訳したのものだろうと思います。実際に中央公論に掲載されている加藤氏の文章を見ていないのでなんと言えませんが、もしかすると中共にとって都合のよい部分だけを切り貼りしたものかも知れません。まー、加藤氏の文章ならそのまま中文訳しても中共のお眼鏡にかなうとは思いますが(笑)
記事の内容は、加藤氏がたびたび繰り返していた「A級戦犯を祀っている靖国神社に参拝することは東京裁判やSF条約を否定することに繋がり、いずれアメリカからも怒りの声が上がる」などというもの。そして最後を次のような言葉で締め括っています。
中韓は日本を非難しても、日本は靖国史観を変えることはない。しかし、もしアメリカが靖国神社内の関連事項を書き直すように要求すれば恐らく日本はおざなりにはできず、おとなしく遊就館で紹介している内容について変更するだろう。私はこのようなばつの悪い場面を目の当たりにしたくない。私は一人の民族主義者だ。だからこそ、日本はすぐに戦争の歴史を総括し新しい歴史観を確立すべきであると言う。だが、間に合わないだろう。
新華社「日刊:日本應正面総結二戦責任 重樹歴史観」
「A級戦犯をたとえ分祀したとしても靖国史観を改めない限り参拝はまかりならん」とするための布石を着々と行っているということのようです。
「富田メモ」が出て来たことによって日本国内において分祀への圧力がこれまで以上に高まり、また日本自身の手で先の大戦の責任者を検証しようという動きも活発になってきています。ですが日本自身の手によって靖国神社問題を解決しようとしまいが中国からの嫌がらせがやむことはないということはこれらの記事からも明らかです。まずは、現状の中国の靖国神社参拝に対する嫌がらせの声が、か細くなったのちに日本自身の手によって靖国神社問題を解決すべきではないでしょうかね。現状では雑音が大きすぎて靖国神社問題に着手するには適切な時期ではないと思います。
皮肉なことに「富田メモ」の出現によって日経の思惑とは別に、これまで靖国神社参拝に否定的な輩やメディアの論理がいかにいい加減であったのかが露呈しました。天皇の権威を否定していた輩が天皇の権威を利用して論陣を張っているのですからちゃんちゃらおかしな話です。「天皇を政治利用していはいけない」といいながら政治利用しているのもこのような輩です。「靖国問題は既に国内問題ではなく外交問題となりアメリカまで懸念を抱いている」などと言っていた輩が「これは国内問題で陛下の声に素直に耳を傾けなければならない」などとシャーシャーと言っていたりします。彼らが張っていた論陣がいかにいい加減で糞も味噌も一緒にしていたかを自ら暴露しています。墓穴を掘るというやつです。
朝日新聞がカメレオンのように論を日替わりで右往左往させる様を、ぼやきくっくりさんが「朝日変節まとめ」でまとめられています。
と言いつつも中国の嫌がらせという面が強かった靖国神社問題を純粋に国内問題として捉えるひとつの切欠にはなったと思います。メモの検証を巡って議論を深めていけばいいと思います。そこに中国など入り込む隙間は微塵もありませんしね。そして、検証と議論を深めつつも首相は粛々と靖国神社に参拝を続けるべきで、これが最も重要なことだと思います。今回のメモと首相が靖国神社に尊崇の念を持って参拝する行為との間には何の関係ありません。
そういえば、日経の捨て身のスクープに対する麻生さんの応答は過不足なく完璧でしたね。安倍さんは若さゆえなのか、脇の甘さ、政治家としてのいい意味でのいやらしさや狡猾さが薄い点が気になってしまいます。次の首相は麻生さんでその下で安倍さんは経験を蓄積すればいいのに・・、などとついつい思ってしまいます。麻生さんの完璧な応答の映像をLet's Blow! 毒吐き@てっくさんの「富田メモ 麻生太郎の神発言」でみることができます。朝日新聞への皮肉も飛び出していますが、「天皇陛下や陛下の話を政治に巻き込みたいというような意図が感じられますのでお答えすることはありません」という発言、これ完璧でしょ。
- 中央公論 2006年 08月号 [雑誌]
- 出版社:中央公論新社
- 発売日:2006-07-10
- Amazonで詳しく見る
- posted with CB400ss -PHP- at 11.Oct'09
ところで。谷垣もなんで靖国を持ち出すかねぇ。政治的な踏み絵にしようなんて、中華様の思惑通りじゃん。(w
おー、カナダがダライ・ラマを名誉市民にですか。知りませんでした。日本メディアは見事なまでにスルーしていますね。
http://ottsun.canoe.ca/News/National/2006/07/27/1704363-sun.html
http://www.voanews.com/chinese/w2006-07-27-voa52.cfm
名誉市民の授与は先月末に既に決まっていたようですね。9月のダライ・ラマのカナダ訪問の際に授与する予定のようです。今回はその決定に対して中国政府がようやく抗議したことがニュースとなっているようです。実に緩慢な動きですね。何かに忙殺でもされていたのでしょうか(笑)
http://www.epochtimes.com.tw/bt/6/6/26/n1364036.htm
で、見落としがあるかもしれませんが、大陸では今のところ報じられていないようです。
しかし、面白い動きを発見。
『人民日報』傘下の『環球時報』が、チベット解放と統治の正当性とダライ・ラマの不法性を謳いあげている署名入りのプロパガンダ記事を掲載していました。この記事は、上・下の2本からなっていて7月17日と18日の両日にまたがり全面を使って掲載されていました。カナダでの動きを受けて掲載された記事でしょう。
そして10日後の中国政府の抗議と共に27日に新華社などが、この記事の転載を始めています。
『環球時報』(17日第11面)
http://paper.people.com.cn/hqsb/html/2006-07/17/node_94.htm
『環球時報』(18日第11面)
http://paper.people.com.cn/hqsb/html/2006-07/18/node_94.htm
新華社(27日)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-07/27/content_4885147.htm
香港では、ロイターの翻訳記事でダライ・ラマに名誉市民が送られる件は報じられています。(27日)
http://hk.news.yahoo.com/060727/3/1qjal.html
ロイターの記事によると、抗議を行った水曜日に英字紙である中国日報WEB版にチベット独立にかつてインド軍とCIAが絡んでいたなどとする非難記事が掲載されたとあります。この中国日報の英字記事、上記した『環球時報』の記事を英訳したものです。
http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-07/26/content_649545.htm
ひとつの記事(通稿)を方々で転載してプロパガンダを行っているさまがよくわかります。
谷垣さん。
マスコミや一部議員の中に「靖国参拝の是非を焦点とすべし」という声に乗ったのか乗せられたのかわかりませんが、安倍さんとのわかりやすい差異を求めた結果なのでしょうかね。政局音痴の加藤の影が見え隠れもします(笑)
加藤-古賀-「富田メモ」ラインを妄想したり・・、
2006年4月14日: 唐家セン国務委員、杉田日本経済新聞社長と会見
http://www.china-embassy.or.jp/jpn/xwdt/t246283.htm
本当に色々と胡散臭いですね(笑)
CIA云々はREUTERSしか流してませんね。
http://news.yahoo.com/s/nm/20060726/ts_nm/china_tibet_dc;
The CIA trained up to 400 Tibetan exiles at military bases in Colorado, Okinawa and Guam after the Dalai Lama fled into exile as part of a U.S.-funded guerrilla war against China, which occupied Tibet in 1950, the Chicago Tribune reported in 1997.
"Chicago Tribune reported in 1997"っぅ部分が気になっているので、掘ってみて何か出てきたらまたカキコミさせていただきます。
にしても。在カナダ中国大使館がダライラマ名誉市民なら貿易に支障がでちゃうよ、いいの?っぅ恫喝をしているのが、支那外交だなぁ。
カナダは法輪功信者の生体臓器摘出で中国を提訴し、中国の意に反しダライラマ ラマに名誉市民授与ですか?其れなのにオンタリオ州では中共の工作が功を奏し、南京大虐殺を教科書にのせるようです。
http://www.china.org.cn/japanese/249708.htm
一体カナダは中共の正体をどの程度理解しているのか疑わしい限りです。
南京大虐殺工作はカナダにおける中共のイメージ挽回のためにも不可欠だったのでしょう。日本はいつも中共にしてやられ捏造の犠牲にされてますね。
金はしぼりとれるし、濡れ衣を着せても無抵抗の日本はいい「かも」ですね。
打開する方法はあるのでしょうか?
この手の話は日本では本当に一切報じられませんよね。
まー、CIAは関与していたでしょうね。ダライ・ラマがインドへ亡命する際の映像が、なぜかカラーで残っていたりしますし。ダライ・ラマの兄が、亡命以前から武装訓練を受けてゲリラを組織しているなど見聞したことがあります。我々が知らないところでチベットの苦悩の歴史は深く研究され色々と明らかにされているのでしょうね。
http://tibet.cocolog-nifty.com/blog_tibet/2005/11/ciathe_shadow_c_3827.html
憂国さん、こんばんは。
中共を非難する動きと中共史観を取り入れるというふたつの動きは、ご指摘に通り宣伝、プロパガンダ戦の結果でしょうね。
カナダには、中国のSARSが飛び火するほど中国との往来が激しく中国人が多い地域です。その中で反中共プロパガンダと反中共から目を逸らすための中共史観プロパガンの2種類がそれぞれ別々に反映された結果なのでしょうね。
日本を貶めるような動きに対抗するには、こちらもプロパガンダ戦を行うしかないと思います。面倒でもひとつひとつ丁寧に反論していくしかないと思います。
で、ここで出てくるのが世界に展開している日本政府の組織である外務省に期待したいのですが・・。更に日本の学校教育もしっかりしないと、と愚考いたします。