ナンシー・ペロシを警戒せよ

2006年11月09日

アメリカ中間選挙の結果を受けて、中共がどのような反応を示しているのか眺めてみたのですが、今のところこの件に関する『人民日報』の論評記事は見当たりません。

そこで香港の『明報』の「中国評論」という論評記事を紹介してみます。この「中国評論」の執筆者である秦勝なる人物は、かなりの中共万歳野郎で、しかも糞青にかなり近かったりして、ノータンぶりを遺憾なく発揮する場合が少なくない軽薄野郎です(笑)

しかしそんな野郎でさえ、ナンシー・ペロシには警戒感を示しています。中共中央もラムズフェルドの辞任を喜びつつも、ペロシに関しては「ムム」と腕組みしているのではないでしょうかね。

アメリカ議会は中間選挙を行い、民主党が快勝し再び下院を手に入れた。長年「反中反共」活動を行っている民主党の長老議員であるナンシー・ペロシが議長を担当すると予想され、中米関係の発展にとってこれはひとつのマイナス要素で、特に中米経済と貿易、人権問題で中米間で再び波風が立つことは避けられないと多くの人が心配している。

しかし、中米国交樹立以来、全てのアメリカ大統領は「反中反共」ではなかったか?今、一人の「反中反共」の女性下院議長が選出されたからといって、中米関係にマイナスの影響を及ぼすというのは大げさではないか。

中共の亡き指導者毛沢東の影響を受け、中共の指導層は以前は確かにアメリカの右翼勢力と付き合うことが大好きで、その為特に民主党内の左翼的人物は嫌いであった。しかし、中共指導層は共和党か民主党かに関わらず、対中政策を決定するときは全てアメリカ自身の利益から出発し容易に付き合うことはできないことを熟知している。

中米国交樹立以来、共和党大統領、民主党大統領に関わらず、中国の利益に深刻な損害を与える政策を行ったことがあったが、結局は中国と良好な関係を維持してきた。昔話ではなく、ここ20年のブッシュ父、クリントン、ブッシュも例外ではなかった。

更に、中国の政治経済力がここ20年で迅速に増加したこともあり、どんどんと市場を失うことになりアメリカでは一時期「中国脅威論」が大流行した。ブッシュ大統領は、一期目の初期に中国は潜在的な敵であると見なしていたが、現在のアメリカは中国を「重要な利益共有者」と位置づけ、昨日の第三回中米戦略対話会議が北京で開催された際、会議に出席したアメリカ副国務長官・バーンズは、中米関係は極めて重要で、中米は世界平和と安全に対してあらゆる責任を負っていると明確に述べている。このような変化を説明しないわけにはいかず、アメリカはすでに中国が世界にそびえ立つ大国であることを承認しており、しかも中国と協力し共にいくつかの責任を引き受けることを望んでいる。

ペロシは、アメリカ下院議長を担当し、もしかすると始めのうちは人権や環境、人民元相場、中米貿易など各方面でブッシュ政権に対して圧力を加え中国に対して長期にわたり非友好的な感情を発散するかも知れないが、しかし、発散し終わった後は、彼女はアメリカの対中政策と中米関係の影響力に対して大した変化をもたらすことはないことがはっきりするだろう。

結局、ペロシは中国に対する不満からブッシュに対して反対を表明したことはない。対中政策は、基本的にアメリカの両党は一致している。今のところ中国は実力を後ろ盾としてアメリカと付き合っている。これは、北朝鮮が核兵器保有を宣言した後、アメリカは中国の北朝鮮に対する影響力が大きいことが影響している。このため、ペロシがどんな反中活動をしても大きな波乱を起こすことはできない。

秦勝

明報「中國評論:佩洛西掀不起大浪

最後の一文が引っかかりますね。北朝鮮問題によって中国の重要性をアピール。これ北朝鮮によるミサイル連射以降のブッシュの姿勢や日本メディアの姿勢とピタリと一致します。結局中国が影響力を発揮できず(せずに)核実験まで行う結果になってしまったことは見事にスルー。

中央委員会には国際部がある。国際部が「対日関係を改善しろ」という指令をソ連外務省に出す。外務省が実際の外交交渉で成果を上げれば、その成果を国際部と外務省で分配する。もし、外務省が失敗すれば、国際部は「なぜ中央委員会の指示を適確に遂行しないのか」と叱責し、外務省に責任を押しつけ、国際部自体は絶対に責任を取らない。ソ連制度では、共産党中央委員会に関しては徹底的な無責任体制が築かれていた。
自壊する帝国-序章 「改革」と「自壊」(p.15)

北朝鮮が下手を打てば金正日が悪い。北朝鮮が国際社会の声に耳を傾ければ中国のおかげ。

あっ、佐藤優氏の『自壊する帝国』、今この本を読んでいるのですが、めちゃくちゃ面白いです。未読の方は是非。

閑話休題。

ナンシー・ペロシを警戒しつつも「俺たちはすでに世界の中の責任ある大国だから大丈夫。だってアメリカもそう言ってるもん」とは、上海市政府機関紙『解放日報』も同じようなスタンスで論じています。

訪れるかもしれないアメリカとの政冷にあえて先に触れることにより、そのショックを小さくしようという算段でしょうか。

更に解放日報は、共和党大統領と民主党下院議長との今後の政治運営について次のように分析しています。

両党の闘争激化は避けられないのか

中米友好協会元副事務総長の沈xinは、民主党が下院で過半数を獲得したが、この優位を2008年の大統領選挙にどのように生かすか考慮すべきで、これに関連する動きとして共和党が支配している政府とどのように協力関係を維持するかが問題であると指摘している。1994年に共和党が、民主党のクリントン大統領就任から2年後の中間選挙で上下院で過半数を獲得した。そのときの下院議長、共和党のギングリッチは、ものすごい剣幕で民主党政権と共和党の議会とで政策面で激しい対立を発生させた。しかし、共和党は民主党との摩擦の中で支持を得ることができず、2年後に民主党のクリントン大統領は選挙で大いに優勢な中で再選を勝ち取り、共和党の下院議長であったギングリッチは辞任しなければならなかった。このため、民主党は下院での優位を利用して有権者の利益に即して改革を行い、その支持を高め、同時に共和党との激しい衝突を避けアメリカの政界を安定的に維持することが、民主党主導者に課せられた重大な試練である。

解放日報「“象”消“驢”長意味着什嘛

少し下衆の勘ぐりをするなら、多数派となった胡錦涛率いる団派に対する少数派となりつつある上海閥からの牽制(哀願)とも、逆に反撃に転じようと画策しているであろう上海閥に対する牽制とも読み取れます。団派がトップとなった上海市政府の機関紙なので後者でしょうかね。

この後、ナンシー・ペロシなど民主党内の対中強硬派が要職に就き米中関係悪化が懸念されるが、今までも米中関係の”揺れ”は経験してきており悲観する必要はなく米中友好という大局は変わらないという『明報』の論評と同様の分析がなされています。

日本では民主党勝利の象徴的な映像としてヒラリーや辞任したラムズフェルドに脚光が当っているようですが、中国ではペロシ警戒論が比較的大きく扱われています。まー、大統領、副大統領に次ぐ地位に対中強硬派の人物が就任するのですから中共としては警戒してしかるべきということなのでしょう。

その他のナンシー・ペロシ関連記事
広州日報「女議長与中美関係
関連外部記事
Meine Sache「中間選挙の敗者は?
Let's Blow! 毒吐き@てっく「アメリカ中間選挙と今後の読み方
真silkroad?「米中間選挙結果とウイグル。

ブログランキング ←宜しければランキングに1票をお願いします。

posted by タソガレ at 23:52 | Comment(6) | TrackBack(1) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのTrackBack URL 

この記事へのコメント
また暴動ですね。

Sanzhou, Guangdongって。広東省三洲村であってますよね?
http://hateshina.seesaa.net/article/27174994.html
Posted by 果科 at 2006年11月10日 17:28
> 果科さん。
はい。広東省順徳区三洲村です。

これ凄いですね。各級政府官吏や投資したドイツ、イギリス、タイ、香港の華僑ら300人あまりを失地農民が包囲して、彼らを人質に抗議行動ですか。これが8日午後。
その農民らを3千人の武装警官が包囲し大量の催涙弾を発射し警官が突入。賓客らを救出したのが9日の午前11時。
いや〜、凄い、凄い。
周囲2キロを封鎖し、10数頭のシェパードを放つ。
警官は地べたに伏せている老人らを踏みつけてしょっ引いていく。
いや〜、愉快、愉快(失礼)
http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2006/11/09/sanzhou/

今後、映像なり写真なりが出てきそうな気配。

この事件、当局に与えた衝撃、ショックは非常に大きいのではないでしょうかね。
そして、海外投資家に与えた影響も。
せっかく投資して工場なり、社屋なりを建設してもその土地は農民から詐欺まがいで奪い取ったといういわくつき。しかも周りには土地を奪われて怒りに満ちた農民たち。
ただでさえ、当局から突然移転命令が出たりと法治、契約の概念ゼロ。
こんな国に進出しようと考える企業はよほどのマゾヒスト(冒険家)ということでしょうか。
Posted by aki at 2006年11月10日 21:31
記事で触れている香港ケーブルの映像が出てこないかな、とYouTubeを探したのは秘密。

>> そして、海外投資家に与えた影響も。

ですね。ForbesがAPベタですけど流してますし。日経はどうするかな。わくわく。
Posted by 果科 at 2006年11月10日 22:25
私も少し心当たりを探してみましたが、見当たらず。
NHKがこれを報じていますね。これによるとやはり映像があったようですから、そのうち出てくるのではないでしょうかね。つーか、NHKが出せよ。

中国 農民数千人が警察と衝突
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/11/10/d20061110000160.html
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」などによりますと、衝突が起きたのは中国南部、広東省の三洲村です。地元の行政当局によって収容された土地に8日、外資系企業が運営する食糧倉庫が完成したことに反発して、9日までに住民数千人が抗議行動を行い、警察と衝突を繰り返しました。NHKが入手した、住民が撮影したとされる映像では、抗議の横断幕を掲げて行進する住民が、警察官に石や棒を投げつける様子や、警察が発射したとみられる催涙弾からガスが吹き出す様子などが映っています。一連の衝突で、少なくとも3人の住民がけがをしたということです。中国では、農村部を中心に、行政当局と土地開発業者による強引な土地の収容が深刻な社会問題となっており、中国政府は、去年1年間にこうした土地収用などをめぐる衝突がおよそ8万7000件起きたことを明らかにしています。
Posted by aki at 2006年11月10日 23:12
日テレとTBSにニュース映像がありますた。
http://www.news24.jp/70916.html
http://news.tbs.co.jp/part_news/part_news3422000.html

村人は式典の日を狙ってしっかり事前準備してデモったようですね。んで。投資した外国人も拉致ったっぅ記述は見当たらず。
Posted by 果科 at 2006年11月11日 12:00
おー、果科さん、ありがとうございます。
残念ながらTBSの方はすでに削除されていましたが(早すぎ)、日テレの方は見ることができました。

確かに衝突の原因も衝突についての説明も時間的な制約があるとはいえ中途半端ですね。

衝突の原因は、「政府が不正に土地を収用し、外資系企業に売却したことに反発」というより、売却額が説明と大きく食い違い、農民たちへの保証金が不当に低く抑えられその差額を役人が懐に・・、という官の不正、不信感からの行動ですよね。

しかも今回突発的に起こったものではなく、6月にも不動産会社の警備員60人が村民らに拘束されるという事件が起こっていましたし、その流れの中で熟考された行動。
http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/06/200606182206.shtml

そうそう、広東省三洲村とは違いますか、昨年に武装警察と派手な衝突を起こした広東省汕尾市東洲村も未だに不穏な空気が漂っているようです。汚職官吏に反対するとのスローガンを掲げていた村民代表が当局に拘束され、その釈放を要求し村民2000人が当局と10時間あまりにらみ合うという事態に。
http://epochtimes.com/gb/6/11/11/n1517647.htm

一度、当局に対して抗議活動を行ったという経験が、村民たちに「お上に楯突く」敷居を低くしているのかもしれませんね。

広東省汕尾市東洲村での衝突からもうすぐ1年ですね。1周年記念行事が楽しみw
http://ihasa.seesaa.net/article/10401140.html
http://ihasa.seesaa.net/article/10453436.html
http://ihasa.seesaa.net/article/18369331.html

と、長々と記したのはイザ!に転載を企んでいるからということは内緒(笑)
Posted by aki改めタソガレ at 2006年11月11日 23:57
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

リベラルの仮面を剥ぐ…新下院議長の反中過激発言

Excerpt: 米民主党の勝利に反日メディアは歓喜しているが、実態は逆だ。リベラルの言葉に惑わされてはならない。女性初の下院議長となるペロシ女史は、チベット&法輪功で反中共の急先鋒なのだ。
Weblog: 東アジア黙示録  
Tracked: 2006-11-13 16:55