ライス曰く「中国の軍拡は地域での役割を超えている」

2006年11月19日

17日にアメリカのライス国務長官はハノイでのインタビューに応じ、その中で次のように発言しています。

質問
もちろん中国は(北朝鮮問題解決の)パートナーとして奮闘しています。しかし、アメリカが中国は経済的、軍事的にに脅威であると見ているのではないかという懸念が中国人の一部にあります。アメリカは、中国をそれらの点で脅威と見なしているのでしょうか?
One of the partners you've been working with quite hard on this is China, of course. But it seems now there's some concern amongst the Chinese that the United States sees China as a competitive threat both economically and militarily. Does the U.S. see China as a threat in those ways?
ライス
我々は、中国を我々のあらゆる分野で良好なパートナーとなるべく大きな移行を行って最中の国であると見ています。中国は、重要な経済大国です。もちろん、中国の台頭に対する懸念があり、中国の移行に対する懸念、国際経済が必要としている通貨価値についてや知的所有権の保護といった公正な競争の場で協調しようという方向へ中国経済が実際に行動を起こすのかどうかという懸念があります。これらの懸念はあります。そしてもちろん、中国の軍拡に対しても懸念を持っており、それは中国の地域での役割を超えている箇所があるように思います。
Well, we certainly see China as a country that's in major transition and it's been a good partner in many ways. It's an important economic power. Of course there are concerns about a rising China, concerns about China's transition, concerns about whether the Chinese economy will in fact act in a way that is consistent with the level playing field that the international economy needs, whether it is in terms of currency valuation, intellectual property rights protection. Those are the kinds of concerns we have. And of course there are concerns about Chinese military buildups; it's sometimes seemed outsized for China's regional role.
US Department of State
Interview With Maura Fogarty of CNBC Asia
Secretary Condoleezza Rice
Hanoi, Vietnam
November 17, 2006

ライスの中国に対する発言を追いかけてきたわけではないので、上記の発言がこれまでの発言と変化があるのかどうかわかりません。なんとなくではありますが、軍事的な中国脅威論を唱えていたのはラムズフェルド(国防省)でライス(国務省)は穏健といったイメージはあり、ライスが軍事的な脅威を口にするのは珍しいのではないかと。

ですが、上記の発言は、それほど過激なものでも何でもなく、むしろインタビュアーの誘導に乗らないように中国に気を使った応答を行っているように思います。事実、この先の質問で「中国経済の台頭がアメリカを軍事的に危険な方向へ向かわせることはないですか?」との質問には直接答えず、「中国の国際社会のルールの枠組みでの経済成長はアメリカも望んでいる」などとはぐらかしいます。

しかし、中国外交部はこのライスの「軍拡に関する懸念」に脊髄反射します。このライスのインタビューを受けて、18日に中国外交部がわざわざ声明を出しています。

中国外交部スポークスマン劉建超は、今日(18日)、ライスの談話は事実的根拠がないとライスの談話に反論した。劉建超曰く「その中国の立場に関する発言には根拠がないと考えている。中国の国防政策は国家の安全の維持と国家主権防衛のためのものである」

香港文匯報「[2006-11-19] 外交部反駁擴軍批評

厚顔中共外交部が、ライスの発言には「根拠がない」と言い切れないところがなんとも。

今のところ、この脊髄反射は外交部のサイトには掲載されていませんが大陸メディアもこれを報じています。

ライスの「it's sometimes seemed outsized for China's regional role. 」とは、先のキティホークの件を指していることに間違いないでしょうが、この事件について次のような報道がなされています。

【ワシントン=山本秀也】沖縄近海を航行中の米空母「キティホーク」が中国海軍の潜水艦に追跡された問題で、中国訪問中のラフェッド米太平洋艦隊司令官は17日、中国軍当局者から潜水艦の活動は公海上であり、領海侵犯などには当たらないとの説明を受けたことを明らかにした。

AP通信が伝えたもので、問題となった潜水艦の活動を中国側が確認したのはこれが初めて。中国外務省の報道官は、事態を最初に伝えた米紙ワシントン・タイムズについて「報道は正確ではない」と指摘していた。

説明に当たった中国軍当局者は明らかにされていない。中国側の発表によれば、ラフェッド司令官は同日、中国軍の葛振峰副総参謀長と北京で会談していた。

(後略)
産経新聞(11/18 23:07)「「現場は公海」米空母追跡で中国 合法性強調か

キティホークの件に関して外交部の発言内容も微妙に変わっていて、14日は「知らん」とすっ呆け外交部のサイト上にすら掲載せず、16日には「報道は事実ではない(不属実)」と切り捨てていましたが、18日にはライスの懸念に対して脊髄反射しつつも「根拠がないと考えている」と一歩後退しています。

17日のAPの報道(上記産経の記事)を受けてアメリカ内で一気に中国脅威論が広がることを懸念して18日に骨髄反射せざるを得なかったが17日にキティホーク事件を認めるかのような発言を解放軍側が行ってしまっており、「事実ではない」とは言い切れなくなってしまった・・、と勘ぐるのですがどうでしょうか。

米中両軍にそれぞれの思惑があるのでしょうが、解放軍の強硬姿勢に外交部、中南海が引きずり回されているように見えなくもないです。おりしも胡錦涛がAPECに出席しており中南海を留守にしています。胡錦涛留守の折に軍内強硬派が不審な動きをすることは今までも再三ありました。今回も、と考える次第です。

しかし、外交部が脊髄反射したのは、ライスの発言やキティホーク事件を受け軍強硬派をなだめる為というだけでなく16日にアメリカ議会が中国に対する経済的、軍事的懸念を盛り込んだ年次報告書を提出し「もはや中国は利害共有者としての責任を果たす意思がない」などと述べたということもあるのでしょう。更には先の中間選挙で民主党が勝利し、下院議長に対中強硬派であるペロシ女史が就任したことも影響しているのでしょう。

今回の外交部の骨髄反射は、民主党の勝利やペロシの下院議長衆院などが中国を過度に警戒させていることを表す一つの証左のように思えます。

外交部が中国脅威論の火消しにやっきなのか違うのか、そのような思惑を知ってか知らずか、19日に解放軍参謀総長補佐・章沁生が火に油を注ぐような発言を行っています。

中国軍は、台湾海峡地域の和平維持と両岸の最終的統一という実際の要求を促進し、絶えず近代化を強力に推し進め、”一つの中国”という枠組みを強固に制御するに足る力を確保するべきとの点に着目しなければならない。

新華社「章沁生:我軍須有足[gou]力量将台控制在"一中"框架内

この発言を次期副参謀総長と目されている章沁生が、このタイミングで行った意味は大きいのではないでしょうか。

中共の言う「国家主権の防衛」には当然台湾が含まれています。それに対してライスの言う「中国の地域での役割を超えている」との「中国の役割」には、台湾防衛は含まれていないはずです。アメリカは、台湾海峡で対峙している軍事バランスが変化することを懸念しており、対して中共は台湾は我々が「防衛すべき」という観点から軍拡を進めているというわけです。

キティホーク事件は、海軍副司令官・丁一平の命令であったなどと言われていて海軍の一部の強硬派が独断で行った、または海軍自体が強硬路線へと引きずられているように思えたりしたのですが、上記した章沁生の発言を見る限り、解放軍全体が強硬路線へと進みつつある印象を受けます。

キティホーク事件により、解放軍内の士気が変に高揚しているようにも思え不気味な感じがします。この動きを中南海は、しっかり制御できているのでしょうか。章沁生の発言と外交部の脊髄反射、胡錦涛の進めている対米協調路線との間に隙間があるように思えるのですが、どうでしょうか。

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posted by タソガレ at 21:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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