新米国国防長官ゲーツも警戒せよ

2006年12月10日

『人民日報』傘下の『環球時報』の12月1日付の記事をば。以前「防衛省昇格に対する中共の反応」で紹介した記事の対になっていた記事です。

防衛省昇格の記事とこのゲーツの記事が、12月1日の第一面に大きく見出しとして掲載され、今回紹介するゲーツの記事がその1面を飾っていました。ちなみに防衛省昇格記事は16面に掲載されていました。

china0114.jpg”台湾協防”の話題が、最近アメリカでまた突然噴出してきた。いくつかの保守系シンクタンクと委員会が”イラク内戦”についての激しい論議の中で、中東によって中国を忘れてはいけない、と叫んでいる。今週火曜日(11月28日)、ブッシュによって新国防長官に指名されたゲーツは、なんと上院に提出したレポートの中で、アメリカは一旦中国大陸が武力を以って台湾を攻撃したら、すぐさま台湾への侵攻を防ぐ手助けをできるだけの軍事的準備を整えておくことは必須であると明言した。これらの話は、解放軍と米軍が海上合同救助演習を挙行し両軍関係が全面的に修復時期にある中、強硬であり耳障りなものである。ゲーツのこの発言を分析すれば任命前の議会における”恒例行事”であるが、ゲーツは重大な責務を有している政治家であり、台湾問題に関する発言は慎重に行うべきで、ラムズフェルドの後任として成果が必要であるのなら、中国軍側の協力が必要なのは明らかであり、お互いに猜疑し恐喝するのは間違いだ。

アメリカは台湾海峡での戦争を準備しておかなければならない

AP通信の11月29日の報道によると、ゲーツは今週の火曜日にアメリカ上院軍事委員会に提出した書類の中でこの話が記されていたという。このレポートは、イラク戦争は最大の重点であるが”台湾海峡での衝突の可能性”も紙面の一部を占めていた。ゲーツは、「中国大陸は台湾を平和的に統一しようと試みているように見えるが、北京は同時に極めて高い軍事力によって台湾海峡戦争に対処する意図も有している」と言う。そのため、「アメリカは中国大陸の急激な軍事的増長を常に監視しなければならず、中国が台湾に武力や武力による恫喝を行う場合に備えて台湾が自衛能力を維持するように協力する」と言う。

このレポートの中でゲーツは、中国大陸が核拡散を支持しないとの態度や”軍事の透明性を高める”などの分野での進展には称賛を示しているが、同時に大陸の戦略的意図について妄想的な観測を行っている。「現在の中国はアジア最強になるという目標に向かって一直線に向かっている。中国は、この地域の政治と経済の影響力を拡張し、これを以って武力による恫喝のオプションを用いている」と言う。彼は一歩進んで、解放軍の軍事力の拡張は”主に台湾を狙ったものだ”と認識し、”短期に重点を置く”解放軍は迅速に台湾の抵抗する意志を瓦解させ台湾海峡での衝突中に外部からの干渉を阻止し退けるだけの戦争遂行能力を十分に獲得していると述べた。

アメリカの『陸軍時報』、『海軍時報』、『空軍時報』などが、この国防長官のレポートを掲載、転載した。少し報道の背景を紹介すると、中国の軍事について「中国の国防予算は1994年から2004年まで毎年16%のスピードで増加している」、中国は「アジアで最高の軍事費の国家である」などなど、いい加減なことを述べている。

11月30日、中国外交部スポークスマン姜瑜は記者との会見の後、ゲーツの証言についての論評を尋ねる電話をした記者があり、姜瑜は、「中国は平和発展の道を堅持しており、防御性の国防政策を実行している。アメリカ政府とアメリカの指導者にひとつの中国政策を堅持し、中米3つの共同宣言を遵守し”台湾の独立”に反対し、台湾当局が一方的に現状を変えることに反対するよう重ねて申し上げる。アメリカ側は中国との承諾を適切に履行し、”台湾独立”に明確に反対し断固として抑制し、共に台湾海峡の平和と安定と中米関係の大局を守ろう」と述べた。

米軍が台湾海峡の空白期に介入す

AP通信は、ゲーツのレポートは、ゲーツは単に”アメリカ政府の立場を重ねて表明した”だけだと評している。しかし、アナリストはアメリカが最近台湾協防に関して、中国の軍事的脅威を強調する論調が急に増えたことに気づき、これには注目にせずにはいられない。

11月16日、アメリカ下院議会に属する米中経済安全調査検討委員会は年次報告を発表し、解放軍の近代化のスピードがアメリカの予想を上回っており、台湾海峡の軍事バランスが大陸側に傾斜し、更に一旦危機あるいは衝突が海峡で発生した場合、大陸はすでに米軍の介入を阻止するだけの能力を有していると述べている。

11月22日、アメリカ『ワシントン・タイムス』は、大陸の軍事力の発展は”アメリカの台湾の軍事力への介入を阻止する”、解放軍の軍事力の発展のスピードに従うと、アメリカが台湾海峡に介入する能力の”空白期”が2008年から2015年までに出現すると暴露している。アメリカ企業研究所の研究員によると、大陸は多様な近代的軍隊の設立に一直線に努力し、尚且つ新しい攻撃の概念”この部隊の戦闘力をテストする”、例えばアメリカの艦隊を攻撃するときに潜水艦や戦闘機などの伝統的手段以外に、陸地のミサイル基地(例えば地対地ミサイル)など”多重方向と手順”によってアメリカ航空空母や艦隊を攻撃することを研究しているという世迷言を述べている。大陸の軍事力の発展は相当成功しており、10年前の台湾海峡危機を再現されると、アメリカは再び航空空母艦隊を台湾海峡に派遣するリスクは大変高くなっており、更に大きな代価を払わなければならないなどという予言を行っている。『ワシントン・タイムス』は、大陸の最先端武器は2008年以降に配置が完了すると予想され、アメリカは近海のミサイル基地などを攻撃する迎撃しシステムの開発は、2015年にようやく効果を発揮する予定で、つまり、この期間がアメリカの台湾海峡の衝突介入の”空白期”があり、この”空白期間”内に、アメリカは大陸に対する抑止能力が低下し台湾海峡に介入するコストが増加すると報じている。

最新のアメリカの週刊誌『国防新聞』が、アメリカの”台湾に対する友好”という国務の専門家による文章を掲載し、それによると、”中国の脅威”は詳しく言うと”中国海軍の脅威”であり、ここ10年間の中国海軍の実力の増強を特に”各作戦能力と潜水艦の戦闘力とが不釣合い”で、すでに十分に米軍が憂慮するほどで、アメリカ国防部門は”真剣に挑戦に応じるため”に、一旦中国大陸が”解放軍が米軍の台湾に対する軍事的支援を阻止できると認識をもつ”に至れば、将来に衝突が起こる可能性は飛躍的に高くなると記している。

台湾カードを使いたい人がいる

最近絶えず”台湾協防”を議題にするのはその多くがアメリカの保守系の人々で、米中経済安全調査検討委員会の保守的立場は言うまでもなく、昨年アメリカ国務院がレノボのコンピューターを採用したことを非難したのは彼ら、アメリカ企業研究所や有名な保守系シンクタンクであり、これらの人々は、イラクが混乱状態に陥っており、ネオコン思想に疑問が向けられる中、矛先を中国大陸の軍事力に向け、台湾を恫喝して手っ取り早く巨額の兵器購入採択を通過させる以外の別の企みも有しているのだろう、と指摘しているアナリストがいる。

中国社会科学院研究所の学者である倪峰は、アメリカは”9.11”以降、先制攻撃と単独主義の進攻戦略が頓挫し、”反テロ戦争”の為に潜在的競争相手に対する用心を怠り、いくつかの国家がアメリカが暇のないのを利用して自己を発展させ、例えばロシアは石油資源を利用して大国の地位を回復させ、中国も東アジア地域に”座して強大”となり、その影響力はアフリカやラテンアメリカなどのアジア外の地域にまで広がった、と認識している人もいると『環球時報』に対して述べた。このような情況の下、アメリカは、”中国が利益となるところは関わる”ことはもちろん重要だが、中国がアメリカの望みに服従しなくなれば、アメリカ別の強硬な手段、例えば中国の周辺国家と外交関係を強化したり、太平洋地域に更に多くの軍事力を展開し、台湾という中国大陸を牽制する上でのひとつのカードをアメリカが用いる準備を行っているが、現在、台湾自身の情勢がだんだんと不穏となり、陳水扁失脚の危機を抜け出せず、島内の”台湾独立”の勢力は大陸の自負心の前に頓挫し、アメリカが台湾のこのカードの効果をうまく引き出せるのか憂慮している人もいると言う。

事実上、”台湾カード”を強化するために、アメリカは時々台湾当局に対して”鎮痛剤”を喰らわしてきたと島内のメディアも気づいている。『自由時報』は27日晩、アメリカの台湾協会台北事務所所長・楊蘇棣が、陳水扁の腹心らを感謝祭のパーティーにわざわざ招待し、更に陳水扁と来年一緒に爬玉山に登ろうと誘い、”自らの目で台湾一の高峰の雄大な台湾の美を見たい”とぬかした、と報じた。彼はこのような方法で陳水扁に対する強烈な支持を暗示したとする分析がある。

国防長官は中国に対してどのような態度をとるか

多くのアナリストは、保守派の学者らが故意に”台湾防協”の議論を巻き起こしているのとは違い、アメリカ国防長官ゲーツの証言は沢山ある恒例行事の公務に過ぎないな認識している。ロイターの報道によると、12月5日にアメリカ上院軍事委員会においてゲーツに対する任命公聴会が開催され、彼は容易に通過するだろうという。彼は火曜日に台湾問題について論じた証言レポートを提出したが、これは恒例公務にすぎない。中国社会科学院世界経済政治計救助学者・王逸舟は『環球時報』の記者の取材を受けた際、ゲーツの表明は、ペンタゴンが一貫して中国に対してとってきた”一軟一硬”の態度でなにも驚くようなことではないと指摘した。

台湾淡江大学アメリカ研究所教授・尢本立は次のように分析する。ゲーツはCIA出身で、ネオコン派の将軍ラムズフェルドとは違う。アメリカはこれらの情報系出身者は、全てキッシンジャーと同じように、極めて実務的な態度で、地球的規模の戦争の危機を回避できた原因の一つである、キッシンジャーによる冷戦時代に米ソ、米中のような大国間のバランスをとった政策、”権力の均衡”という概念を彼も同様に重視するだろう。もともと大陸に対して先入観のあったラムズフェルドでさえ大陸の重要性の為に態度を変えざるを得ず、実務家ゲーツなら尚更大陸と台湾の問題で”対立”路線はとらないだろうし、大陸と台湾の衝突を望んでもいないだろう。

ゲーツが就任した後、中国大陸に対しどのような態度をとるのかという問題については、現在の彼の仕事の重点は間違いなく台湾問題ではなく、対外的な重点はイラク問題を解決することあることは間違いなく、国内においては、前国防長官ラムズフェルドが残したゴタゴタを片付け各軍兵種を調整し軍事改革を推し進め、人事によって引き起こるであろう不満不平を押さえることであると尢本立は考えている。現在の中米関係の大局は相対的に安定しており、台湾問題は簡単には中米の政治的焦点にはならないだろう。ゲーツ本人の事を行うスタイルは相当控えめで、今のところ、発表している講話すべて常軌を逸しておらず、複雑な国防部体系の中で彼は前任者と比べてかなりまともな人間で、政策の上でも冒険を犯すような人物ではない。

12月1日付『環球時報』第一面「美候任防長妄淡台海

中華思想がそうさせるのか、なんともひん曲がった記事でございます。

今回、12月1日の記事を遅ればせながら紹介したののは少々理由があります。記事では、ゲーツの台湾問題に関する言及は「恒例行事で珍しいものでも何でもない」としつつも、紙面の第一面を占領して長々と仰々しく論じています。「新聞を売るための多少煽り気味の記事なのかな」と思っていたのですが、どーも本気で「やべーよ」と思っている節が見え隠れしきたので取り上げた次第です。

というのも12月7日に『新聞会客廳』というテレビ番組に国防部外事弁公室副主任・銭利華が出演し、「米中の軍事交流は盛んで両軍の関係は良好である」、「中国脅威論は誤解と偏見による産物であり間違いだ」といった発言を行っており、これを新華社が報じていました。

インタビュー形式の番組で、そのほとんどが「我が軍は素晴らしい」、「アメリカとも引けをとらない軍となっている」、「世界平和の為に軍事外交を推し進めており、これからも邁進する」などとも述べているのですが、一番言及したかったのは「中国脅威論についての反論」だったのでしょう。この箇所の発言のみを取り出して新華社が別に記事にしていることからも伺えます。

キティホーク事件などアメリカ側を刺激するような、アメリカ側が中国を牽制するような言動に対して中共が警戒しているのは間違いないでしょう。中共が2001年にWTOに加盟し加盟条件をクリアーする猶予期間の5年が12月11日に切れます。軍事的圧力は以前から変わらないにしても、WTO加盟条件をクリアーできずにアメリカ国内に「中国は利益共有者として、国際社会の一員としての責任を果たす能力も意志もない」と見なされ、「中国の経済成長が軍事力増強に寄与している」と結論付けられることを中共は是が非でも回避したところでしょう。なんと言っても下院議長があのペロシなのですから。

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posted by タソガレ at 18:03 | Comment(2) | TrackBack(1) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
Washington Timesに反応してるあたりにピリピリ感が出てていいですね。
Posted by 果科 at 2006年12月11日 09:34
新長官に対する牽制の意味もあるでしょうが、やはり台湾についてはナーバスに反応してきますね。
Posted by aki改めタソガレ at 2006年12月12日 21:03
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中川八洋

Excerpt: 中川八洋人文社会科学研究科 歴史・人類学専攻 近代政治哲学国家安全保障論I,II近代政治哲学概論日本科学協会理事東京大学工学部卒、スタンフォード大学政治学科大学院修了1987年より筑波大学教授。主要著...
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Tracked: 2006-12-11 00:17