モンゴルと中国の確執@自由と繁栄の弧

2007年06月14日

6月11日付香港紙『星島日報』の記事をば。

「内蒙古にも独立問題は存在しない。我々の民族団結工作は非常にうまくいっている」中共フフホト市委員書記・韓志然がはっきりと述べた。隣邦に同種族の蒙古国(または外蒙古)があるが、経済水準は内蒙古とは隔たりがあり、内蒙古には「蒙独」の声は存在しないという。現在、蒙古国と中国の関係は依然として敏感で大規模な中国資本企業の投資に対して特に警戒している。

内蒙古自治区成立60周年の前夜、記者団はフフホト、包頭、オルドス、烏蘭察布を訪れ、少なくない地方の「一把手(最高責任者)」に蒙古人が担当していることを発見し、例えばフフホト市委員書記・韓志然、烏蘭察布市委員書記・呉永新が蒙古人だ。このこととチベットと新疆の各都市の「一把手」は必ず漢人から選ばれていることと鮮やかな対比をなしており、中央は蒙古族の人々の忠誠に対して安心していることを示している。

丸顔で細目の韓志然は典型的な蒙古族の人々の容貌だ。彼は、漢蒙融合は非常にうまくいっており「現在内蒙古では純粋な蒙古あるいは純粋な漢族家庭とを分けることが出来ない」と述べた。

「もし外蒙古の経済が発達し外へひきつけられる力が大きくなったとしても、外蒙古の経済と政治は明らかにダメで、我々よりも大変貧しい。(内蒙古)烏海市の一人当たりのGDPと北京、上海のそれと大きな差はない」と内蒙古社会科学院主席研究員・潘照東は記者に教えた。

過去数年、石炭、電力などのエネルギー工業の牽引の下、内蒙古経済発展は急激だ。自治区党委員書記・儲波は、内蒙古2,000年のGDPは僅か1,500億元(人民元、以下同じ)、昨年4,790億元に達し、今年一人当たりのGDPが3,000ドルに達し全国各省区市の中で上位10位となると予想されている、と紹介した。

蒙牛、伊利などの国内有名ブランドを内蒙古は有しており、その経済の潜在力もよくなると予想されいて、2軒の五つ星のホテル――シャングリラで錦江国際が来月フフホトにオープンする予定だ。逆に蒙古国の面積は内蒙古より少し大きいのだが、依然として人口の3分の1の生活が貧困にある。

「蒙独分子は存在するが、活躍できるような市場はない」、内蒙古の漢人人口は主体で8割5部を占めており、漢蒙の結婚もごくありふれていると潘照東教授は更に分析を進める。これと新疆やチベットとは大きく異なる。ウイグル人とチベット人の宗教信仰は非常に強く、漢人と結婚する人は非常に少ない。

ジンギスカンを祖先に持ちながら2つの国家に分かれている。潘照東は、蒙古の独立は20世紀の初めで、蒙古王侯が帝政ロシアの支持の下で進められ、当時の中国は辛亥革命が発生し内戦が続き中国政府が顧みなくなり外蒙古は帝政ロシアの保護国となったと指摘する。

49年に中華人民共和国が成立し、ソ連と同じく社会主義陣営に属したために蒙古人民共和国を承認した。中国の勃興にしたがい、少数の過激家が「蒙古国を回収せよ」のスローガンを叫ぶ者が出てきた。しかし、潘照東は、蒙古国はすでに国連に承認された主権国家で蒙古国の内部と国際社会の抵抗に加え「率直に言って、回収するなど現実的でない」と指摘する。

恩讐情仇、中蒙関係は依然として十分敏感だ。蒙古国の憂慮を打ち消すために国家主席・胡錦濤は蒙古を訪れた際、中蒙は「相手の独立と主権、領土保全を尊重する」必要があると特に強調した。

中蒙の経済貿易関係はどんどんと密接となっているにも関わらず、蒙古国は大規模な中国資本企業の投資に対して依然として非常に憂慮している。例えば包頭鋼鉄(グループ)は蒙古国のウランバートル市で鉄鋼開発を行いたいのだが、審査許可が遅々として通過されない。包頭市委員のある高層は「外蒙古は我々にの大きな投資に対して非常に警戒している」と述べた。

星島日報「 「蒙獨」 内蒙無市場

わざわざ「内モンゴルには独立問題は存在しない」、「内モンゴルには独立分子の市場がない」などと言及すること自体がなんだが非常に胡散臭い。現実はその逆なんじゃないかと勘ぐってしまいます。

昨年来、モンゴルと中国との経済摩擦、モンゴル内での中国企業への風当たりの強さなどがたびたび報道されていました。そのようなモンゴルの人々の対中感情がモンゴル自治区内のモンゴル人たちに徐々に感染していたり・・・などと想像してみたり。

そもそも中国内のモンゴル自治区を「”内”モンゴル自治区」と呼び、モンゴルを「”外”モンゴル」と呼ぶこと自体が中国のモンゴルに対する意識を端的に表していて、だから「回収せよ」などと叫ぶ糞青が出て来てモンゴルは中国を警戒する。

また、社会科学院の教授の発言も「モンゴルは本当は中国なのだ」との意識が自然と表れていますね。

上記の記事、あえて「蒙古」をモンゴルと訳さずに「蒙古」と原文のまま記してみました。というのもモンゴル側にとって「蒙古」という文字自体が・・・、

■モンゴル留学生ら呼びかけ

日本とモンゴルの交流が盛んになるなか、モンゴル留学生や日本の著名人が「蒙古」という言葉の使用をやめるよう呼びかけている。「蒙古」には「無知で古臭い」といった意味があるためで、大相撲のモンゴル力士たちも支援している。

このほどモンゴル留学生会などが主催する祭典「ハワリンバヤル2007」が開かれた都内の会場で、「私たちはモンゴルを蒙古と呼びません」というパンフレット(意見広告)が来場者に配布された。両国の賛同者による合同声明の形で意見を掲載。大相撲の安馬も賛同の署名を行った。

「蒙古」には「無知で古臭い」という意味のほか、「暗い、覆いかぶせる」という内容があるという。東京外大モンゴル語学科教授で日本モンゴル学会理事の二木博史さんは「蒙古という呼び名は漢民族ができるだけ野蛮な表記にしようとしてできた言葉。モンゴル人を蔑視(べっし)している。原則的に民族名や言語の名前はカタカナ表記にすべきだと思う」と訴える。

(中略)

ただ、この運動を難しくしている問題が存在する。中国への配慮だ。中国は少数民族としての蒙古族と行政区としての内蒙古自治区を有する。中国では当たり前のように「蒙古(モング)」と呼ぶ。蒙古の名前がついた製品もある。モンゴル留学生たちは「呼び方変更運動は決して政治的なものではない。民族主義的な発想でもない」として中国を刺激することを避けようとしている。

(後略)
イザ!「漢民族による蔑称…「蒙古」と呼ばないで!

内モンゴル自治区成立60周年ということもあるのでしょうが、両国の間の不穏な空気、緊張感が伺えます。

今年2月にモンゴル大統領が参議院で演説をされ、その中で次のように述べられていました。

当時のソ連で起こったペレストロイカの影響を受けて80年代末、90年代初めにモンゴル国に広がった政治経済社会改革は、モンゴルと日本を自由、民主主義、市場経済といった共通の価値観によって結びつけ、両国関係を発展させる新たな時代をもたらしました。

(中略)

尊敬する国会議員の皆様、モンゴル国は民主主義体制と市場経済体制へ移行する過程において具体的な成果を収めてきております。1990年に行われた初の自由選挙によって組織された国会は、1992年に新憲法を制定しモンゴル国が民主主義、市場経済によって発展するための政治的及び法的な基盤を構築いたしました。政治改革は成功裏に実施され、自由選挙、複数政党制は実際に定着し基本的人権と自由が保障されています。

(後略)
参議院インターネット中継「2007年2月27日 ナムバリーン・エンフバヤル・モンゴル国大統領夫妻歓迎会
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麻生さんの示した日本の外交方針である「自由と繁栄の弧」を多分に意識した演説であることは明らかでしょう。明確に外交方針を示すことによる積極的な作用がここにも見ることが出来ます。

自由と繁栄の弧というのは、まず地図で見ますと、北欧5カ国とバルト3国に始まりまして、最近NATOやEUに入ったばかりの中・東欧諸国、それから、スターリンの故郷だというくらいですからかつてはロシアの強い影響下にあったグルジアであるとか、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバといった、いわゆるGUAM諸国と周辺の一帯。

ウラン鉱脈の存在などで今後重要性が増していきます中央アジア諸国に、下ってトルコや中東諸国のイスラム圏。

アフガニスタンを経て、インドを始めとする南アジアの諸国から、ASEANの先発メンバーに追い付こうと懸命な、カンボジア、ラオス、ベトナム、それにミャンマーを加えた、CLVとかCLMVといわれるインドシナ半島の国々。

上っては朝鮮半島とモンゴルまで、そしてやや外周に日本のパートナーであるオーストラリアやニュージーランドというように、大まかにはユーラシア大陸の外周に沿って、弧の形をした一帯を言うものです。

外務省「麻生外務大臣演説 財団法人 日本国際フォーラム(JFIR)設立20周年に寄せて「自由と繁栄の弧」について

『星島日報』の記事では日本が全く出てきませんが、あえて無視したのか単に考えが及んでいないのかはわかりません。しかし、胡錦濤がモンゴルを訪れモンゴルの対中感情緩和に精を出した背景には日本の「自由と繁栄の弧」の外交姿勢に対する警戒感もあったのだろうと思います。

更に、地球温暖化問題で発展途上国の中でも積極的に環境対策を施すことを明確に打ち出した国とそうでない国に対する援助に差を設けることを明言したり、アフリカへの援助のあり方に意見するなど、中国にとって耳の痛い提案を次々と打ち出していたりします。安倍-麻生ラインの「自由と繁栄の弧」に基づく日本の外交姿勢は、対中外交姿勢として打ち出しているわけではないので面と向かって反論しにくい点なども含めて中国はイライラを募らしているのではないでしょうかね。

あわせて胡錦濤が推し進めている対日融和姿勢に対する不満が高まっている様をうかがわせるようなような動きがチラホラ見え隠れしていたりします。これらの動きをどこまで抑え続けることができるのか、今後も注目です。

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外部関連記事
呼和浩特市政府信息網「韓志然会見《経済日報》原副総編纂羅開富一行

下記で麻生さんが「自由と繁栄の弧」について語っておられる動画をみることができます。麻生節炸裂。難しいことを簡単な言葉で語り私のようなド素人でも理解したような気にさせてくれます(笑)

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posted by タソガレ at 22:43 | Comment(1) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
你真是sb
Posted by 哈哈 at 2009年01月19日 10:43
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