慰安婦広告への反応と現代に残る奴隷制度

2007年06月18日

『ワシントンポスト』に6月14日に「THE FACTS」と題された慰安婦に関する意見広告への中国系メディアの反応が芳しくありません。「株で損をしたのは新聞のせいだ!」でも触れたように非常に押さえ込まれた反応しか示していません。

ですが、その抑制された記事を一字一句同じながら100以上の大陸メディアが転載したことからも、この広告への関心と衝撃が小さくなかったことは間違いないと思います。

広告掲載翌日に配信された記事は次の通りです。

中新網ワシントン電 日本のジャーナリスト櫻井よし子らが14日アメリカの『ワシントンポスト』に意見広告を掲載した。その主張は第二次大戦中日本軍がアジアの女性を強制的に”慰安婦”とした事実は存在しないというもので、史実を否認することを意図している。

日本の共同通信社の報道によると、日本の首相安倍晋三は4月下旬にアメリカを訪問した際、アメリカの市民団体が『ワシントンポスト』に日本軍が中韓などの国の女性を強制したことを批判し日本政府に対して正式に元”慰安婦”に謝罪するよう要求する意見広告を掲載したという。

櫻井らの意見広告はすなわちこの広告への反論で「日本軍が女性を脅迫し売春をさせたとする明確な歴史資料は発見されていない」と指摘している。

日本の29人の自民党と13人の民主党国会議員が意見広告に連名で賛同を示しているが、日本の首相、安倍晋三の名前はその中にない。

中国新聞網「日本部分人員无視史実 美報登广告否定征慰安婦

「安倍晋三の名前はその中にない」には笑ってしまいました。「安倍さんは賛同していないから安心しろ」、「安倍(日本政府)を攻撃するな」とでも言いたいのでしょうかね。

徹底的に論評を避けた記事となっています。この種の記事で必ず出てくる「右翼」の文字すらないのには少し驚きました。自民党、民主党と超党派の署名があったからでしょうかね。

上記記事が配信された翌16日に北京の地方紙『新京報』が「右翼」という文字を使い記事を配信しています。「40人の右翼分子がアメリカ新聞紙上で慰安婦はお金を得ていた職業で稼ぎ出す給料は将軍をも上回る喧伝す」と記して『ワシントンポスト』に掲載された意見広告の写真を掲載し、次のように記しています。

40人ほどの日本の議員らが14日、アメリカの『ワシントンポスト』にすでに定説となっている史実を否定し「日本政府と軍隊が慰安婦を強制したことを示す証拠はない」と臆面もなく宣伝する全面広告を掲載した。

今年4月下旬、日本の首相・安倍晋三はアメリカ訪問の際、アメリカ慰安婦声援民間団体が『ワシントンポスト』に、第二次大戦時に日本軍が中韓などの国の女性を強制したことを厳しく非難し日本政府に正式に慰安婦に対して謝罪するよう要求する全面広告を掲載した。

今回の広告は日本の右翼からの反駁で、「アメリカ国民に慰安婦の真相に関して追求させるものである」と称している。日本の国会議員による連名には、自民党が29人いる。民主党13人、無所属が2人。政治家以外では、さらに大学教授、記者や政治評論家が名を連ねている。

広告は、第二次大戦時に日本軍の「紀律を破るような事例はあった」と認めながらも。同時に「日本軍が女性を強制し売春を行わせたことを明確に示す証拠を発見した歴史学者や組織は存在しない」と強調している。広告は「日本の従軍した慰安婦は、”性奴隷”であるかのように報道されているようなものではない。彼女達は、公認された売春制度の下で働き、これは当時の世界各国でよく見られたものであった」と述べ、広告は同時に慰安婦はお金を儲けることのできる職業であるとも宣伝し、非常に多くの慰安婦の給料は軍官吏、さらには将軍をも上回っていたと称している。

安倍首相が以前慰安婦に対して謝罪した言論に対しては、広告はなんと「根拠のない誹謗への謝罪であり、世間に対して歴史事実に対して誤った印象を与え、アメリカと日本との有効に影響をもきたす」と述べている。広告は更に慰安婦の被害証言はいい加減であると非難している。「証言している慰安婦達は初めは自分が他の人に説得されたと語っていたのに、後になって自分は軍装したような人に誘拐されたのだと言うようになった」(謝来)

反応

慰安婦決議案は7月に可決される望みがある

この広告はアメリカの日系下院議員で民主党のホンダへの反駁だ。ホンダが提出した議案は現在まさに下院の投票を待っている。この議案は日本政府に慰安婦問題について正式に承認し謝罪し、あわせてはっきりと歴史的責任を承諾するよう求めたものだ。この法案はすでに140人の議員の支持を得ており、7月には可決される見込みだ。ホンダ議員のスポークスマンであるコーエンは「今年の初めに外交関係委員会の公聴会で、第二次大戦期に日本軍から性搾取と侵犯を受けた3人の元慰安婦の証言を撤回するのは無理だ。慰安婦が証言のたびに嘘をついているとすることは間違いだ」と述べた。

元慰安婦:広告は”ぞっとさせ”怒りで体が震えた

「これは極めてぞっとさせるようなもので、私は怒りで全身が震えました」と84歳の元慰安婦で現在オーストラリア国籍のジャン・ラフ・オハーンは、日本の右翼が戦争犯罪を否認する広告を掲載したと聞いたとき、慟哭し彼女は日本政府に対する尊重が完全に消失したと述べた。今年の2月、オハーン女史は自らワシントンへ赴き、下院の外交関係委員会の公聴会で慰安婦が受けた非人道的待遇を証言した。第二次大戦時、彼女は捕虜収容所から無理やり慰安所に連れて行かれた。彼女は「私はワシントンに行きました。この年齢にまでなってこれが事実でないとするのなら私はどうすればいいのですか?これは真実です。私達は強制されたのだ」と述べた。(謝来)

新京報「日議員登广告否征慰安婦

オハーンばぁさんは、広告をちゃんと読めよ。読んでねぇーだろ。だからてめーらは。

FACT 3

There were admittedly cases, though, of breakdowns in discipline.
On the island of Semarang in the Dutch East Indies (now Indonesia), for instance, an army unit forcibly rounded up a group of young Dutch women to work at a "comfort Station."
The station was shut down under army orders, though, when this incident came to light, and the responsible officers were punished.
Those involved in this and other war crimes were subsequently tried in Dutch courts and received heavy sentences, including the death penalty.

真実3

けれども、規律違反の例もあることは認めます。
例えば、オランダ領東インド(現在のインドネシア)のスマラン島では、陸軍部隊が強制的に若いオランダ人の女性引き立て、「慰安所」で働かせました。
しかし、この事件が明らかになった時点で、この慰安所は軍の命令により閉鎖され、責任のある将校は処罰されました。
これらの関係者及び、他の戦争犯罪に関与した者は、その後オランダ法廷によって裁かれ、死刑を含む重い判決を受けました。

lunaの東亜日記「The facts

勝手に体プルプル震わせてろ。

この『新京報』の記事は、ほとんど転載されておらず、検索した限りでは『新京報』を含めて2媒体が報じるのみです。

14日の『ワシントンポスト』に掲載された意見広告に対する大陸メディアの反応は上述した2例のみしか今のところ発見していません。意見広告の論理展開、提示している事実の前に反論できない、と考えるのは少しおめでたすぎるような気がします。むしろ、反応しないように通達が出されていると見るほうが自然ではないですかね。

また以前にも少し触れましたが、今中国国内では現在進行形で行われている「本物の強制連行」、「本物の性奴隷」が”発見”され大騒ぎしているのです。この件も慰安婦広告に反応を示さない、示せない一つの原因ではないかと思っています。

この事件は、山西省のレンガ工房でまさに奴隷として強制労働させられていた31人が”救出”されたのをきっかけにずるずると芋ずる式に”救出劇”が演じられているというものです。

彼らは出稼ぎ農民らで、多くが騙して連れてこられた人たちで中には誘拐された者もいたりします。早朝5時から夜中の12時まで働かされ、逃げ出せないように数人の監視役とシェパード6頭に常に見張られ、夜は職場から100メートルほどにある小屋の中に押し込められ逃げ出せないように外から鎖で施錠させられ、トイレもその中で済ませていたと言います。焼きあがったレンガを十分に冷ますことなく取り出すことを要求するなどの虐待も行われていて、手足や顔面に焼けど負った人たちが発見されています。仕事を拒否すれば容赦なくシャベルで殴打され、撲殺された者も。あー、給料はもちろんなしです。

ネットで騙された人たちの家族らが連携し波紋を広げたことから中央が動き、大量の警官が投入され捜索が為されています。更にこの背景には人身売買ネットワークが構築されていて、地元当局、労働監督部門が関与していることが明らかとなりました。

捜索が進む中で、未成年の子供たちや未成年の女性たちも”発見”されています。女性たちは昼間レンガ工房で働かされ、夜は男性奴隷たちの性処理を強要されていたと報じられています。

6月10日のCCTVのニュース映像

6月15日のCCTVのニュース映像

騒ぎがドンドン大きくなり連日『CCTV』でも取り上げられ、現在に至っています。香港紙『太陽報』によると、現在は新華社からの配信以外の情報は皆無で、役人らも口裏を合わせ非常に厳しい情報統制が敷かれているということです。情報の主導権を失踪者家族やメディアから取り上げ当局の支配下に置いたということです。17日に逃亡していたこの闇レンガ工房の社長がようやく逮捕されたこともあり、一気に沈静化するかも知れません。

実はこの件、「何を今更」、「また政争か」、集められた奴隷たちが他の地域、河北省や陝西省から山西省に集められたということもあり「地域間対立かな?」などと妄想するだけでスルーしていたのは内緒。悲惨な出来事であることに変わりないのですが、こうも積極的に報じられるとどうしても穿った見方をしてしまいます。いけません。

上記の『CCTV』のニュースでは「悪者から正義の味方(公安)が見事救出に成功」という構成ですが、事件発覚の発端となったのは失踪者の家族達による命がけの捜索とネットによる情報拡散によるものです。この後、この闇レンガ工房の長が地元の曹生村党支部書記(すでに党籍除名)の息子であることや地元政府関連機関の関与が明らかとなります。公安の怠慢にも厳しい批判の声が浴びせられています。

ん?大きく話がずれてしまいました。今の大陸メディアには、慰安婦広告に反応を示すだけの余裕がないということで。

関連外部記事
lunaの東亜日記「The facts」(意見広告の全文和訳)
日本の評判「慰安婦広告歪曲報道

恐るべし中国、子供1,000人拉致し強制労働(ムーブ 20070619)

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posted by タソガレ at 23:34 | Comment(9) | TrackBack(4) | 反日侮日媚日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
>> 『ワシントンポスト』に6月14日に「THE FACKS」と題された

ちょっと危ないtypoになっちゃってます。
Posted by 果科 at 2007年06月19日 06:29
この広告は失敗だったと思いますね。
日本の慰安婦関連広告、米副大統領や議員が猛反発
6月18日13時7分配信 YONHAP NEWS

【ソウル18日聯合】日本の国会議員ら63人が14日にワシントン・ポストに全面広告を出し、
慰安婦の動員に日本政府や軍の強制はなかったと主張したことについて、
米政府と議会の一部が「厚顔無恥な行動」として強く異議を唱える方針のようだ。
ワシントンのある市民団体関係者は現地時間の16日、
チェイニー副大統領をはじめとする米国の右翼勢力が日本側が出した広告内容に激しい怒りを感じていると、
現地の雰囲気を伝えた。特にチェイニー副大統領は広告を見て「非常に腹が立つ内容」と述べ、
関係者に対し経緯を把握するよう指示する一方、
副大統領室関係者が韓国の市民団体側にチェイニー副大統領の不快感を伝えたという。
この市民団体関係者は、広告が「米議事堂に大きな逆作用をもたらしている」との見方を示した。
慰安婦決議案を支持・署名する米議員も増え続けており、今月中に150人を超える見通しだという。 

また米海軍は、広告の文面のうち、米軍が1945年の日本占領後に
「慰安所」設置を日本政府に要請したケースがあるとの部分を「事実無根」とし、反論の声明を準備中だとされる。

下院で可決されるのは確実ですし、上院でも可決される可能性があると思われます。
Posted by at 2007年06月19日 07:35
> 果科さん。
ぎゃー、ぐぇ〜、のぇ〜。
穴があったら入りたい〜w

> Posted by at 2007年06月19日 07:35
ふぅ〜ん、そうですか。
Posted by タソガレ at 2007年06月19日 09:16
私は、良いと思いますよ。USが反論するのは当たり前。でないとWW2が、「アメリカの正義の戦争」論が崩れていっちゃうから。

チェイニーさんの発言や隣の国の論理のない反応は、想定内でしょ。
Posted by いいんじゃない at 2007年06月19日 13:15
> いいんじゃないさん。
もっとドンドンやればいいと思います。
単発じゃなくて続けて。

以下メモ。
自民公明与党7議員が海上保安庁の飛行機で尖閣諸島、東シナ海ガス田上空を3時間視察す
http://estate.chinanews.com.cn/gj/ywdd/news/2007/06-19/960295.shtml
石破さんが18日に出発前に記者会見を開いたようだけど日本のメディアでこれを取り上げたニュースがないなぁ・・・。
Posted by タソガレ at 2007年06月20日 00:11
日本のメディアの「決議案は採択される可能性が高い」との報道に勇気付けられたのか、それとも中曽根元首相との会談が終わったからなのか、20日になりぞろぞろと関連記事が配信されています。

6月20日『新京報』日本メディア曰く「慰安婦決議案の通過の可能性は高い」
http://news.thebeijingnews.com/0572/2007/06-20/014@270677.htm
6月20日『環球時報』曰く「アメリカ人はこんな広告誰も見ない」
http://media.people.com.cn/GB/40606/5888248.html
6月20日『中国新聞網』来週火曜日に提出されることについて麻生曰く「残念だ」
http://estate.chinanews.com.cn/gj/ywdd/news/2007/06-20/961116.shtml
6月20日『中国新聞網』アナリスト曰く「この広告は薮蛇だ」
http://estate.chinanews.com.cn/gj/kong/news/2007/06-20/961040.shtml
6月20日『中国新聞網』共同通信によるとホンダ曰く「7月中旬に下院全体会議に提出予定」
http://estate.chinanews.com.cn/gj/yt/news/2007/06-20/961439.shtml

ところで日本メディアが言う「採決される可能性が高い」つー根拠は何処にあるのでしょうかね。
中国メディアが現在伝えているもので支持数の最大は140。5月下旬には支持者は128人だったので増えているのは確かなのだけど、採決するには220人ほどの支持が必要なはず。
地道な取材と緻密な分析の結果「採択の可能性大」なのかな。
Posted by タソガレ at 2007年06月20日 22:55
尖閣諸島、東シナ海ガス田視察の記事。

6月19日『沖縄タイムズ』
中国ガス田・尖閣視察/自民海洋委 西銘氏も同行
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706191300_06.html
Posted by タソガレ at 2007年06月21日 23:59
>> ところで日本メディアが言う「採決される可能性が
>> 高い」つー根拠は何処にあるのでしょうかね。

支那様のご期待じゃないっすか?

ところで。

25 o'clock 社民党慰安婦・社民党性奴隷問題について電話しました
http://25oclock.blog.shinobi.jp/Entry/156/

>> いわゆる社民党性奴隷、社民党慰安婦問題

すげぇーーー。さすがm○m○rさん。電凸させたら日本一。
Posted by 果科 at 2007年06月22日 09:53
TBを頂いた西村さんのブログによると、26日の採決は外交委員会でのもので、昨年はエバンスとやらの決議案が全会一致で採択されていたみたいですね。140などという数字は下院決議を見込んだもののようです。
日本側が動いたことで、採決されようとされまいと殆ど意味を成さなくなりましたし、どーでもいいのですが。
二の手、三の手も用意されているとのこと。力強い限りです。
Posted by タソガレ at 2007年06月24日 08:49
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副大統領も巻き込んだ慰安婦問題

Excerpt: 「米、日本のWP紙慰安婦歪曲広告に激憤」 〜チェイニー副大統領が経緯把握指示 … 米海軍も反論声明を準備 アメリカの政権と議会の一部から、日本の指導級人士63人が今月14日にワシントンポスト紙に「慰..
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Weblog: 東アジア黙示録  
Tracked: 2007-06-23 18:56